ギルベルの屋敷 1
建物から出てきた女性が、ルキ隊長に話し掛ける。
「ルキどうしたの?今日はリュカしか来ない予定だったけど。」
「突然来てすまないが、頼みたいことがある。ギルはいるか?」
「もうすぐ帰ってくると思うけど・・・。その子たちは?」
「詳しい話は後でするが、この子たちは森で保護した。親がいないし記憶もないから、ここで生活させてくれないかと思っ」
「そうなの!?大丈夫?ルキは怖くなかった?」
「おい・・・。」
ルキ隊長が勢いに押されている・・・!
「ふふっ、毛を逆立てなくて大丈夫よ。私はナナリア・ベルディグリ。驚かせちゃってごめんなさい。」
なんと!猫耳と尻尾に感情が出るのか!
ということは、ここに来るまでも感情が無意識のうちに出て・・・いなかったと信じたい。
「二人の名前も教えてくれるかしら?」
「セイです。」
「モエです。」
「セイとモエね。二人は家族なの?」
「モエは僕の妹です。」
「なるほど、黒猫獣人の兄妹ね。初対面の人ともきちんと話ができて偉いわ。ルキ、この可愛すぎる子たち、今すぐうちの子にしたいんだけど。」
「駄目だ。まだ騎士団の調査が終わっていない。調査しても親がいなくて、セイとモエがここに残りたいと言えば、ベルディグリ家の子にしてもいい。」
「そういえば調査があるわね・・・。じゃあ、少なくとも調査が終わるまではうちで預かるわ。万が一ギルが反対しても、私が説得する。」
格好いい・・・!
「二人もそれでいいかしら?」
「「はい。」」
「よし!そうと決まればまずはお風呂ね。汚れを落として着替えましょう。そのブカブカのお洋服も可愛いけど、子ども服のサンプルの中に丁度いいものがあると思うわ。」
サンプル?と思っていると、ルキ隊長が教えてくれた。
「ナナリアは服を作る仕事をしていて、屋敷の一部が仕事場になっている。商品のサンプルを置いていることも多いから、服には困らないはずだ。だから、身一つで来ても大丈夫だと言っただろう?」
少し得意げなルキ隊長が可愛い・・・と思いながら、私たちは屋敷の中に入った。