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第112話 コニベア洞窟ダンジョン ボス部屋


いよいよ今日はコベニアダンジョンのボス部屋に挑戦する日だ。

ボス部屋はメイジゴブリンがいると聞いているので、魔獣の魔術を初体験することになっている。

基本は腰布しか身に着けていないゴブリンだけど、メイジは何故かマントを着ているらしいので 直ぐに分かるみたい。

魔法使い=マントは人間だけじゃなくて魔獣にも当てはまるのか?

いや、ゴールデントラウトは魚だし、流石にマントは着けてないだろう。だけど魔法を使うらしいからゴブリンだけなのかもしれないね。


「ボス部屋で マントを着ている奴以外を先に倒して、魔法の確認をするんでええな?必ず壁は作っておくようにな」


「うん、大丈夫。演出中にちゃんと壁を張るね」


お父さんと今日の打ち合わせをしてからダンジョンに入る。

帰り道にもしかしたら1~6階の魔獣がリポップされているかもしれないけど、まあ出たところで 大丈夫だろうという事で真っすぐに9階まで下りていく。

昨日までに一掃しているので、見かけるのはスライムだけだ。

まるで水色の花道……には見えないね。

最短コースで階段を下り、9階から10階に下りる階段まで多分30分もかかっていない。


「……まあ、初級ダンジョンじゃからな。

しかし 索敵ちゅうんは本当に便利じゃな。若い時に知っておきたかったと思うぞ」


息子さんたちが帰省した時には 絶対に教えると気合十分のお父さん。私も義理のお兄さんだからね、会ったらいろんな場所の冒険譚を教えてもらいたい。


「さて、準備は良いか?」


「うん、勿論!」


気合も十分だよ!

という事で、10階に続く階段を下りる。階段を下りて直ぐに扉があるのかと思ったけど、扉の前には少し広いスペースがあった。


「お父さん、この階はボス部屋だけだよね?ここには魔獣は現れない?」


「そうじゃな、こないだのアンナープ洞窟みたいな超低層階では 同階に魔獣が出ることもあるが、10階以上の場合のボス部屋はこうやってボス部屋だけの階じゃから魔獣は出んな」


「じゃあ、ここにテントを張って野営してもいいってことだよね?9階のお部屋要らなかったね」


あの部屋はボス部屋の為の準備というか そんな感じの部屋だって言ってたけど、ここがあるならいらなかったんじゃないかと思う。


「ん~、まあそうじゃな。ここの場合は初級じゃし、他と被ることは無かろうから要らんかもしれんな。ただ、大きいダンジョンなんかじゃと、ボス部屋待ち、ちゅうのがあってな、中で戦っとる冒険者がおる間は扉が開かん。

