第6話 反撃(2)
機械的な声が頭の中に響く。以前、フェネルと頭の中で会話したときと似ている。
なにこれ?
同時に、ウイーンという聞き慣れない音と共に勝手に魔導ライフルの銃身が持ち上がる。まるで生きているかのように砲身が伸びた。
次にフェネルの目前に銃に装備されていたスコープが移動する。引き金部分も小柄なフェネルに合わせるように変形し、ちょうど指の位置にセットされる。
まるでフェネル専用にあつらえたようにぴったりな形に変形する魔導ライフル。
どうなってんだ?
「すごいな」
「はい!」
思わず声が出る。俺の反応を見て得意げなフェネル。
「オオ、どうなっている? 動いただと? まさか……? 試しにこれを装填してみてくれ」
アンベールさんから筒状の弾を渡された。それには白地に黒い文字で魔法陣が描かれている。
俺はフェネルが構えるライフルに弾を装填する。
ガシャ。ウイーン、ガシャ。
勝手に蓋が閉まり、弾が奥に引き込まれていく。
「マスター、目標を設定するようです。設定します」
フェネルは急に横を向き、近くにいるアンベールさんに銃口を向けた。
なるほど、攻撃目標はアンベールさんか。
「じじいに勝つ」
いや、勝つどころか粉々にしてしまうぞ。案外根に持つんだなフェネル……。
アンベールさんは銃口を向けられ顔を引きつらせる。
「オイ、待て待て待て! こんな至近距離で撃つな! じゃなくて儂に向けるな!」
慌ててアンベールさんが後退する。
俺はマジで撃ちそうなフェネルを止め、魔導銃の取っ手を掴み、戦車の方向に向けた。
「フェネル、戦車群が見えるか?」
「はい、マスター」
「撃てそうか?」
「はい。準備完了とあります」
俺は手元の魔導スコープを覗く。なんと勝手に魔導スコープのレンズ部分がズームされる。
恐らく魔導ライフルが俺の魔導スコープの制御を奪っている。きっとフェネルと同じものを見ているのだろう。
視線の先には戦車が数台密集していて、魔巧人形が周囲を防衛している。一部魔導人形の工兵部隊が、戦車に何かを注入していた。さっき飛んできた砲弾か?
人間は見当たらない。目視できる場所で補給などと油断しているように見える。
恐らく事前に斥候を送り込み、こちらに反撃の手が無いことを知っているのだ。
しかし、フェネルのおかげで大きな魔導ライフルが作動し、戦況が変わる。
「アンベールさん、撃ちますか?」
「ああ。任意のタイミングで撃て。その後は分かるな? 全員退避準備!」
アンベールさん率いる兵士たちが一斉に行動を始めた。
彼らを尻目に、俺の腕より大きい砲弾を5つ背中の鞄に押し込んだ。それなりの重さだ。
そして、フェネルに告げる。
「突出した敵左翼の中心にいる戦車を狙え」
「はい」
まずは出鼻を挫く。
敵左翼が先行しているのなら、敵の目の前で突っ込むとどうなるのか見せてやる。
「マスター……標的セット完了しました」
スコープを覗き、狙いが定まったのを感じた俺はたった一言、フェネルに告げた。
「撃て」
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