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第3話 結婚式(2)

「なんじ、健やかなるときも、病めるときも……えーっと……これを愛し……んー……その命ある限り、尽くすことを……ちかいますか?」


 えっ? 俺?

 戸惑っていると、ロゼッタが片目を開けて、なんか言えと圧をかけてきた。

 このノリに付き合うしかないようだ。


「……はい」


 言うと、ロゼッタは満足した様子で同じようにフェネルに問いかける。


「なんじ……誓いますか?」


 きょとんとしているフェネルだが、同じようにロゼッタに促される。


「はい」


 フェネルよ、意味分かってるのか?

 すると、満足そうにうなずくロゼッタ。

 お、終わった……?


「では、ちかいのキスを」

「えっ?」


 俺はフェネルに耳打ちする。


「どうしよう? 俺よりもフェネルの方が言うことを聞きそうだから、ロゼッタを説得してくれないかな?」

「マスター、私は平気です」


 何が!?

 といっても、俺自身もさほど抵抗はない。国によっては挨拶みたいなものだし。

 念のためフェネルに突っ込んで聞いてみよう。


「キスって、アレだぞ、夢の中でしたようなことだけど」

「思いだしてみます。確か、あの日は…………!」


 急にフェネルの頬が、顔が、身体全体が赤くなってく。

 もしかして、全ての記憶を克明に思い出しているのか? 俺はまだはっきり覚えているものの、現実に起きていることよりは夢の記憶は薄くなっている。


「え、えと……マスター、本当にするのですか?」


 何を!?

 フェネルがわざわざ聞いてくるって。いったい、どんなキスを想像しているんだ?

 

 見ると、ロゼッタが俺とフェネルに視線を向け「はよやれ」と圧をかけてきていた。ロゼッタは完全回復したな。


 仕方ない。フェネルもこんな様子だし、覚悟を決めるか。


 俺は、腕に抱いたフェネルを持ち上げ、抱きよせる。

 よく考えたら、フェネル身体に力が入らなくて、完全に無抵抗じゃないか。

 すごく悪いことをしているような。


 見ると、不安げに切なげに俺を見つめるフェネル。


「イヤなら、やめるよ、フェネル」


 そんな、()()()な質問をしてしまう。


「いいえ、マスター」


 俺はフェネルの顔に唇を寄せ、頬に軽く触れた。


「んっ……ま、マスター」

 

 甘い声を放つフェネル。ピクッとその手足が震えたような気がする。動けないはずだから反射的なものなのだろう。


「わああぁ」

「素敵……」


 ロゼッタの後ろにいた街の人々から歓声が上がる。

 俺も猛烈に恥ずかしくなり、顔が赤らんでいくように感じた。


「フェネルちゃん、幸せそう!」


 一番喜んでいるのはロゼッタだ。

 いつのまにか涙も止まり、満面の笑顔を見せる。

 砲撃に怖がり、さっきまで涙を流していたロゼッタが元気になったのでヨシとするか。

 

 俺の胸元に手が添えられた。フェネルだ。


「少し動けるようになったか?」

「はい。でも、もう少しこのままでいたいです」

「ああ、構わない」


 珍しいフェネルからの要求に俺は頷いた。

 そこに、一人の騎士が入ってくる


「ああ、こちらにいらっしゃったのですね。ケイ様、フェネル様。力をお貸し頂けないでしょうか? アンべール隊長がお呼びです」


 騎士は俺を真っ直ぐに見つめて言った。

 つまり、恐らくこれから戦闘があるということだ。


「フェネル、どうしたい? 俺は行こうと思うが」

「はい、ロゼッタを危ない目に遭わせたやつは……私の敵です」


 フェネルの瞳に熱が籠もっている。

 俺の心に熱いものが込み上げてくる。


「分かった。俺も同じ気持ちだよ、フェネル」

「はい、マスター」


 フェネルの俺の胸に当てている手に力が入った。徐々に調子が戻っている。

 俺は騎士に向かって告げる。


「協力します。案内して下さい」



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