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第10話  ギルド登録


「じゃあ ギルドの登録をするから、こっちのお部屋へどうぞ~。」


垂れ犬耳のお兄さんが案内をしてくれるようだ。


ギルド登録って『こんなに小さいのに文字が書けるのですね!?』とか

『魔力がこんなに多いなんて! ザワっ‼』とか

『この属性を持っているなんて!? ザワっ‼』なんてイベントが起きるんじゃないんですか?


ちょっと年上だったら『むむっ!あんなヒョロそうなのに、嘘じゃないのか?』って絡みイベントがあったり

『あたしたちと一緒にパーティー組んで下さぁい♡』なんてラブトラップならぬハーレムイベントがあるのでは!?

いやいや、私は女児だからイケメン戦士たちに『こんな可愛い子が一人じゃ危険だから俺たちが護ってやるよ』なんて逆ハーレムイベントが始まるのでは!?



そんな事を考えているうちに、階段を上り 小さな会議室のような部屋に案内されていた。私が一人で座るとテーブルの上が見えないので、お父さんのお膝の上に座ることになった。


「登録はあのカウンターでするんだと思ってた。個室でやってくれるんだね。」


移動中に考え事をしていたからか、お父さんに質問されたので聞いてみたら、犬耳のお兄さん…じゃなくて、タキさんが教えてくれたよ。


「あぁ、既に冒険者登録をしている人が うちのギルドで初めて依頼を受ける時なんかの ギルドカードの確認はカウンターでやっているんだ。

だけど、初めての登録は 書類を書いてもらう必要もあるし、色んな説明もあるからこうして個室でやることになったんだよ。」


「10年以上前かな。冒険者ではとても希少な聖属性の回復魔法の使い手がいてね、その人が登録をカウンターでしたときに、大騒ぎになった事があったんだ。

測定した職員が驚いて属性を口にした事が原因なんだけどね。

その街の領主にお目通りを!ってなったらしくて、大騒ぎさ。

結局 その冒険者は依頼を受けることもなく、怒って街を出てしまったんだ。

お陰で ギルドは領主から厳しい処罰が与えられたし、せめて国内に留まってくれていればよかったんだろうけど、国王が慌てた時には既に出国した後だったという訳。」


「そんな事もあって、ギルド協会本部から 【初期登録は基本的に個人で個室で行うこと】となったんだよ。

勿論個人の属性やランクを軽々しく発言することも厳しく禁止されているからね。

まぁ、冒険者たちは ランクが上がれば 下に見られないためにも自分でランクを告げることも多いし、タグを首からかけるから、銅以上の人たちは分かり易いかな。」


へぇぇぇ。それは凄いね。

母は回復魔法を使って冒険者をしていたって言ってたけど、そのルールがあったんなら安心して登録出来ただろうね。

でも、ラノベあるあるの展開は無いことが分かったね。


「じゃあ、登録をしていくんだけど……。

アルクさん、学び舎はこれからって言ってましたから、保護者に記入してもらうんでいいですか?」


「あぁ、勿論だ。」


話ながら用意してくれていたペンと紙をテーブルに並べてくれる。

言葉は普通に理解しているけれど、文字はどうだろうか。


《なまえ:    ねんれい:   》


名刺サイズの用紙には2つの項目だけ。

象形文字にも見える知らない文字の上に 薄っすら日本語が見えているのはどういう理屈なのだろうか。

母との生活では、読み聞かせをしてもらっている記憶はあるが、文字を書いている記憶はない。書いてみるのは自宅に帰ってからでも良いだろう。今は大人しく お父さんが書いているのを眺めるだけにしておく。


≪なまえ:ヴィオ ねんれい:5 ≫


書いていく文字も やはり象形文字のようではあるが、読むことは出来る。

これは異世界転生特典ってやつなのだろうか。神様には会ってませんけど。

属性はこれから測るようだけど、どうやって確認するのかな?

