森の中 4
上着が着せられたことを確認すると、ルキアスティさんは私とセイ兄を抱っこして歩きだした。
いやいや、私は歩けるよ?
「僕は歩けるからモエだけ・・・」
「私も歩ける!」
セイ兄、私だけ子ども扱いしないで。
「ルキアスティさん。」
下ろしてほしい、と言おうとしたところ、なぜかルキアスティさんが目を丸くしていた。
「・・・?」
「あぁすまない、名前を呼ばれたから驚いただけだ。普段は役職名で呼ばれることが多いから。」
あ、日本では名字が先だったから、うっかり名前の方を呼んでしまったのか・・・。
「ごめんなさい。えーと」
「いや名前でいい。よければルキと呼んでくれ。ルキアスティだと長いだろう。」
え、初対面なのに失礼では?
でも本人がそう呼んでほしいなら、従わない方が失礼?
「ルキ・・・さん?様?あれ、役職名って・・・?」
呼び方を変えないと、と思った途端混乱する。
「騎士団で隊長をしているから、隊長と呼ばれることが多いが・・・」
「ルキ隊長?」
「・・・それでいい。」
一瞬間があったのが気になるけど、これでいいのね。
「で、モエは何を話したかったんだ?」
「私たち自分で歩け」
「遠慮しなくていい。私が抱えた方が、早く森を抜けられるぞ?」
食い気味に否定された。
その通りだと思うけど、成人女性が抱っこで移動するのは恥ずかしい・・・とは言えない。
セイ兄は私が歩かないならいいのか、大人しく抱っこされている。
うー恥ずかしいけど仕方ない。
今は大人しくしていよう。
そう考えているうちに、私たちは森を抜けることができた。