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第110話 コニベア洞窟ダンジョン その4

1日の休日を挟んでダンジョン3回目!

1階のスライムたちを放置するのは同じで、2階に下りたらすべてのウルフが復活していた。


「全部復活してるっぽいね」


「そうじゃな、2日が目安かのう」


アンナープは12時間が目安だと言ってた。翌日の朝には復活しているから24時間ではないだろうという考え方みたい。

2階から4階のウルフとコボルトをサクサクと討伐しながら進む。


5階に下りたらスライム以外に敵はいなかった。


「あれ?ここはいないね」


「そうじゃな、4階もコボルトが半分くらいじゃった事を思えば、やはり丸2日で復活するのかもしれんな」


そういえば通路の後半は少なかった気がする。満遍なく居たのは 散らばってたからかな?

という事で6階も通路上の敵はいなかったので、お父さんに相談したうえで 例の部屋を開けてみることにした。

そう、パニックルームである。

他の部屋は前回開けて確認しているんだけど、ゴブリンも少ないし、特に宝箱がある訳でもなく、扉を閉めたら休憩が安全に出来るセーフエリアみたいなものだと教えてもらった。

私たちは毎日 日帰りしているけど、普通の冒険者は泊りで潜るらしいから、安全にテントを張れる場所というのは大切なんだって。



ということで現在パニックルーム前からお伝えしております。

現場は緊張状態ですが、どうなるのでしょうか。

あぁ!今 扉の前に水の壁が現れました。しかし壁があれば入ることは出来ませんがどうするのでしょう……。

な、なんという事でしょう。鞭がスルスルと壁の中に入っていきます。

あれは蔦魔法でしょうか?

そうです、蔦です。蔦が水の壁を潜り抜け、今、パニックルームのドアノブにかかりました!


「ヴィオ、何をしとるんじゃ?」


「え? えっと、実況中継ゴッコかな」


ヤバイ、テンション上がり過ぎて 脳内実況のつもりが声に出ていたらしい。

後ろにいたお父さんが「楽しそうで何よりじゃな」と笑っている。ちょっと恥ずかしい。


気を取り直して蔦をノブに絡ませてグイっと引けば 扉がゆっくり開いていく。

そしてその扉が開ききる前に、その扉を押し退けるように出てきたのはゴブリンたちだ。我先にと飛び出してきたけど、扉の前には水の壁。

透明なのでこちらが見えるのに、何かに阻まれて出ることが出来ない。

そして不思議なことに扉はいつの間にか消えて、部屋の入口が四角く開いている。だけど壁に沿うように半円に作った水の壁から外には出ることが出来ない。


「ほう、これはパニックルームを開ける時の安全確保としてはええな」


「ねっ!これなら攻撃もできるから安全だよね」


感心するお父さんに同意して、怒り狂って水の壁をドンドンと叩いているゴブリンに砂の鞭を振るう。水の壁は一瞬その壁が揺らめくけれど、消えることはなく鞭だけが通る。

砂の鞭だけど、水の壁を通ったからといって威力が衰えることはなく、泥になることもなく、威力そのままに前方の数体のゴブリンたちの胴体を半分に切り裂いた。

ダンジョンだからできる攻撃だよね。お外じゃ 身体は残ってるし、血みどろになるだろうから結構大変な感じになりそうだ。


キラキラとしたエフェクトと共に、布がその場にヒラヒラと舞い落ちるが、その隙間を埋めるように後方にいたゴブリンが壁際に来る。

同じ様に鞭での攻撃、カッター系の魔法攻撃を繰り返しながら、最後の1体が出てくるまで行う。


「通路にいたゴブリンは途中で逃げ出すこともあったのに、パニックルームのゴブリンは何故か 皆出てこようとしたね」


「そうじゃな。まあ普通は雪崩出てきて その階の通路を駆け回るからなぁ。外に出るっちゅうのは絶対なんかもしれんなぁ」


ダンジョンの魔獣と外の魔獣の違いは結構あると思う。

お父さんも今まではあまり考えたことがなかったらしいけど、そういうのも見つけていきたいよね。


全部のゴブリンが出てきた事で、パニックルームの中を覗いてみる。

一番奥に箱があるのが分かる。あの大量のゴブリンと一緒に置いてあった箱。臭いが移っているのではなかろうかと言う心配もあるけれど、お父さんが楽し気に勧めてくるから中に入る。


