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第101話 初ダンジョン

翌朝、女将さんからお弁当を受け取って宿を出る。

昨夜は4日ぶりのお風呂で安心しすぎたのか、夕食後は直ぐに寝てしまったので 今日は元気いっぱいだ。


ダンジョンは村から 徒歩で20分程の 少し離れた場所にあった。

聞いていた通り、山肌の一部にぽっかり穴が開いており、そこが入口だそうだ。


「お父さん、入口がこんなに開いてたら 中から魔獣が出てきちゃわないの?」


「そうじゃな、ダンジョンの中は外とは違うからな、基本的には出てくることはないんじゃ。

ただ、時々討伐に全く入られなくなったダンジョンなんかで 魔獣が増えすぎて 魔獣の氾濫が起きることがある。

その時は 一気にダンジョンの複数階の魔獣が雪崩出てくることになるから 討伐隊が組まれることになるんじゃ。

発見されたダンジョンは こうして小さな村でも管理する者が必要になるのはそういう理由じゃな」


ああ、モンスター スタンピードっていうのは ラノベでも読んだことがあるね。

あれは森の中でオークとかがいつの間にか集落を作っていて、それが街に流れ出てくるって描かれることが多かったと思うけど、ダンジョンの魔物ってこともあるんだね。


ダンジョンのスタンピードの場合は、そのダンジョンの魔物以外が出ることはないという事だから、ここだとスライム、ウルフ、ゴブリンということだ。


「じゃあ、お外に出てきちゃった魔獣は ダンジョン産だけど 倒したら消えるの?

それともお外にいるから解体が必要になるの?」


「むむっ、どうじゃったか……。

あの時は、解体した覚えはないな。いや、でもオークの巨体の死骸を跨いで討伐をした覚えがあるから 消えてなかったか?」


ダンジョン内では 息の根を止めれば 即座に魔獣は消え、ドロップアイテムと呼ばれる モノが落ちるらしい。ドロップアイテムも 放置していればそのうち消えてしまうらしいので、必要なモノは早めに拾う必要があるそうだ。

でもダンジョン外に漏れ出たものは ある程度は肉体が残っていたという事だろうか。

多分そんな事を考える余裕もないままに討伐が必要だったんだろうから、その違いはそのうち見ることが出来るかもしれないね。


お父さんの現役時代の話だし、その辺りは 村に帰ってからギルマスに確認しようという事で 一先ず置いておくことにした。


「では入るぞ」


「はい!」


気合十分、腰の双剣もバッチリな状態でダンジョンの入り口に立つ。

特に受付があるわけでもなく、村の入り口を警備していたおじさん曰く、今このダンジョンに入っている人はいないとの事。


ぱっくり開けた入口なのに 中が見えない不思議。

これが中の魔獣が出てこないのと同じことなんだろうね。空間が違うのかな?

ドキドキしながらお父さんと一緒にダンジョンに足を踏み入れた。


シーン


ん?


特に何かが変わったという感じはない。

くるりと振り返れば 外も見える。まあ そうじゃないと出口にきたという実感がないから当たり前なのかもしれないけど。


「お父さん、外から中は見えないのに、中から外は見えるんだね」


「ん?確かにそうじゃな。ヴィオは面白い事に気付くなぁ。儂はそんな事気にしたこともなかったぞ。初めてダンジョンに来た時は 興奮しすぎて 、討伐した魔獣が消えることに更に興奮しておったような気がするなぁ」


それは、ラノベ育ちの弊害です。

自分の覚えがある知識の答え合わせをしながら行動しているからちょっと冷静に考えてしまうだけです。

よく考えれば テントに張ってた結界も似たようなものなのかもね。

中からは出れるけど、外からは入れない。ダンジョンは逆だ。あれも空間魔法なのかもしれないね。


ケーテさんが言ってたように、洞窟の中は薄っすらと明るい。煌々と明かりが灯っているという訳ではないけど、ライトを使う必要はないくらいの明るさはある。

これなら魔獣を見落とすという事はなさそうだね。


「お父さん、ダンジョンはどこもこれくらい明るいの?」


「ん?そうじゃな、洞窟型なら大体こんな感じじゃな。

ただ、ダンジョンによって中が違うと言ったじゃろう?アンテッド系が出てくるようなダンジョンはもっと暗くてジメジメしとるし、森や砂漠なんかじゃと 太陽が照り付けるようなところもある」


