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第11話 仕立て屋(2)

「おっ、お客様ァ!! 私の名前はミリーと申します! どうかお見知り置きを! お洋服をお求めでしたらっ! 私どもにお任せ下さい!」


 かなり興奮しているようだ。

 俺も大概だとは思うし、カレンもなかなかだった。しかし、このミリーという女の子には及ばない。

 魔巧人形に対する情熱が振り切れている。


 変な趣味に走っていなければ、情熱溢れるこの店は当たりかもしれない。


 ★★★★★


「マスター、これ可愛いですか?」


 試着室のカーテンが開き、両手を身体の前で重ねて祈るようなポーズをとったフェネルが俺に尋ねてくる。


「ふむ。ドレスというよりは気軽に着られるシンプルなワンピースだな。涼しげで可愛い」

「おおー。よいです」

「さすがです。ケイ様は分かっていらっしゃる。さすが、フェネルさまの管理者……いえ、マスターですね」

「そう。マスターはすごいのです」

「うう……なんという尊いご関係……」


 大げさに涙を拭うような仕草をするミリー。

 どこまでが本気で、どこまでが営業トークなのか分からない。たぶん本気で涙を流していると思う。


「ところで——」


 ミリーはメガネをくいっとあげると、すっと俺の隣にやってきて耳元でささやく。


「あの……こちらのフェネル様ですが、肌の継ぎ目がまったく見当たらないのですが?」


 その声音が真剣なものになっていた。


「ああ、そうだな。さすがに気付くか」

「ええ、そりゃあもう。しかも、温もりがあってしっとりとしていて——まさか私を騙しているわけではありませんよね? 本当は人間でしたーとか言いません?」

「何のことだ? 魔巧人形だと気付いたのはそっちだろ?」

「それはそうですが——。近づくほどに人間としか思えず、自信が無くなるのです」


 そういって、ミリーはうっとりした瞳でフェネルを見つめた。

 視線には妙な、熱いものが含まれている。

 だ、大丈夫かなこの人。


 とはいえ、彼女の言い分はもっともだ。俺はもはや、フェネルを魔巧人形として見れていない。

 人間のように、魂や心がある存在だとそう思っている。

 じゃあ、それは何か……魔巧少女?


「奇遇だな。俺もそうだ」

「そ、その……お二人は……恋人のような関係なのですか?」


 その唐突な言葉に、フェネルが反応する。


「こいびと? マスターと私が?」


 二人の反応に、俺は慌ててしまう。


「い、いや、そう言うのではなくて——」


 俺が怯む姿を見て、フェネルは首をかしげ、ミリーは何かを察したのかニヤリとした。


「なるほど。分かりました」

「何がですか?」

「いえいえ、全て言わずとも分かっております。フェネル様、じゃあ、次はこちらにしましょーねー」


 何か誤解があるようだけど、ミリーは意気揚々とフェネルを試着室に連れて入った。


 ミリーがフェネルに色んな洋服を着せている。その上で、服に合わせたポーズを指示しているようだ。

 着替えているとき、何か会話をしているのが聞こえる。詳しい内容までは聞き取れないけど、フェネルは熱心に聞いているのだと思う。


 すぐにフェネルは嫌がると思ったのだけど、意外とノリノリで俺に聞いてくる。


「こ、これは似合っていますか? マスター」


 今度は清楚なドレスだ。白を基調とした格式張ったもの。こういうのもあるのか。


「似合っている。綺麗で可憐だ」


 フェネルは、はにかみ嬉しそうにしていた。

 そして、なぜか水着や、メイド服、さらには学校の制服のようなものや、スーツなど。

 ミリーの趣味なのだろうけどフェネルを様々な服に着替えさせ、俺に見せてきた。

 

 俺はどれを見ても似合っていると思うので、参考になっているのだろうか……?

 まあ、フェネルも心なしか楽しそうだしいいか。


「ああっ。どれもこれもお似合いになります! かわいい……」


 ミリーは完全に趣味に走っていた。仕事しろ。

 それでも、着替えるたびに鏡を見に行き手足を動かしてポーズを決めるフェネル。

 今までにない、こういう時間を楽しんでいるように見える。


 とても素敵なことだ。

 俺はそんなフェネルを温かい目で見守ったのだった。



 結局、数着の洋服を買うことになった。

 オシャレにはお金かかる。

 本来は同じ規格であるはずだけど、どれもサイズが少し異なるようで、直して貰うことになった。


「不思議ですね……どれも規格に合わず胸の辺りが少しキツく、腰の辺りは余裕がありますが」


 首をかしげるミリーさんだが、今日の夜には修正ができるみたいだ。


「じゃあ、ミリーさんありがとう、また明日」

「どれもよい。また着てみたい」

「はい、その、お手数をおかけします! それとは別に、是非お二人に着て頂きたい衣装がありますので準備しますね。また明日の朝、お待ちしております!!」


 ……お二人?

 一体何だろうと思いつつ俺たちは店を後にする。


 何かの成分をしっかり吸収したミリーは、満面の笑顔で俺たちを見送ってくれたのだった。



お読みいただき、本当にありがとうございます!


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