やっぱり水晶玉でピカーーーー‼とかかな。


タキさんが用紙を機械にセットして、私の方に差し出す。

名刺ケースのような薄い箱は、端の一部が少し凹んでいて、何かをはめ込む事が出来るようだ。


「ヴィオちゃん、魔力の測定というかギルドカードの登録には、本人の血液が必要なんだ。ココに少しだけ指を乗せて 押してくれるかい?少しチクッとするけど 頑張れるかな?」


凄く申し訳なさそうな顔で言われるけど、よくよく見れば、凹んだ部分には小さな穴のようなものがある。針が出てくるのかな?ナイフで切るとかじゃないんだね。

凹みに人差し指を置いて 少しギュッと押せば、チクっとした痛みを感じたけど ほんの一瞬だったから何ともない。

これで血が出てるの? 絞った方がよくない?

そう思って左の手で指を絞ろうとしたら、お父さんと タキさんに慌てて止められた。


「も、もう大丈夫です。チクっとした時に血液を少し吸い出しているので!」


「ほれ、見せてみろ。あぁ大丈夫そうだな。痛くないか?」


タキさんは機械を自分の方に引き寄せ、お父さんは私の指先を確認し ハンカチを巻いてくれる。いやいや、棘レベルですよ?

大人たちの慌てっぷりに、嬉しいやら恥ずかしいやらで 戸惑っているうちに、タキさんは機械を操作しながらギルドについて説明してくれる。


「登録の初めは皆 “錫” ランクから始まるよ。

薬草採取や 村の中での依頼などを行ってポイントを貯めるとランクが上がるからね。

学び舎が終わってから、帰る前に依頼表を見て お昼から依頼をする。っていう子供たちが多いかな。」


ほうほう、村の依頼は所謂お手伝い的な事だろうか。

それなら村の人たちの名前を覚えるのにも 丁度いいかもしれないね。子供たちが走り回ってたのは、もしかしたら依頼の最中だったのかな?

薬草採取は 母とよくやってたから自信があるよ。

この村の周りの薬草が同じか分からないから調べる必要はあるけどね。


「このギルドカードでお金を預けることもできるから、依頼で貰ったお金を受付で預けるように言ってくれたら貯めておくこともできるからね。

この村だけじゃなくて、冒険者ギルドに所属している国だったら、どこのギルドでもお金の引き落としが出来るんだよ。

……って流石にヴィオちゃんには早いか。」


いやいやいや、銀行システムがあるってことですよね?

思ってた以上の文化レベル。

【所属している国】と限定するって事は、所属してない国もあるって事か。あぁ、地図を見たいと思ってたの忘れてた。

後でしっかり見せてもらおう。


「まぁ、“錫” から “青銅” まではヴィオちゃんでも直ぐに上がることが出来るだろうね。真面目にギルドに通う子は1ヶ月くらいで青銅になって、1〜2年くらいで銅ランクになるかな。

“銅”ランクからは、外での依頼もあるし、魔獣の討伐以来もあるから、危険性が増えるからね。

銅ランク以上はギルドタグをつけることになっているよ。

まぁ、ヴィオちゃんが外の依頼を受ける時はアルクさんの許可をもらってからになるかな?」


「お父さんもギルドタグ持ってるの?」


「ん?おぉ、これじゃ。」


胸元からズルっと出したのは銀色の小さなドッグタグ。

お父さんも短いけど 胸毛モサモサだったから見えなかっただけのようだ。

丸い穴が3つあるけど、模様のかわりだろうか?


「あぁ、これは銀の上級ランクという印じゃな。」


「そうそう、銀ランクからは ランクの中に、更に階級があるんだよ。

銀になりたては “白” ギルドタグには 名前とパーティー名だけが入る。

初級、中級、上級と階級が上がれば、タグに1つずつ穴が増えるんだ。

上級で更にポイントを貯めたら、金ランクに上がることが出来る。

銅から銀に上がる時、銀の上級から金に上がる時には ポイントだけじゃなくて試験もあるんだ。」


「それは その人の為人とか 能力が本当にランクを上げるのにふさわしいかを見るため?」


「「!?」」


「その通りだよ。驚いたな。

アルクさん、ヴィオちゃんって本当に5歳?うちのチビたちより ずっとしっかりしてるよね。」


それは、中身が推定成人女性だったからです。

今の身体は5歳です。


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