「ダンジョンの中なのに太陽があるの?」


「いや、本物の太陽じゃないと思うがな、明るいし 時間が経てば夜になる。外におるんじゃないかと勘違いするくらいの場所も上級ダンジョンにはあるぞ」


マジか。ワクワクするね。

これはマッピングと索敵能力は必須だよね。


「そろそろ行けるか?」


「あ、ちょっと待ってね、索敵してみる」


サブマスから教えてもらった【索敵】の魔法、土属性なら土中を、風属性、水属性を付けると それぞれの場所で使えるらしい。

だけど、それなら属性を付けなくてもできるのではないかという話になり、自身の魔力を薄く、空気に溶けこませるように薄く延ばすことで 索敵出来るようになったのだ。

これはサブマスも驚いていて、もっと的確に出来るようになったら 来年ドゥーア先生に自慢するつもりだって言ってた。


魔力を薄く延ばすこの方法は、水生成魔法で魔力散布が得意になったお陰で 然程時間をかけなくても出来るようになっている。

ただ、森なんかだと範囲が広すぎるので、一定方向に行くようにしていたから使い勝手が安定しなかったんだけど、ここは洞窟、閉鎖空間だから 開いているところに流れていく。

お陰でこの階のマッピングもバッチリだ。


「お父さん、良い感じだよ。やっぱり閉鎖空間の方が 上手くいくみたい。次の曲がり角辺りから 小さい丸いのが ちょこちょこいるから、これがスライムって事だよね?

この階は本当にスライムしかいないのも分かったよ」


「おおっ、そうか。どれ、儂もやってみるかの」


じっと待ってくれていたお父さんに報告すれば、お父さんもやってみると言って 一度目を閉じる。

本当は集中しなくても出来るようにならないとだけど、お父さんは まだ魔力散布は集中しないとドバってなっちゃうんだよね。

30秒くらい待っていると「おおっ」とお父さんの声。


「これは ダンジョンにおいては便利じゃな。儂はもう少し魔力消費を抑えられるようにならんといかんが、このダンジョンで練習してみることにしよう。

じゃあ、スライム討伐に行こうか」


「うん!」


気合十分!私が先頭、お父さんは少し間を空けて後ろを歩く。

このダンジョンには罠は無いらしく、本当に超初心者訓練用に作られたようなダンジョンだ。


第一村人じゃないけど、第一スライム発見!

あっち向いているのか、こっち向いているのか、目口がないから分からんね。

ポヨンポヨンと跳ねている訳でもなく、水色の水風船がそこにあると言う感じである。


「真ん中あたりに核が見えるじゃろう?あれを狙うんじゃ」


「わかった【ファイアボール】」


極小ファイアボールをスライムに向けて撃てば、特に逃げるでもなかったので 水風船をまっすぐに打ち抜いた。

シュワワッと音がしたと思えば、本当に何も残さず消えてしまった。水溜りもない。


「うん、そうじゃろうな」


ん?振り返ればお父さんは遠い目をしている。

本当なら威力が足りず、スライムに弾かれるとか、体内で更に速度が落ちて その間に核が移動して 当たらないというのを繰り返すらしい。

なんかごめんね。


第二スライム以降にも極小ボール系は全て命中してしまったので、今度はカッター系を使ってみることにした。


「【ウインドカッター】」


パユン


スライムを見つけて首チョンパの風魔法を打ってみたら、ポヨヨンボディに跳ね返された。

おお!これが 皆が体験するやつだね。


「珍しいな、ヴィオなら これもスッパリ切れるかと思ったんじゃが」


「う~ん、この魔法は 首をサクッと切るイメージが強いから、首というか胴体がないスライムだと想像が出来なかったからかも。

こっちならいけるかな?【エアカッター】」


スパン シュワワワ~~~


木札を作る時によく使っていたのはエアカッターだ。内容は同じはずだけど、イメージが違う。

これは柔らかかろうが、硬かろうが、空気圧で切るイメージだから 抵抗がないんだよね。

ウインドカッターと違って、指先で動きを指示する必要があるってのがポイントだ。


「……まあ、想像力が大切じゃからな。ええと思う」


お父さん、呆れてます? 私大丈夫です?

この後もいくつかの魔法を使ってスライム討伐を行ったんだけど、ランス系はイマイチだった。

核に到達するまでのスピードがボールよりも遅いので、威力が少し弱い感じだ。

多分ノーマルスライムだから討伐できているけど、上位種だと無理だと思うとお父さんも感じたみたい。


「まあ、それ以外の魔法で討伐できるから十分じゃと思うぞ?」


という事だったので、今日のスライム討伐はこれで終了となった。

明日は 短剣での討伐だね。鞭は向いていないという事で、スライム相手には使わないことにしたよ。

これだけ倒しても 本当に何も残らないというのは ちょっと切ないね。

スライムは攻撃してくるわけでもないから 無視して通り過ぎると言う理由もよく分かった。


アルクお父さんとしては、スライム討伐にもっと時間がかかると想定していましたが、サブマス達に鍛えられたヴィオには 楽勝だったようです……。

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