表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/38

第7話 反撃(3)

「撃て」


 フェネルは返事をする代わりに引き金を絞った。キュイイイイというかん高い音が響く。

 すぐ弾が発射されるわけではないようだ。


「ぐっ……これは……?」


 俺の魔力が吸われてフラつく。この魔導ライフルは一体何だ?


「マスター?」


 スコープに目を向けたままフェネルの不安げな声が聞こえた。

 すぐにカチッという音と共に、魔力の減少が止まる。そして——


 ドォン!


 大きな音と共に弾が発射された。引き金を絞ってから数秒くらいか?

 もの凄い反動で、銃口が跳ね上がる。しかし、フェネルは難なく受け止めていた。あれは恐らく、人間では無理だ。


 放たれた弾丸は速くて見えず、その代わり衝撃波の軌跡でその弾道を追える。遅れてボン、ボン、と音速を超える音が聞こえた。

 弾は放物線を描きながら飛んでいるようだ。そのまま吸い込まれるように戦車の群れの中心に消えていく。

 着弾したのだろうか? いや、まだ確認はできない。


「ダメか? んっ!?」


 視界の先で灰色の煙が放射状に広がり、やがて煙の中から赤い炎が見え始める。命中だ!

 爆発が起こる。かなり遅れて、


 ドーン……ズズズズズ。


 轟音が響き渡る。相当離れているにもかかわらず、振動を感じる。

 地鳴りはやがて大きな振動となり、城壁全体を揺らした。


 わああああ!!


 大きな地面の揺れに兵士たちが叫び声を上げている。

 俺も立っているのがやっとだ。


 すぐに振動は収まり、俺はスコープで戦果を確認した。

 弾が命中した車輌を中心に、爆煙が広がっている。


 固まっている敵集団の中心の一台、もしくは道連れにもう一輌、誘爆でもう一台破壊できれば上々だと思っていた。


 しかし、これは想像を絶する成果だ。

 撃った砲弾は、目標の手前の戦車をあっさりと貫通し中心部に到達。

 目標とする戦車に命中し大爆発を起こした。

 その場にいた10台前後は跡形もなく消滅し、その周囲にいた数十体以上の魔巧人形も姿が見えない。

 まだ全貌を把握しきれないが、大きなクレーターができているようだ。


 恐ろしい戦果だ。移動している目標に当たるかどうかは未知数だが、この威力なら一発で小さな村落ならほぼ壊滅できるだろう。


「うおおおおおっ! すごいッ!」


 近くにいた兵士が歓声を上げる。そのうち一人は俺たちをスパイだと疑った兵士だ。

 もっとも、責めるつもりはない。俺だって逆の立場ならそうするだろう。


「よかったです。認めてもらえそうですかね?」


 俺が聞くと、


「ああ、もちろんだ。疑って済まなかった。共に戦おう。君たちが敵じゃなくてよかったと心から思う」


 握手を求められたので、俺は快く応じる。


「フェネル、移動する」

「はい、マスター」


 そろそろ敵の反撃が来る。

 これほどの威力を持つ遠隔攻撃可能な存在。強力な脅威は真っ先に潰しに来るだろう。


「アンベールさん、移動して引き続き攻撃を行います」

「わかった。こちらは情報収集に努める。この一撃は敵にとって相当な衝撃だろう。決して無理をするな、ケイ殿に小娘……いや、()()()()殿()

「はい!」

「……じじい、わかった」


 俺たちは今、城壁の西端にいる。次に向かうのは東側だ。

 フェネルが魔巧兵器を持ち上げると伸びていた銃身が縮み、コンパクトに格納される。

 変形の仕方はまるで魔巧人形のようなカラクリを連想させる。


 ヒューーーー。


 風切り音だ。敵の反撃が始まった。

 当然だ。戦局を左右するほどの損害を与えたのだ。砲弾の射出によって俺たちの位置が露呈。敵が狙わないはずがない。


「急ぐぞ、フェネル」

「はい、マスター」


 若干フラつくが、まだ魔力に余裕がある。

 あと2発もあれば敵をほぼ壊滅できるだろう。

 俺たちは城壁の上を駆け出した。


【作者からのお願い】


この小説を読んで


「面白い」


「続きが気になる!」


「この先どうなるの!?」


と少しでも思ったら、ブックマークや、↓の★★★★★を押して応援してもらえると嬉しいです!


まだ★評価されてない方も、評価で応援して頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブックマークと、★★★★★評価をしていただけると作者への応援になります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


2023/3/15 書籍が発売されました!!
公式ページ→https://www.hifumi.co.jp/lineup/9784891999421/

makaizou_pr.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