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第13話  ギルマスたちとの相談 その2

ここで お父さんからギルマスたちに 私の生い立ちを説明してくれた。

途中でギルマスたちからの質問があるから 大半はお父さんが答えてくれて 時々私が補足した。


「あぁ~、父ちゃんは産まれてすぐにいなくなったんじゃ 大変だっただろうな。

しっかし、乳飲み子抱えて旅が出来るってことは、母ちゃんの力量は中々凄いぞ?

余程 腕の良い薬師でもあったんだろうな。

だが、回復魔法があるならそっちの方が簡単に稼げそうなもんだけど。」


「回復魔法の腕が良ければ、国や教会に目をつけられることになります。

アルクが言ったように 誰かから追われていたのであれば、そのような危険な真似はしないでしょう。

薬や薬草であれば、ギルドには常設依頼があるでしょうし、カウンターで売買をするだけならば 然程会話なども行いません。

何か月も販売があれば 専属になってほしいなどの声がかかるかもしれませんが、転々としていたのであれば、効果のほどが広まり 顔を覚えられる頃には次の街に移動していた。という事でしょう。」


……あの移動にはそんな理由もあったのか。

母が専属の話を受けたのは髪色を変えてからだったから、ピンクの髪を追ってくる人がいるとだけ思っていたけど、探す目印はいくつかあったのかもしれない。

そう考えたら、よく私を捨てずに 一緒に行動してくれていたものだと思う。

私を孤児院などに捨て置けば、母一人であれば もっと身軽に行動できただろうに。あんなチビ禿デブ醜悪領主に言い寄られることも、破落戸に襲われて死ぬこともなかっただろうに……。


「お、おい!」


「ヴィオ!」


突然身体が浮き上がり、暖かい毛布に包まれたような心地がする。

トク トク トク トク

あぁ、これはお父さんに抱きしめられているんだね。

心臓の音ってなんでこんなに安心するんだろう。

生きているって分かるからかな。

お母さんは私のせいで死んでしまったけど、私も死んでもおかしくなかった筈なのに 生き延びている訳だけど、いいのかなぁ。


「おかあさん……、わたし…せいで……。ごめんね……。」


ギュっとされて、真っ暗になる。

あったかい。心地いい。お母さん。お母さん……。



◆◇◆◇◆◇


「泣けばえぇ。ヴィオの母さんはヴィオを護ったんじゃ。生きててよかった。

見つけることが出来て良かった。儂の娘になってくれてありがとうな。」


トン トン と腕の中の小さな愛娘を落ち着かせるように 背中を優しく叩く。

静かに涙を流し、母への謝罪を口にするこの娘の心の傷の深さは如何ほどか。

しばらくそうしていたら、身体の力が抜けたように少し重みが増した。

この子の命の重さだと思えば、それもすべてが愛おしい。



「おい、どういうことなんだ?」


「さっき説明したのが殆どじゃが、儂もまだわからん事が多い。

この子を見つけたんは 先週の聖の日(休日)じゃ。

村の外塀を確認するのに川の方から確認しとったら、子供が流れてきておったんじゃ。

最初は水死体が流れてきたと思ったんじゃが、途中で動いておったから声を掛けたら 驚いたようで溺れてしもうたんじゃ。」


今考えれば、川にも多少の魔物というか魔魚はいる。川には森から魔獣も水を飲みに来る。

何処から流れて来たのか分からんが、よく無事に儂の元まで来てくれたもんだ。


「両親らしい姿も見えんから、儂の家で回復するまで様子を見たんじゃが、話を聞いたらあの通り。

出会った翌朝に一度泣いたが、それ以降 ヴィオが泣いたところは見ておらん。

ヴィオの名前はヴァイオレットというのが本当の名じゃ。

母親も同じピンクの髪だったらしいが、髪色を変える 色変えの魔道具を使っておったらしい。

ヴィオが着けておった筈の耳飾りは、ゴミ捨て場か川で落とした様じゃ。」


今日泣けたのは良かったのかもしれん。

夜中、眠っておる時に うなされたり すすり泣いているときはあったが、起きているときに泣いたことはあの時だけだ。こんなに小さいのだから、母親を恋しがってもおかしくないハズなのに。