「普通はパニックルームじゃと分かっておる部屋を開けることはないからな。

パニックルーム内にはこうして宝箱があることも多い。じゃから悪い奴らじゃと パニックルームを開けた後 自分らは隠れておいて、魔獣が出切ったところで宝箱だけを取りに入るというのもおるんじゃ」


苦い顔をしているという事は、実際にそういう相手に会った事があるんだろうね。

今のところ会った事のある冒険者はまともな人しかいないけど、どんな職業でも 中にいる人たちがピンキリだってのはよく分かる。良い人もいれば悪い人もいるってことだね。


「お父さん、宝箱が人食い箱ってことはあるの?」


「ミミックか? そうじゃな、あるぞ。ミミック以外にも 開けたら毒針やら槍が飛び出してくるようなものもあるし、毒ガスが噴き出る様なのもある」


超凶悪じゃないですか。

パニックルームもそうだけど、そういう時に大活躍するのが斥候という人らしい。

罠があれば解除したりすることもできるらしくて、特殊な訓練を受けているみたい。


「まあ、初級ダンジョンの宝箱で罠があることはないと思うがな」


「ええ~、でも怖いから確認しとく」


【索敵】を目の前の宝箱にかけてみれば 箱の中に瓶が入っているのが分かる。槍も針もないので攻撃は大丈夫そうだけど、ガスは分かんないよね。


「【ウォーターウォール】」


宝箱を覆うように水の壁を出してさっきと同じように蔦で宝箱を開けてみた。

特にガスが噴き出す事もなく、槍も針も飛び出してこなかったから、本当にこの宝箱は安全だったようだね。

安心して壁を消して 中の瓶を取り出してみる。回復薬に見えるね。


「お父さん、回復薬っぽ……いけどどうしたの?」


「いや、索敵で宝箱の中も見えたんか?それに水の壁は……あぁ、パニックルームの時とおんなじか。これは本当にダンジョンの常識が塗り替わるぞ……」


ああ、斥候さんにお任せで試したことがなかったという感じなのかな。

水の壁だったら中も見えるし、安全だよね。開錠にギミックがいるやつだとちょっと大変かもだけど、それでも壁をぎりぎりまで作っておけば大分安全確保できそうだよね。


パニックルームの散策を終えた後、7階を回って今日は終わりにしたよ。

7階は コボルトとハイコボルト、グレーウルフ、ゴブリンとハイゴブリンという、これまで出てきた魔獣が全員集合って感じだったね。

ただ上位種は少なめだったので、多分8階と9階が上位種を中心に出てくるんだと思う。

ダンジョンって不思議、階毎にちゃんと成長できるように魔獣のランクが上がっていくんだもん。


「お父さん、ダンジョンって不思議だね。

中に入る人がちゃんと成長できるように、ちょっとずつ強くなっていくなんて、ダンジョンが冒険者を育ててるみたいだね」


「あ~、確かにそうかもしれんな。まあ、そう考える者は少ないんじゃがな。

途中で自分のランクをよく考えて、同じ階で何度か挑戦する、ダメじゃったら装備を変える、もう一度訓練をし直す、そうやって挑戦して成長できる奴ならそうじゃろうな」


そうじゃない人の方が多いって事かな?

ドロップアイテムや宝箱って、夢がある感じだもんね。若くてちょっと強くて、調子に乗っている人なら「まだまだいける」って無茶しちゃうこともありそうだもんね。


「世知辛いねぇ」


「ぶはっ、ヴィオは5歳じゃのに、難しい言葉を知っておるなぁ」


ワシワシと頭を撫でられた。

私も結構無茶しているけど、こうしてお父さんがストッパーになってくれているから 無事に成長出来てるんだろう。

これを当たり前と思わずに、ちゃんと調子乗らずに頑張ろう!

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