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第93話  野営の準備


火の季節の3月目(日本の9月)土の週(第3週)聖の日(休日)、この日は子供薬草採取だったんだけど、前回発表されていたように 初回と同様 全ての子供たちが集まっての採集だった。


「来月から 川での漁が解禁となります。この期間は 子供達の出歩きにはくれぐれも注意してください。

漁が続く風の季節は この薬草採集体験も中止いたします」


「「「え~~~」」」


「「やだ~~~」」


今日はギルドで全員が集まってからの採集だと通達されていたけど、理由が分かったね。

この村を横切る川は、海まで続いているんだけど、このリズモーニ王国でのこの川の始まりは この村の辺りがスタート地点だ。

すぐ裏は山の国境だからね。


で、風の季節には とっても美味しい魚が 川を遡ってくるらしくて、その魚を求めて国中から冒険者や商人が訪れるらしい。

それこそ この村に申し訳程度ある宿屋は完全に商人たちが年間予約で抑えているし、冒険者たちは村の外やギルドの裏広場にテントを張って野営するらしい。


沢山の人が来るということは、有象無象も集まるわけで、他の村でもこの時期には人攫いが出ることは多いらしい。

人攫いは見つけ次第ボコボコになるけれど、攫われる子供からすればトラウマものだ。

私もこのときの為に髪色と目の色を変えていた訳で、今は大分討伐も慣れてきたので、来月には 村を出てダンジョン体験に行くことになっている。

ケーテさんが最初に行ったダンジョンで、サマニア村から2日以上かかる場所にあるから、今週は野営の練習をするのだ。



子供達は薬草採収が楽しくて、この全員でやる日以外でも 草むしりや薬草採収を村長さんの家族と一緒にやるようになっている。

だけどこうして子供達が集まるのは イベントとしての楽しさがあり、皆が楽しみにしているのだ。

それを3か月も中止されるとなれば 阿鼻叫喚となっても仕方がないのだろう。


「漁解禁となれば、沢山の商人だけではなく冒険者も来る。人が集まれば それを隠れ蓑にした悪い奴も集まるんだ。

そんな奴らは あんた達みたいな獣化しちまう可愛い子供が大好きで、あんたたちに鎖を付けて攫っちまうんだよ?逃げたくても鎖を付けられて 檻に入れられたら チビ共の力じゃ逃げられない。

攫われた後は 奴隷として売られるかもしれない。

もしかしたら隣の皇国に連れてかれりゃ 人としてではなく、動物として飼い殺しにされるよ?

そうなってもいいんだったら 好きに出歩きな」


「「「い゛や゛~~~~~」」」


タキさんの説明にブーブー文句を言ってた子供達だったけど、エリア先生が壇上に立って説明したら ピタリと止まった。

だけど最後の説明を聞いて、文句ではなく悲鳴と泣き声が響き渡ることになった。

超カオスな空間になっているんだけど、大人たちはホッとした様子。


「攫われる危険性は ああして言ってもらった方がええからな。エリアは憎まれ役をいつも買ってくれる。

自分が辛い思いをしたことがあるから実感が籠っとるんじゃ」


大人たちは子供を宥めながら 薬草採取に向かっていった。

私も移動しながらお父さんに聞けば そんな答えが返ってきた。エリア先生自身が小さい頃に人攫いにあった事があったらしい。

その時は人攫いの馬車が移動中に、見回り中の騎士が気付いて助かったらしいけど、数日間の檻に入れられた体験は 忘れられない事であり、それを時々話して聞かせてくれているんだって。


人攫いとか、見つけたらギルティだよね。

今の私じゃ狙われる側だから、悪い大人に目を付けられないように気を付けないとだね。




そんな阿鼻叫喚な採集日の翌日、初めての村外野営体験をすることになった。


「まずは野営の練習じゃな。家と違って 完全に安全という事はない。まずはその状況に慣れる必要がある。夜は魔獣も眠っておることが多いが、夜に動き出す魔獣もおるし、人の悪い奴らは大体夜に行動するからな」


お父さんのマジックバッグは二つとも息子さんたちが冒険者として旅立つ時に餞別として渡しているので、お父さんのマジックバッグはない。

私のに入れてくれたらいいんだけど、これを機に 久しぶりに冒険者セットを背負って行動するという。

危険な時は私の鞄に収納する可能性はあるけれど、余程じゃなければ大きな荷物をお父さんが抱えている方が、冒険者の親子に見えて安全なんだって。


大きなリュックに、テント、薄い毛布のような掛布、重ねて収納が出来る鉄製の鍋みたいなセット、カンテラみたいなランプ、タオル類が数枚、麻袋が数枚、ボロボロの布?が数枚、回復薬が数本、食料と調味料が机の上に並べられる。

思ってたより荷物が少ない?


「お父さん、荷物はこれだけ?お皿とか、お水とか、ないよ?」


「ん?そうじゃな、本来なら ここにロープ、水、食器類も入れるが、儂は蔓でなんとでも出来るし、水は作れるようになった。食器は現場で作れるから持って行かん。

長期のダンジョンへ潜る時は、魔力の節約のためにそれらも持っていくが、減らせるものは減らして持っていくのも冒険者の必要な技術じゃ。

まあ、マジックバックを持つようになれば、不要なもんも持ち歩いてしまうがな。

それでも容量に制限があるから、不要なモノは出来るだけ少なくするのが常識じゃ」


そっか。今回の荷物は 本当の基本セットらしく、水場がある、森であるなどが条件みたい。

魔力が使えなくなる可能性のあるダンジョンなんかに入る時は、もっと荷物は多くなり、荷物を運ぶことを仕事とするポーターという人を雇うこともあるらしい。


上級ダンジョンがある場所には 必ず町があり、ポーターがギルドに登録しているようで、回復が使える様な人や、補助魔法が使える様な人は高値で雇われるんだそうだ。

そんな魔法が使えるなら、それだけでどうにでも仕事がありそうだけど、戦闘能力が皆無であれば 冒険者にはなれないし、回復も沢山使えるなら雇先は沢山あるけど、2~3回が限度の人なら仕事はないらしい。世知辛い世の中ですね。


お母さんのマジックバッグには、未だに手付かずのアイテムや素材が入っている。これを出す日は来るのか。多分お母さんも整理整頓が苦手な人だったんだろう。

収納力の多いマジックバックをくれてありがとうございます。



お読みいただきありがとうございます。

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今年最後の投稿はヴィオの野営準備となりました。

予約投稿ですので、新年からも投稿します。

皆様どうぞよい年越しを~

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