父親を恋しがることがなかった理由が、まさか生まれてすぐにいなくなったからとは知らんかったがな。


「色変えの魔道具ですか。それは興味深いですね。しかも耳飾り程度の大きさに出来るとは、それはその母親が作ったのでしょうか。

だとしたら薬師や回復術の使い手としてだけではなく、素晴らしい魔道具の作り手でもあるという事です。あぁ、是非生きているときにお会いしたかったものです。」


サブマスは優秀ではあるが、魔法が絡むと途端に面倒な奴になる。

魔法使いとしての腕も一流ではあるんじゃが、ただの魔法オタクというかなんというか。


「お前、ヴィオのことさん付けで呼んでたな。

人の名前を覚えるのが苦手なのに珍しいこともあるもんだと思うけど、魔法の事 話しているとき気持ち悪いから気をつけろよ?」


ギルマスの言い方もどうかと思うが、的を得とるな。


「失礼な、覚えるのが苦手なのではありません。興味がない相手を覚える気が無いだけです。

それに比べてヴィオさんは全属性持ちで、5歳とは思えない聡明さ。

私は基本の4属性と、得意ではないですが聖属性も少しだけ使えますし、貴方は火と土、それに闇が少し使えるでしょう?

我々がヴィオさんに魔法をしっかり教えることが出来れば、素晴らしい魔法使いになれますよ。

しかも大人でもやりたがらない基礎の基礎、魔力感知に魔力操作をあの年齢でやっているのですよ!

素晴らしい逸材ではないですか‼」


あぁ、普段冷静で どんな時でも誰に対しても態度を変えないで有名なサブマスじゃったが、誰もが同じに見えていたからって事じゃったんか。

色白で 顔色が悪いとさえ思われるサブマスが、頬を染めて興奮しておるのが分かるが、その相手が娘じゃと思うと気持ち悪いのぅ。


「あ~~~~、ゴホン。

 で?ヴィオが住んでた町を調べるのが地図を見たい理由か。なんて町だった?」


あぁ、ギルマスも流石にこんな姿を見るのはあまり無いのか、見ないふりをすることにした様じゃな。儂もヴィオに害があるなら排除一択じゃが、魔法を教えてもらえるのは有難いから、見ない事にしようかの。


「アスヒモスという領地で、捨てられたのが ロッサ村 じゃ。」


「っとにろくでもねぇな。だが、そんな奴らの元で ヴィオの能力が知られたと思えば、脱出できてよかったのかもしれねぇな。」


「アスヒモス領地はリズモーニ王国には存在しないですね。近隣諸国のどれかでしょう。川を流れてきた事を思えば、ルシダニア皇国でしょうが……。

あぁ、ここですね。

アスヒモス子爵領、流石に村の名前までは確認できませんが、自領地ではなく、更に川の近くだったのであれば……辺境のココ、ジェザク子爵領という事でしょうね。

皇国であれば、回復術の使い手だと分かれば 直ぐに王城へ連れて行かれたでしょうし、その後は教会に監禁されていた可能性もありますね。

ヴィオさんが川を流れてきてくれた奇跡に感謝しかありませんね。」


其々で地図を見ながら目的の領地を探していれば、サブマスが目敏く見つけ出した。

優秀なのは分かっておったが、さっきのアレのせいで感動が半減しておるな。


「あぁ、確かに 母親が回復術で仕事をしなかった理由もわかるな。

共和国だったら冒険者も多いし、元冒険者が回復術で生計を立てる奴もいなくはない。そっちにいなかったって事は、母親を追ってた相手が共和国にいる奴だったのかもしれねぇな。」


ギルマスの言葉に頷く。

ヴィオの母親が死んだのが 追手によるものなのか、その手がヴィオに伸びることが無いのかは分からん。


「子爵に関しては 色変えをしていた時にしか会っていないのであれば、ヴィオさんを探し出す事はないでしょう。扱いから考えても 平民の子供の生死を気にするとも思えませんしね。

ただ、もう一つの髪色を追って来ていた方が心配ですね。

そちらの目的が聖属性と回復術であるならば、ヴィオさんも聖属性を持っている可能性を疑われて追手がかけられているかもしれません。

色変えの魔道具を私が作ることが出来れば良いのですが……。

魔導学園に資料が無いか、ちょっと手紙を書いてみましょう。


まだまだヴィオさんが村の外に出ることはないでしょう?

幸い 今はまだ水の季節()です。風の季節()で冒険者が増える頃には魔道具についても目途が立つでしょう。それまでの期間に外の冒険者が来た時には、帽子を被るなどで目立たないようにさせれば良いでしょう。」


魔導学園は王都にある 魔法に関する様々な勉強が出来る学園じゃ。確かにあそこであれば様々な魔道具の研究がなされておるから、色変えの魔道具も売っておるかもしれん。



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