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ショート劇場「募金する意味」

作者: MOZUKU

俺はしがない男のコンビニ店員。歳は20代半ば。夢も希望もなく、日々を鬱々と過ごしている。

コンビニの仕事もそろそろ潮時かなと思っている。

そんな折、深夜のコンビニにて妙な客が現れた。

別に見てくれは普通の青年なのだが、飲み物とコンビニ弁当、チョコを買った後、そのお釣りを全て募金したのである。

865円の代金で1000円支払って135円のお釣り、そのお釣りの全てを何処ぞの戦災復興の募金箱に入れたのである。

明らかに多い募金額。何故だかイラッとした俺は思わず聞いてしまった。

「お客さん、どうしてそんなに募金したんですか?」

こんなこと聞くのは勿論タブーだろうが、どうせもう辞めようと思ってたところだ。あとはどうとでもなれだ。

客は驚いた顔をしていたが、別に不快そうな顔はしなかった。それどころか、フッ笑みを浮かべたぐらいだ。

それがまたイラッとしたわけだ。

「募金なんかして、何か意味あるんですか?」

ここまで言えば怒鳴られて、クレーム入れられて、速攻クビコースもあり得るが、客は笑顔を絶やさなかった。絶やさずにこう言った。

「自己満足ですね。」

「へっ?」

てっきり人々を助けたいなんて、如何にも偽善者みたいな事を言うかと思ったが、斜め上の返答にビックリした。

「自己満足ですか?」

「そうそう、別に人を助けたいなんて心はこれっぽっちも無いよ。ニュースで戦争で何千人死にましたとか聞いても、へぇ〜としか思わないもん。」

この人、赤裸々に言いすぎじゃないか?確かに大多数の人はそう思ってるだろうが、あまり公然と言う台詞じゃないな。

「だから自己満足。人助けして俺は今日も良いことしたって、良いことした気になってる。結構気持ちいいもんだよ。君のような捻くれ者以外には好印象に映るしね。」

しれっと、ディスられた。けどこの人どうやらタダの偽善者じゃ無いようだ。

「本当に俺って大したことないんだよ。仕事もテキトーだし、人の陰口悪口をペラペラ言うし、被害妄想が激しくて毎日不安でイライラしてるし、だから募金するのは心のバランスを取る為でもあるね。良いことした気分って人生には必要だと思う。」

・・・なんだろう?不思議と結構共感出来る。この人の言ってることが正しいかなんか分からないが、ありふれた吐き気のする偽善めいた言葉より、俺の心に響いた。

「じゃあ、俺はこれで。」

「はい、失礼なこと聞いてすいませんでした。」

そうして男はコンビニを後にしようとしたが、何故だかコチラをくるりと振り返って、再びニッと笑った。

「あと一つ、募金する理由あったよ。俺、小銭で財布重くなるの嫌いなんだ。」

とりあえず男が去ったあと、俺は募金箱に10円入れてみた。

割と気持ちが良いもんだな。これで人生が変わるなんて思わないが、とりあえず新しい発見して嬉しいぐらいの感動はあった。

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