第102話 ダンジョンでの訓練
翌日もお弁当を受け取って、再度 洞窟ダンジョンへ!
入口を入ったところで索敵をするのも同じだ。
昨日マッピングはしているから不要だけど、これも練習だからね。
お父さんも同じように「むむっ」とか言いながら魔力を流しているので、良い練習場なのだろう。
昨日は魔法でスライムをひたすら倒していたので、今日は武器を使っての討伐だ。
「魔法武器、属性武器と呼ばれるようなものでなければ、スライムなんかの魔獣は倒し辛い。スライムは外殻が硬い訳ではないが 弾力があるから、スピードが必要じゃし、剣じゃと刃をしっかり当てんと跳ね返される」
地面に丸い絵を書きながら、そこに剣だろうか 三角を並べて書いてくれる。
角度がズレたら刃が入らないってことだね。
「お父さん、魔法武器ってなに?魔法が使える武器?」
「ああ、色々あるぞ。属性武器っちゅうのは 各属性が込められた武器じゃな。
例えば炎の属性が込められた剣じゃと、魔力を流したら 剣から炎が噴き出す。
風の属性じゃと、剣を振ればウインドカッターみたいな斬撃が飛ぶ」
お父さんの拳から魔力が打ち出されるのと同じ感じだろうか。
炎の剣とか 格好良いね。素材は駄目になりそうだから使いどころに迷いそうだけど。
魔法武器は属性武器とは違い、種類が色々あるらしい。属性というか 魔法が込められているものもあれば、魔力を通しやすくなる金属で作られていて、魔法を行使しやすいものとかもあるみたい。
ミスリルとか、オリハルコンとか、ラノベではよく聞く金属だよね。そういうやつだろうか。
「ん?じゃあ、私の鞭も魔法武器?魔力を通したら 鞭が伸びるでしょう?」
「お?ああ、確かにそうじゃな。
む?そうか、それじゃったら もしかしたらその鞭じゃったらスライムの討伐もできるかもしれんな」
昨日の時点では鞭では討伐が出来ないだろうという事だったけど、魔法武器だったら行けるかもしれないと言うことで、この後試してみることになった。
だけどまずは短剣だね。
「此処のスライムは 攻撃してこんから まずはどんな弾力か確認してみればええ」
ということで、まずは普通に近づいたスライムに、スピードを乗せることもせず、ゆっくりと短剣を上から押しつけてみる。
ググっ ムニニっ ムニュン
水風船みたいに ある程度まで刃を押し付けたら 破れるかと思ったのに、そのまま刃が地面に着くまでムニュっとなってしまった。
勿論 核は 刃が通る時にスルリと刃先からずれて、今は右側の水中にフヨフヨしている。
力を抜けば ポヨンと弾かれて、スライムには傷ひとつついていない。
「スライムは種類があるが、大抵のスライムの弾力はこんな感じでポヨポヨしとる。
大剣使いは叩き潰すこともあるが、斬撃系なら素早く斬るんが大事じゃな」
なるほど。
そういう事で、次は スピードを乗せてスライムに切りかかる。
核が避けることも考えて、右で切り上げると同時に、左からもクロスするように切り上げる。
避けるかと思ったのに 右側の刃が核を捉えたようで、剣を振りぬいたところでシュワワワと消えてしまった。
左は空振りである。
「うん、まっすぐに当たっておるな。短剣の使い方も随分うまくなったな」
「テーアさんのお陰だね」
イメージはあったけど、武器を実際に使った事なんてなかったからね。でもケーテさん家族との特訓は非常にありがたかった。
子供相手だとは思えないレベルだったけど、こっちが真剣を使って、強化魔力を使っても、木の棒でバシバシ叩き落されたのは良い訓練だった。
「そうじゃな、ケーテも あの夫婦と一緒に行動しておることを思えば、強くなるじゃろうな。
辺境伯の推薦が貰えるように銀ランクになるまで1年あれば十分じゃろ」
ケーテさん達はちびっこ採集の最終日から ダンジョン巡りの旅に出発した。
中級ダンジョンをお兄さんのガルスさんと二人だけで踏破できるようになるのが目標らしく、そこまでは色んなダンジョン巡りをするんだって言ってた。
私たちは この風の季節の間だけのダンジョン巡りだけど、ケーテさんたちは目標が違うから、次にいつ会えるか分からないんだよね。
金ランクとの訓練なんて とても貴重な経験をさせてもらえて感謝だ。
次に会える時には、テーアさん達にも武器を持たないと!ってなってもらえるといいな。
スライムの討伐は、短剣での攻撃は問題なく通ることが分かり、鞭でも攻撃が通ることが分かった。
鞭と言っても伸びた部分は魔力だからね。ランス系よりも使い勝手が良くて、距離があっても使えるので、お父さんも安心して鞭の練度を伸ばした方がいいと言ってくれた。
スライムの討伐が出来たところで、翌日からは2階以降に下りることになった。
2階はスライムとウルフの混合で、森で討伐したウルフよりも小さくて、犬が出て来たのかと思ったくらいだった。
「お父さん、コレ 本当にウルフ? ウルフの子供じゃなくて?」
「あ~、初級ダンジョンは ノーマルと呼ばれるのが出るからな。ウルフで間違いないぞ」
どういうことかと思えば、サマニア村は辺境で リズモーニ王国の最北にある村だという事
レミスドーレ山脈(村から見えている山脈)は魔の森とも呼ばれるくらい 沢山の魔獣が生息しているという事
皇国では聖女を集めて 国に結界を張っているらしく、魔獣の侵入を防いでいるという事
という事で、皇国の周辺は押し出される魔獣が出やすいという事
「じゃから、サマニア村の近辺に出る魔獣は 他の魔獣よりも強いんじゃ」
ホーンラビットも通常エリアでは あの半分くらいの大きさらしい。という事は普通のウサギサイズという事だろう。
まあ、弱小魔獣を討伐して ランクアップして、強いのに当たったら死ぬかもだけど、あそこで鍛えられてからだったら安全かもだね。
薬草が育ちやすいのも、魔の森が近くて 魔素が他の地域よりも多いからなんだって。
何処でもあれだけ育つと思ってたけど、確かにそんなにポコポコ育つなら 冒険者の薬草採取依頼なんて不要だよね。
「村で採取の依頼があるんは、他の町に行った時に困らんようにじゃ。
他所では 町の中に薬草が生えておるようなことはないし、大抵近場の森やらに生えとるからな」
そりゃ7歳以降の冒険者登録になるし、学び舎の重要性もより高くなるね。
ちなみに、そんな場所だからこそ 薬草の買取代金も、魔獣の討伐料金も 他の町から比べると驚くほど安いらしい。
経験を積ませることが目的だからなんだって。
サマニア村は 冒険者になるには英才教育を受けられる場所なのかもね。小さい時からいろんな経験できるし、魔術訓練も呪文は微妙だったけど、カルタ作りで繊細な魔法操作もできるようになってるしね。
サマニア村に、お父さんに拾ってもらえた幸運に改めて感謝したところで 今日の訓練は終了した。