表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/409

第107話 コニベア洞窟ダンジョン その2


4階に入る手前の階段でお昼休憩をとることになった。


「あの後もスライムは尻尾をちゃんと綺麗に吸収しておったぞ」


「やっぱりお掃除スライムなんだね」


女将さんが持たせてくれたお弁当を食べながら お父さんとお喋りしながら休憩をしている。

お茶は温かいものを水筒に入れてきているので、それをカップに移してゆっくり頂く。

このダンジョンは洞窟タイプだからか、ちょっと肌寒い。動いていれば何ともないけど、こうして止まって休憩していると温かいお茶が身に染みるので、ちょっと冷えてるのだろう。


私が尻尾をスライムの近くに持って行ったことで、あまり待つことなく吸収していたみたいで、私の後ろからついて来ていたお父さんはそれを面白いと思って見ていたみたい。

それがスライムの食事なのか、でも1階にはそういう魔獣はいないから 本当にお掃除要員なのかもしれないなどと 答えがでない話し合いをしながらお弁当を食べ終わった。


「よっし、じゃあ4階突入だね」


「無理はせんようにな」


階段を下りたところで4階のマッピングをしていく。

先程までとは違い、二足歩行の魔獣がウロウロしているのが分かる。ところどころ2~3体で一緒にいるのもいるけれど、特に組織戦をしてくるほどの知能はないって聞いているから確認が必要だね。


ここも曲がり角は多いけれど 必ずどこかには繋がっていて 行き止まりはないので、迷子になることはない。

今日はこの階で終了だから、まんべんなく回れるように右に曲がる道を選択して進んでいく。

はじめの角を曲がり、次の角を左に曲がったところで 第一コボルト発見。


「うぇ~」


聞いてはいたけど 本当に二足歩行の犬だ。アニメとかで見る感じの 犬の戦士っぽくもなく、痩せた野犬が立ち上がっている感じにしか見えない。

せめてセントバーナードとかのムキっとした犬なら良かったのかもだけど、ドーベルマン系の細身の犬だから 違和感しかない。いや、セントバーナードでも立ち上がってれば違和感だな。


手足は細く、よくその肉球の足で二足歩行が出来るね、と思ってしまう感じ。

手も同じく肉球ハンドの為武器は無く、ただ爪が長い。

防具も着けていないので まさに犬なのだ。モフラーだったし、多分犬派だった私としては許しがたい感じである。


私の声に気付いた第一コボルトがこちらを見て、対象が私(小さな子供)と分かると ニヤリと嗤ったように見えた。


「グゥ~ グワン!」


そして唸るような声と威嚇するように大きな声を上げる。

普通の子供ならこれで委縮してしまうんだろう、コボルトは大きな声を上げると同時に 駆け寄ってきてその鋭い爪を振り上げた。


【ファイアボール】


私の目の前までくればそれなりに大きな体格で、160センチくらいはあると思われる。

とりあえず1匹目なので 通常サイズのファイアボールを心臓の位置に中てる。四足歩行だと狙いにくいけど、こうして立ち上がってくれていると 心臓が狙い易くなる。

その上防具も身に着けてないから狙い放題ではないか。


手を振りかぶったままキラキラとしたエフェクトを残して第一コボルトは消えた。

そして残ったのは……尻尾?


「お父さん、これって尻尾かな?」


「ん? ああ、これは尻尾じゃな。上位種じゃったら魔石も落とすが、このレベルじゃ尻尾だけじゃな」


ウルフのようなフサフサ尻尾だったら 某女性歌手が身に着けてたおシャレアイテムとして使えるのかもしれないけど、短くてフサフサがゼロの尻尾が落ちてもさ……。

とてもしょっぱい気分になりながら 指でつまんでスライムの近くに置いてあげる。

そう、この階にもところどころにスライムはいるので、彼らにお掃除してもらおう。


その後はじっくり見ることをせずに、見つけたら相手が気付く前に鞭での攻撃を行うようにした。

二足歩行になっている分、首が長くて 攻撃しやすいというのもある。


「ヴィオ、その鞭に流す魔力を他の属性にすることは出来るんか? 今は木魔法を意識して 蔦にしとるじゃろう?」


そうお父さんに言われて、びっくりしたんだよね。

確かに この鞭を作る時には 森じゃなくてもアイビーウィップのかわりになるようにって思って作ってもらってたから、伸ばす時には蔦が伸びて首に巻き付くって感じなのだ。

だけど、魔力を流しているんだから形は自由で良かったはず。イメージが大切って分かってたはずなのに、お父さんに言われるまで気付かないなんて残念過ぎる!


という事で、一旦3階に戻って鞭の属性確認をしてみることにした。

魔獣のリポップはやはりアンナープと同じように時間がかかるのか、3階にはウルフの姿はなかった。


「やってみるね!」


水魔法を意識して伸ばせば、ウオータージェットのような水の鞭が出来た。これは【ウォーターカッター】と同じレベルで使えるようになりたいね。


土魔法はイマイチ発動せず、やはり岩という考えが駄目なのだろうと思う。

そこで土に関わるものとして砂をイメージすることにした。

確かガラスを削ったり、金属を加工するときには 極小の砂粒やガラス粒を高速噴射して切り取っていたと思うんだよね。

という事で、伸ばした部分は極小の砂粒、丸い砂ではなく菱型とか角がある砂粒になるように……。


はじめての想像だからか、魔力がいつもより多めに吸い出される。

鞭を見つめれば手元にある実際の部分から先が少しずつ伸びているのが分かる。


「ほう、土魔法か。岩でもないし、これは……砂か?」


ぐんぐん伸びていくけど、砂が崩れることはなく、クルクルと回転しながらその場に留まっている。

鞭を一振りしてみれば ビュ~ン バチン と地面に叩きつけられた部分が抉れた。

鞭はそのままの形を保っており、砂は溢れていない。

一度魔力を止めれば 伸びていた部分は消える。だけど砂が落ちるとかはない。まあ魔力で作っていたものだから当然か……。


「これは、魔獣相手に攻撃してみたら凄いかもしれんな」


「うん、結構硬い相手でもいけるかも」


お父さんと抉れた地面を覗き込む。

然程力を込めなかったのにコレである。砂の威力を舐めてました。


火属性は想像通りの火の鞭が出来上がり、風属性は鞭の形に形成できなかった。

まあ、風は【エアカッター】で充分だしね。


もう一度これでコボルトにチャレンジ!と思ったんだけど、お父さんから本日のダンジョン終了のお知らせ。


「鞭の為に色々試して 魔力を大分使ったじゃろう? 今日はこれで終わりにしよう。

明日は実際に試してやってみればええ。 まだまだ時間はあるからな、無理をする必要はない」


確かにそうだね。サンドショットを思い出すまでに試行錯誤で色々やった分、結構魔力を使ったし、時間もかかったからお腹もすいてきた。

ということで、今日のダンジョン攻略は4階の前半まで。

明日は5階まで下りれるように頑張ろう!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