スペースが広ければ2組、3組と待てるかもしれんが、狭いところじゃとそうはいかん。

そういう輩が 上の階の安全な部屋で待機することもあるんじゃ」


ああ、そういう事ね。確かにそれなら待合室的な場所は必要だね。

パーティーは人数に制限がある訳じゃないらしく、多いところは多いみたいだ。

大概4~6人の平均人数で動くみたいだけど、10人とかのパーティーもあるらしい。そんなに多かったら、確かにこの場所じゃギリギリかもしれないね。



色々納得したところで ボス部屋の派手な扉に二人で手を触れる。

前回と同じように ギギ ギギ ギギギギ と古めかしい感じで扉が開き、中の様子は伺えない。

私自身の結界鎧と強化魔法は 宿を出る時から張っているし、鞭に魔力を流して準備は万端だ。


バタンと扉が閉まれば 少しずつ室内の明かりが灯り 見晴らしが良くなっていく。

ここでもやっぱりゴブリンたちは並んでおり、多分一番後ろの奴がローブを纏っているので、あの2体がメイジゴブリンなんだろう。

その手前、メイジを護るように3体のハイゴブリン、更に前には一回り小さいゴブリン7体がズラリと並び、ゴブリン軍団がドーンと構えていた。


「【ウォーターウォール】」


という事でまだ演出中とは分かっているけどメイジ2体を囲むように壁を作る。


「【ファイアバレット】」


メイジ以外の 残りのハイゴブリンとゴブリン合計10体に向けて炎の弾を打ち出す。

丁度ゴブリンたちに命中した時に演出終了だったのか、メイジゴブリンが杖を振り上げた。勝鬨か 鼓舞させるための声掛けだったのか……。

それを聞く前にキラキラエフェクトが出たので どんな効果があったのか知る由もない。

それを見るべきだったかな?いや、命がかかっているんだからそんな事言ってられないね。うん。


目の前の10体もの仲間が消えたことで 怒ったのか、メイジが杖を振り上げて「ギャッギャ」「ギッギ」と言っているのが聞こえる。

言葉自体はノーマルゴブリンと一緒だね。


水の壁に囲まれているから、多分ファイアボール的な魔法を杖から出したけど、水の壁で消えてしまっている。2体もいるから別の魔法を使うかと思いきや、多分同じのようだ。


「お父さん、ファイアボール使っているみたいだね。魔法が杖から発射してるみたいに見えるけど、あれはどういう原理?

ドゥーア先生もサブマスさんも杖は使ってなかったよね?」


「ああ、まさか壁をあっちに出すとは思ってなかったが、あの方が安全ではあるなぁ。

杖か、そうじゃな、時々冒険者にも杖を使う魔法使いは居るが、儂が知っとる奴は 武器として使う為でもあったからなぁ。

ああ、でも杖の先に魔石を埋めたりしてな、それ自体を魔術具のようにして 苦手な属性を使いやすくしておると言うておったな」


ああ、得意属性は自分の魔力だけで、苦手な属性は杖の魔術具を触媒にして使ってるという事か。

だとしたら全属性が得意属性の私は杖がいらないってことだね。

まあ私の中の魔法使いの杖は、あの有名魔法学校の子供達が持っている お箸のような短い杖であり、あんな こん棒みたいな長い杖ではないから良しとしよう。



そしてメイジは魔法を使えるとは言え、やっぱり知能はゴブリンが元だからか あまり頭が良くないらしく、壁をどうにかすることをせず、ひたすらファイアボールを打っている。

これ以上見ていても 新しい魔法攻撃はなさそうなので終了でいいかな?ということで鞭を一振り。


ヒュン スパン! 


マントも、こん棒のような杖も、本体も、真半分にスッパリ切れました。

キラキラキラ といつものエフェクトが出終わったところで、2体が立っていたところに箱が登場した。


「お父さん、箱が出た!」


「くっ、そうじゃな、ボス踏破の宝箱じゃ。これは流石に罠はないから開けてみればええ」


おお、ボス踏破の宝箱が罠ありとか 泣いちゃうよね。ボス倒したのに全滅とか。

そっと蓋を押し上げれば、パニックルームと同じように瓶が入ってた。

あの時には体力回復薬(中)だったんだけど、今度は同じ緑色の他に 青色の液体が入っていた。


「おお、これは魔力回復薬じゃな、全く使ってないがあって困るもんじゃない。こないだのと一緒で、ヴィオの鞄に入れとけば古くなることもない。大事に持っとけばええぞ」


おお、これが銀貨一枚の魔力回復薬ですか。

魔法を使う私としては 持ってて困ることはないね。

有難く頂戴し、リュックに入れる。


「ヴィオおめでとう。これで二つ目の初級ダンジョンを踏破じゃな」


ワシワシと頭を撫でられて、そういえばそうだったと思い出す。

二つ目のダンジョン 踏破したぜ!


転移陣がある場合は、この後ボス部屋の入り口とは別の扉が開くみたいだけど、ここは10階が最下層という事で先はないし、扉も現れない。

なので 入ってきた扉に手を当てれば、スーッと開く。

入る時はあんなにギギ ギギと音がしたのに、静かに開くんじゃんね。

ダンジョンの演出にかける情熱が凄いと思う。絶対に裏で演出家が頑張ってると思うんだよね。


きっとその演出家からは「ちょ~!ちゃんと登場の演出は最後まで見て~!」とか私宛に文句を言ってるだろうし、演者のゴブリンたちからは「どういうことですか、僕たち始まる前にやられたんですけど?」とかって演出家がクレームを受けている気がする。

何となくごめんねと謝っておきますね。


思った以上にサクサク終わってしまったことで、下層階のリポップ時間にもなっていなかったようで、魔獣に会うことなくダンジョンを戻ることが出来た。

そういえばお弁当すら食べてないね。まあいいか。

アルクお父さんは、自分達に壁を張って 攻撃を受けるつもりだろう。と思っていました。

お父さんの想像の上を行くヴィオですw

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