第6話 制御の首輪 ——side フェネル
——ケイの部屋。
フェネルは、軍から追い出されたケイを見送った後、彼が住んでいた部屋にやって来た。
残されたフェネルは、呆然とその部屋を見渡す。
「マスター……。寂しいです」
ケイの私物は殆ど無い。
彼は給料のほぼ全てを、フェネルの外装や武器につぎ込んでいた。
貴族の令嬢が身に付けるような華やかなドレスや、靴などの小物。
フェネル専用となる、大型の武器。それは剣聖の名に恥じぬ働きが出来るように、ケイが手入れをしていた。
フェネルは壁に飾られているその武器を手に取る。
ヴォーパルウェポンと呼ばれるその剣は、切れ味よりも頑丈さを重視した武器だ。
鞘に収められた状態でもギラリと光る刀身には、細かい傷がいくつも入っている。
フェネルは愛しそうにその剣を撫でた。
「マスター。これから、私は——あなたの元へ向かうつもりです——」
「フェネルとやら、ここにいたか」
ノックもせずに部屋に入ってきたのはバッカスだ。フェネルはその男をまるでゴミを見るような目で見つめる。
ケイがいなくなった今、彼はフェネルの上官となっていた。
いつも眉間にシワを寄せており、不機嫌そうな顔をしていたバッカス。しかし今は非常ににこやかにしている。それを一層気持ち悪いと感じるフェネル。
「きも——」
「命令だ、この首輪を渡すので装備しろ」
バッカスの手には、黒光りする金属製の首輪があった。
「イヤ」
「逆らうか。まあ、それも良い。じゃあ、頼みますぞ、ユーリィ殿」
「……承知しました」
部屋にもう一人、男が入ってきた。細身のその男は軍服ではなくスーツ姿だ。
ユーリィと呼ばれた男は無表情のまま頷くと、フェネルに近づき彼女の瞳を見つめた。
「なっ……あっ……やめっ……あうっ!?」
ひときわ高い声を上げ、フェネルは身体が動かなくなるのを感じる。
手足がまるで他人のものになったように、ピクリと動かない。
必死に抵抗しようとするものの、まるで石になったように身体が言うことを聞かない。
「な、何をし……た?」
声もかすれていて弱々しい。
そんな彼女を見てニヤリとし、ユーリィは無言で首輪を取り付ける。
首輪は瞬時に収縮し、首にぴったりと張り付くように装着される。
「……なっ……あああっ!?」
フェネルの悲鳴が部屋に響く。
それは一瞬のことだった。突然意識が遠ざかり、その場に倒れ込むフェネル。
「では、バッカス殿はこれを」
「ほう、これが魔巧人形を操れる魔道具か」
「私のスキルを委譲し利用できるものとなります」
バッカスは渡されたイヤリングを自らの耳に取り付ける。
その見た目は、まさに豚に真珠と言って差し替えないものであった。
「こうか?」
バッカスが念じると、すぐにフェネルの身体に異変が起こる。
ピクッと動いた後、ゆっくりと立ち上がったのだ。
しかし、その瞳からは光が消えている。
「おお、成功だな」
「はい、バッカス殿。これで望みの通りに動かせるでしょう。しかし……」
「どうした?」
「魂とやらは厄介ですな。私が念じても、その魔巧人形フェネルの意識を奪えませんでした」
「そうか? でもこうやって自由に操れる。視界も共有できるとはグフフ、いろいろ使えそうじゃのう」
バッカスが念じると、フェネルは地面に手をつき四つん這いになった。
少女の瞳は相変わらず何も映していない。
そんな本物の人形のようになったフェネルをイヤラシい目つきで眺めるバッカス。
「ハハ。生意気な土人形も、こうやって見れば可愛いものだな。じゃあ、喋らせてみようか」
バッカスは下卑た笑みを更に歪ませて念じる。
『ご主人様、なんなりと申しつけ下さい』
その声に、バッカスは恍惚とした表情を見せた。
「ふぅ、なるほど、人形遊びも悪くないな。しかもコイツは人間にしか見えん。人にするといろいろ問題になることでも、人形なら何をしてもよいからな」
そう言ってフェネルが纏っているドレススカートに目をやる。
スカートの下からスラッと伸びる、細く白い足をジロジロ見つめた。
「どれどれ、どんな可愛らしい下着を履いているのかなァ? ハァ……ハァ。今からひん剥いてやるわ」
バッカスは息を荒げ、フェネルのスカートの裾をめくろうと手を伸ばす。
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