第7話 反撃(3)
「撃て」
フェネルは返事をする代わりに引き金を絞った。キュイイイイというかん高い音が響く。
すぐ弾が発射されるわけではないようだ。
「ぐっ……これは……?」
俺の魔力が吸われてフラつく。この魔導ライフルは一体何だ?
「マスター?」
スコープに目を向けたままフェネルの不安げな声が聞こえた。
すぐにカチッという音と共に、魔力の減少が止まる。そして——
ドォン!
大きな音と共に弾が発射された。引き金を絞ってから数秒くらいか?
もの凄い反動で、銃口が跳ね上がる。しかし、フェネルは難なく受け止めていた。あれは恐らく、人間では無理だ。
放たれた弾丸は速くて見えず、その代わり衝撃波の軌跡でその弾道を追える。遅れてボン、ボン、と音速を超える音が聞こえた。
弾は放物線を描きながら飛んでいるようだ。そのまま吸い込まれるように戦車の群れの中心に消えていく。
着弾したのだろうか? いや、まだ確認はできない。
「ダメか? んっ!?」
視界の先で灰色の煙が放射状に広がり、やがて煙の中から赤い炎が見え始める。命中だ!
爆発が起こる。かなり遅れて、
ドーン……ズズズズズ。
轟音が響き渡る。相当離れているにもかかわらず、振動を感じる。
地鳴りはやがて大きな振動となり、城壁全体を揺らした。
わああああ!!
大きな地面の揺れに兵士たちが叫び声を上げている。
俺も立っているのがやっとだ。
すぐに振動は収まり、俺はスコープで戦果を確認した。
弾が命中した車輌を中心に、爆煙が広がっている。
固まっている敵集団の中心の一台、もしくは道連れにもう一輌、誘爆でもう一台破壊できれば上々だと思っていた。
しかし、これは想像を絶する成果だ。
撃った砲弾は、目標の手前の戦車をあっさりと貫通し中心部に到達。
目標とする戦車に命中し大爆発を起こした。
その場にいた10台前後は跡形もなく消滅し、その周囲にいた数十体以上の魔巧人形も姿が見えない。
まだ全貌を把握しきれないが、大きなクレーターができているようだ。
恐ろしい戦果だ。移動している目標に当たるかどうかは未知数だが、この威力なら一発で小さな村落ならほぼ壊滅できるだろう。
「うおおおおおっ! すごいッ!」
近くにいた兵士が歓声を上げる。そのうち一人は俺たちをスパイだと疑った兵士だ。
もっとも、責めるつもりはない。俺だって逆の立場ならそうするだろう。
「よかったです。認めてもらえそうですかね?」
俺が聞くと、
「ああ、もちろんだ。疑って済まなかった。共に戦おう。君たちが敵じゃなくてよかったと心から思う」
握手を求められたので、俺は快く応じる。
「フェネル、移動する」
「はい、マスター」
そろそろ敵の反撃が来る。
これほどの威力を持つ遠隔攻撃可能な存在。強力な脅威は真っ先に潰しに来るだろう。
「アンベールさん、移動して引き続き攻撃を行います」
「わかった。こちらは情報収集に努める。この一撃は敵にとって相当な衝撃だろう。決して無理をするな、ケイ殿に小娘……いや、フェネル殿」
「はい!」
「……じじい、わかった」
俺たちは今、城壁の西端にいる。次に向かうのは東側だ。
フェネルが魔巧兵器を持ち上げると伸びていた銃身が縮み、コンパクトに格納される。
変形の仕方はまるで魔巧人形のようなカラクリを連想させる。
ヒューーーー。
風切り音だ。敵の反撃が始まった。
当然だ。戦局を左右するほどの損害を与えたのだ。砲弾の射出によって俺たちの位置が露呈。敵が狙わないはずがない。
「急ぐぞ、フェネル」
「はい、マスター」
若干フラつくが、まだ魔力に余裕がある。
あと2発もあれば敵をほぼ壊滅できるだろう。
俺たちは城壁の上を駆け出した。
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