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友人Aについて  作者: 檜 昆布
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優しさは見えていない

この小説を書き続ける理由はひとつ、こんな人いるよなぁとかこんな人いるんだなぁっていうことを、その日の頭の片隅にでもいいので覚えていて欲しいなぁって言う理由です。

……………また来たようだね。


いや、逆かな?私が語りたくなっただけかもしれない。


そうだな、今日は前回も少し話したAくんが優しすぎるという話について話そうか。


Aくんは、基本的には怒らない。


本人は怒るのが苦手だと言っているが、そんなことはない。悪人にはどうしようもなく怒るし、誰かが危険な目に合っているところでは、そこに躊躇わず入って行って何か出来ることはないか探すほどお節介な正義感を持っている。


………傍から見ていても、Aくんは日々損しかしていないと思う。


困っている誰かを助けたところで得は無い。


ただAくんの自己満足なだけなのだ。


Aくんにはいつも聞いている、何故お前はそんなに優しいのかと。


その時決まってAくんは、僕は優しくないと答える。


他の人間ならそこで終わるだろうが、私はすでにAくんの本性は知っているためこの返しは毎度の如くムカつく。


だからすぐに怒って、私の前では謙虚になるな、気持ち悪いと返す。


そうすると、Aくんはちゃんと答えてくれる。


嫌われたくないのだ、と。


Aくんはとても臆病な人間だ。


人よりも人の気持ちに寄り添える人だからこそ、嫌な人、嫌われる人がどんな人か分かってしまうからこそ、それが例え自分の本性では無くても演じてしまう。


Aくんは、どんなに信頼を築き一緒に居て楽しい人だとしても、一度怒られるとその人と喋る時に、また失敗してはいけないととてもビクビクしながらも平常を装って話すらしい。


Aくんにとって、『怒られる』という行為は何にも変え難い恐怖の象徴らしい。


だからもし、自分が怒ってしまってその人を怖がらせてしまったら、もし自分とは違い自分がそこまで好きでは無い時に自分に怒られたら、きっとその人は嫌いになってしまう。


そんな当たり前のようで、当たり前には考えられないことを考えながら常日頃Aくんは行動しているらしい。


実に馬鹿らしい。


実に愚かだ。


人間なんて、結局嫌われる人は嫌われるし、好かれる人は好かれる。


多少の人間関係等割り切ってしまえば、心にも余裕が出来るのに、何故そこまでして苦労を重ねてしまうのだろうか。


……………………いや、違うな。きっとAくんは、心に余裕を作るために人に優しくするのだろう。


怒りという感情は、特に心の余裕が無い場合に出てしまうことが多い。


ならばそもそも、日々怒らないように行動していれば、怒りの原動力となるストレスも軽くなるもの。


Aくん自身は嫌われたくないという理由で人に優しくしていたが、もしかしたら心に余裕を作るためというのも一つの理由かもしれない。


そんな考察をしていたら、Aくん自身から、優しさについて語り出した。


「もしかしたら、優しさこそが自分のキャラであり、生きる指針なのかもしれない。」


…………優しさこそが生きる指針、なるほど?また面白いことを言うな。


たしかに優しい性格というのは、ありきたりではあるものの、分かりやすい人間のキャラクター性の一つと言える。


そしてそのキャラクター性は、万人受けしやすいのも特徴だ。


さらにそのキャラクター性は、Aくん自身の行動理由である『嫌われたくない』には相性が良い。


私は人に優しくする行為を『疲れる』と思っていたが、もしかしたらAくんにとっては『生きがい』とも言えるのかもしれない。


Aくんは時に自身しか損がない優しさを見せることが多い。


誰も見ていないのに電車の席にゴミがあったら自分のカバンに入れて捨てていたり、バスで席を譲ったり、家族との喧嘩は毎回自身が譲歩し謝っていたり………。


小さいな!!


そんな皆のツッコミが聞こえなくも無いが、ならばこれを君達が普段の生活の間の出勤途中、通学途中、帰宅した後の夜の時間など、そんな合間にこれらを行動に移す余裕があるかと問てみたい。


少なくとも私はできない。


したくない。


する理由がない。


なぜそこまでしなくてはいけない?


疑問形になるほど私は人には優しくしないだろう。


だからこそ、私はAくんが嫌いだ。


得もないのに動き、頑張って、日々自分の心が壊れていくことが他人から見ても明らかなのに頑張って…………。


聖人、まさにそう表現するべき他ないAくんの人間性と、自身の堕落した人間性を比較して、私は嘔吐してしまいそうになる。


だからこそ、私はAくんの優しさが、行動が、目を瞑りたくなるほど嫌いなのだ。


きっと普通なら、見ていて聞いていて気持ちがいい、Aくんはすごいな。


社会はそう表現するのだろう。


だがしてこなかった。もしかしたら皆心ではそう思っているかもしれない。けれど、褒めてこなかった。賞賛しなかった。


分かっているだろうか、Aくんが気持ち悪くて、おかしくて、大嫌いな私が今ここで書いていなければ、Aくんの優しさには、Aくんの努力には誰一人として気付かなかった。


誰もAくんを見ていなかった。


だからAくんは壊れた。


だから仕方なく、こうして吐きそうになりながら、私はAくんに吐き出させている。Aくんの優しさを。


嫌われたくないからなんて嘘っぱちなのだ。


ここで私に吐露している時点で行動原理は明確なのだ。


幼稚とも言えるだろう、母親のためにこぼした水を拭いて、綺麗に拭いたあとの雑巾を見せに来る子供と同じ気持ちなのだ。


誰か気付いて



誰か僕を見て




誰か僕を褒めて







誰か僕に ありがとう スゴいねと言って


















社会に生きる、このくだらない私の吐露を見ているあなたたちに聞きたい。


あなたたちは身近にありふれていて当たり前となっていた優しさに、ありがとうを伝えることができているかい?


できているのなら、もう何も言うことはないさ。




ここまで読んでくれて、ありがとうございます。


てね。

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