森の中 3(ルキアスティ視点)
とある仕事を終えて、私は森から街に向かっていた。
すると、一緒にいた部下二人が、クマモドキという魔物がいることに気づいた。
異様に長い爪を持っている魔物だが、それほど強くはない。
距離も十分にあるので安心するが・・・
動きが遅い?
クマモドキは獲物にゆっくりと近づくことが多い。
ゆっくり近づくことで相手を油断させた後、爪が届く距離になった瞬間に仕留めるからだ。
何かいるのか?と思い確認すると、二人の子どもがクマモドキのターゲットになっていた。
「クマモドキが子どもたちを狙っている!すぐに背後から倒してくれ!」
急いで指示を出すと、部下たちはクマモドキの背後に移動し、そのまま倒した。
あとはあの子たちが無事か確認しなければ。
そう思い子どもたちの方に行くと、幸いなことに怪我はしていなかった。
きちんと会話もできる。(セイはかなり警戒していたが。)
そして、子ども+猫という見た目が可愛すぎる。
モエがセイの後ろから顔を出したときは、可愛さのあまり言葉を失った。
上目遣いは反則だろう。
そう思ったところで、この子たちの親がいないことに気づく。
セイとモエが言うには、親の居場所どころか、お互いの名前以外は分からないらしい。
うーん、親は探すとしても、このまま二人を引き取りたい。
しかし、一人暮らしで家を空けがちだからな・・・。
とりあえず、今は森を出るか。
「とりあえず森を出よう。ここは魔物が出るから危険だ。私も部下も君たちを傷つけないから、一緒に来てくれるか?」
セイとモエはすぐに頷いてくれた。
さらに、「よろしくお願いします」と言って頭まで下げてくる。
良い子すぎないか?!と思ってから、いやそれだけではないなと思う。
この子たちは嫌われないように必死なのだろう。
ここで見捨てられたら、再び魔物に狙われるかもしれない。
最悪の場合、命を落とすだろう。
そんな状況で子どもが二人、しかも記憶がない状態で過ごす恐怖は計り知れない。
セイとモエの立場を想像し、思わず目に涙が浮かぶ。
そうだ、このまま自分が信頼できる人に、そして自分が会いに行きやすいところに二人を託そう。
セイとモエには幸せに暮らしてほしいし、そんな二人を見て私も癒やされたい・・・。
そう考え、後ろにいる部下たちに指示を出す。
「お前たちは本部に戻って報告書を作成するように。私はこの子たちと一緒にギルベルの屋敷に行く。」
「え!隊長だけずるいです!」
「俺らも一緒にいたいです!」
いや気持ちは分かるが、子どもより言うことを聞かないとはどういうことだ。
「それなら、お前たちの上着を二人に着せるか?見ての通り、二人は薄着だ。上着を着せれば、二人は防寒できて、お前らはあの子たちの可愛い姿を見れる。それでも不満があるならこのことをお」
「「分かりました!!」」
そう言うと、部下たちはすぐに上着を着せ始めた。
予想通り、大きな服に包まれる二人は可愛い。
セイとモエはびっくりしているが、尻尾に喜びが表れているから、不快ではないのだろう。
「ありがとうございます・・・。」
二人がお礼を言うと、部下たちは胸を押さえて蹲った。
「大丈夫か?」
「すみません隊長、身体は大丈夫ですが心に強烈なダ」
「大丈夫だな。森を出るぞ。」
「待ってくださいよ隊長!ただでさえ可愛いのに、こんな純粋な顔でお礼を言うのは反則です!それに・・・」
分かったから、早くギルベルの屋敷に向かわせてくれ。
そう思いながら、私はセイとモエを抱えて歩き出した。