第4話 暗雲
「ありがとうございます。助けて頂いたのに……失礼なことを言ってしまってごめんなさい」
「いや、気にしていない。それだけ怖い思いをしたんだし」
すっかり立ち直ったリアラから話を聞く。
二人は、俺たちの最初の目的地であるルズベリーの街から来たらしい。この廃墟の中心にある精霊神を信仰する教会の掃除をするため、定期的に訪れているようだ。
祈りを捧げて、さあ帰ろうというときに男たちが襲ってきたらしい。
「俺たちはルズベリーに向かう途中ですし、一緒に行きましょう」
「ありがとうございます。そうして頂けると心強いです」
あんなことがあったばかりだ。俺たちがついていてあげることも必要だろう。
リアラは俺に一歩近づいてくる。ち、近いな……。
「あの、ケイさん。街に戻ったら、お礼を差し上げたいです。フェネルさんも」
「うーん、お気持ちだけいただいておきます」
「で、でも…………あっ、もしよかったら私、武器屋で受付をしているので、寄って頂ければ、サービスします!」
リアラはそう言って胸を張った。
ぼよんと揺れる二つの膨らみに俺……ではなくフェネルの目が釘付けになっている。
「おー」
フェネルは口と目を丸くして自分のと見比べていた。
何やってんだ……フェネル?
「じゃあ、ルズベリーに着いたら寄らせて貰うよ。フェネルの武器をそろそろ新調したいし」
「はい! じゃあ、ケイさんは私が個人的にお礼を……しますので、その、滞在される場所を教えて貰えれば……」
そう言って、目を伏せ頬を赤く染めるリアラ。
個人的って何だ? とはいえ泊まるのはどうせ宿屋だろうけどまだ決めていない。
「分かった、決まったら連絡させて貰うよ」
「はい。お待ちしています」
もう一度俺の目を見つめ、リアラはこくりと頷いた。
視線に熱のようなものを感じるのが不思議だけど、リアラはもう大丈夫そうだ。
だからそろそろ移動しようと思うのだけど、一つ問題がある。
「さて、こいつらはどうしてくれようか」
未遂に終わったとはいえ、軍人らしからぬことをした二人の兵士にイラッとして視線をやる。
こいつらは他国にやってきて、未遂とはいえ女性を乱暴しようとした。
南部戦線で俺は、魔物に襲われる人々を救うという目的のため戦っていた。仲間も皆、いいやつだったし軍紀をないがしろにする奴などいなかった。
なのにこいつらは……。
俺の怒りを察したフェネルが剣を兵士二人の首元に添える。
「マスター、これの息の根を止めますか?」
「ヒッヒィッッ! 化け物がっ」
兵士二人はすっかり怯え、逃げ出そうとする。当然、きつい拘束が彼らを逃げることはできない。
そいつらは怪物を見るような目で俺とフェネルを見つめてくる。
まったく、どっちが怪物だ。あのトロールと何も変わらん。
「首を落としたいところだけど、俺たちは入国したばかりだし、勝手なことはできない。かといって、リアラやロゼッタと一緒に馬車に乗せるわけにいかないし……」
さて、困ったな。ここに置いていってもいいけど逃げられても面倒だ。それに、帝国軍がどうしてこの王国に侵入しているのかも聞き出したい。
悩んでいると、
「では、王国騎士団が預かろう」
そこには、見覚えがある大柄な老齢の騎士がいた。
「フン、帝国兵士二人に我が国民が二人、そしてケイ殿と小娘か。だいたい話はわかった」
アンベールさんだ。
俺が声をかけようとするより早く、フェネルが彼を指さして言う。
「じじい!」
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