森の中 1
一旦状況を整理しよう。
私は萌黄。
日本で兄の青磁(青兄)と暮らしている。
昨日はスマホのアラームをセットして、自分のベッドで寝た。
なのに。
何で起きたら森の中にいるの?
そう考えていると、すぐ横で何かが動いた。
そこにいたのは子どもで、「さむ・・・」と言いながら体を起こしたものの、すぐに動きが止まった。
「森?」
そう呟いた後、私がいることに気づくと目を丸くした。
「萌?」
私のことを萌と呼ぶのは青兄だけ。(周囲に「萌」や「萌美」がいたので、青兄以外の人は「萌黄」と呼んでいた。)
そういえば、この子は小さい頃の青兄とそっくりだ。
猫耳と尻尾が付いていることを除いてだけど。
ということは・・・
「青兄?」
「そう呼ぶってことは、やっぱり萌なんだね。子どもの頃と顔がそっくりだ。」
やっぱり青兄だったんだ!
青兄と呼ぶのは私だけだから、私が萌黄ということも伝わって安心する。
しかし、私も子どもになっていたのね。
自分の体をよく見ていなかった・・・。
「青兄も子どもの頃とそっくりだよ。猫耳と尻尾があるから、可愛さが増してるけど。」
「可愛いのは萌の方だろう。元々可愛いかったけど・・・猫耳と尻尾が合わさるのは、まずい。」
何がまずいんだ?と思いながら自分の頭を触ると、確かにもふもふしたものが付いている。
「私も青兄も、半分猫になってる・・・?」
「かもしれないね。ところで、ここがどこか分かる?」
「分からない。起きたらここにいたから。」
「とりあえず人がいる場所を目指すか・・・でも子どもの姿で動くとなると・・・」
青兄が考え始めたそのとき、前方から黒い塊が飛び出してきて、私たちの前に立ち塞がった。