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本編+α

最後らへんが書き出し祭り未掲載部分です。

『これからよろしくね、俺の()()()


 それが、()となった人から掛けられた最初の言葉だった。因みに、僕は男である。もう一度言おう。僕は、お!と!こ!である。しかし科学技術の進歩により、染色体の関係で生まれる子供の性別が偏ったりはするが異性婚同性婚問わず子供は培養槽で育つ時代だ。結婚相手が異性か同性かなんて些事である。

 家長の言葉が何よりも重いこの国で、少々の手違いと緩い法律により僕は目の前の男の『()』になった。これは僕と(アイツ)夫夫(ふうふ)(笑)生活の日々を書き綴ったものである。離婚が先か絆されるのが先か。1年後の僕はどちらを選んでいるのだろうか。



 0日目。

 今日、僕は結婚した。婚約者の存在を知ってから1日も経っていないのは一体どういうことだ。婚約者というか許婚?生まれる前から決まってたらしいしそれならやっぱり許婚かな?いやもうどっちでも良いや。籍入れちゃったんだし。

 初めて会うのに相手家族との顔合わせと結婚式と婚姻届提出を同じ日にやるのはどうかと思う。逃がさないぞという親父達の強い意思を感じた。まじで止めてほしい。

 一般的には今日が『初夜』ってやつなんだろうが、僕達にはそんなこと関係ない。部屋は、別けた。別けたというか、とりあえずリビングのソファーに避難したというか。なぜ寝室が1つしかないのか。僕には初めて会った人間と同じ布団で寝る趣味はない。



 大事な話があるんだ、と親父に叩き起こされたとある土曜日の朝。正直寝させてほしい。しかし家長の言葉は絶対である。逆らおうもんなら面倒なことになるから渋々起きた。いい歳したおっさんがごねてる様を見たくない。しかもそのおっさんが自分の父親とかそれなんて地獄。


「遥。実は今まで黙っていたんだが……」


 この言い方をするってことは絶対にロクでもないやつだ。聞きたくない。いや、聞かざるを得ないんだけど、聞きたくはない。


「お前には婚約者が居るんだ。昔、お前の爺さんが若い頃、知り合いと意気投合したらしく、まだ生まれてもいない孫同士を結婚させようという話になったらしい」


「こん……にゃく……?」


 脳が理解を拒否した。


「こんにゃくじゃなく婚約な」


 冷静に返すなくそ親父!叫ばなかった僕偉い!

 原因がじーさんで、とりあえず親父じゃなくて良かった、と思うべきなのか?いやでももう少し早く言ってほしかったからどっちもどっちだわ。頭を抱えそうになっている僕に更なる追い討ちをかける鬼畜っぷり。流石だと思う。


「それでだな。これから相手と顔合わせなんだ」


「親父……それ……今言う……?」


 婚約者の存在を顔合わせ当日の朝に教え、主役になる僕は起きたばかり。それなんて無茶振り?バカなの?ねぇバカなの?????口には出来ない罵詈雑言が脳内を駆け巡った。


 脱走しようにもそんな時間はなく、僕は親父達に捕獲され相手家族との顔合わせに連行された。連行先は華やかなホテル。どうやらチャペルもあるらしい。顔合わせにチャペルなんて関係無いのに、なぜかチャペルの存在が引っ掛かった。


 初めて会った婚約者サマは白スーツを着こなした背の高いイケメンで。この顔どこかで見たことがある気がする……?てかおい待てまさか白っぽい服を着せられたのって……!


 親父と兄貴にガッチリ両脇を固められているせいでやっぱり脱走も出来ず、そのまま流れるようにチャペルに連行され身内のみの結婚式を挙げられた。神様もびっくりなスピード婚だったんじゃないかな。神様以前に当事者な僕がびっくりだよ。相手との会話?そんなのなかった。全部親父達が済ませちゃったから僕は一言も話してない。僕当事者なのに。

 そのまま流れるように役所に連れ込まれ、書いた覚えの無い婚姻届を提出させられた。ほんと当事者なはずの僕の意思はどこいった。そしてお前もこれで良いんかーい!って、夫になったアイツに心の中でツッコミを入れた。なんでそんなににこやかな顔で居られるのか謎。もしかしたら当日朝に教えられたとかじゃなく事前に教えられていたのだろうか?ほんっと謎である。


 役所の後はそのまま新居(笑)に放り込まれた。新居……新居って!!!僕!そんなの下見したりしたことないぞ!当事者な僕の意思を反映しないのかっ!住むの僕なのに!


「遥。ここがお前達の新居だ。うちにある荷物は休みのときに少しずつ移せ」


 親父は僕と視線を合わせずにそんなことを言った。僕とアイツを新居()に放置し、僕の家族もアイツの家族も帰っていった。僕もそっちが良い……。フラッと付いて行きそうになったけど、残念ながらにこやかな笑みを浮かべたアイツに左手首をガッチリ掴まれてるから移動できなかった。


 こうして僕の濃くてながぁい1日が終わったのだった。いや、家の中にはまだ入ってないから終わってないね。さっさとこの手離してくんないかなぁ……。




 1日目。

 今朝はコーヒーの匂いで目が覚めた。昨夜寝室で寝た(ハズだ)アイツが起きてきたらしい。コーヒーとトーストとサラダとスープ。男にしては軽め(?)の朝食が用意されていたから一緒に食べた。そのときにお互いの情報の擦り合わせをした。昨日は喋る暇もなかったからな。そこで発覚したのは悲しい現実。僕もアイツも実は同じ会社に勤めてて、お互い結婚休暇として10日の休みを貰っているということ。土日を含めると丸2週間休みな訳だ。長いな。しかしこれは……アレじゃね?総務とか人事とか、そもそもうちの噂好きな社員の格好のネタにされてるやつでは……?泣きたい。




「改めて、初めまして。僕は(はるか)春夏秋冬(ひととせ)(はるか)だ。いや、昨日で名字が変わったから春夏秋冬じゃなくなったんだったな。えーっと、小鳥遊(たかなし)遥になるのかな?」


「俺は(かえで)だ。小鳥遊楓。これからよろしくね、俺の奥さん」


 そのセリフに一瞬フリーズしてしまったのはご愛嬌ってやつだと思うし、普段からは考えらんないくらいひっくい声で返しちゃったのもご愛嬌ってやつ。うん。


「僕のことは遥って呼んでくれ。間違っても『奥さん』なんて呼び掛けたりすんなよ……」


「俺のことは楓と呼んでくれ。俺は別に『旦那さん』って呼ばれても構わないけどね」


「呼ばねーよ!?」


 にこにこしながらそんなことを言うアイツに、何ていうか、こう……イラッと……したよね!

 その後は朝食を食べながらどんな風に過ごすのか摺合せをした。今日のこと、明日以降のこと。案外決めなきゃいけないことは沢山ある。名義変更とかな……。なぜ僕が『妻』側に名前を書かれなきゃいけなかったんだ。まぁ原因はじーさんなんだから僕にはどうしようもなかったけど、ちょっと……いやかなりむしゃくしゃするね。


 朝食の後はしなきゃいけないことのリストアップをした訳だけど、平日じゃないとできないやつの名義変更は後回しにしても思ってた以上にすることが多くて2人でバタバタしてしまった。気付けばお昼で、2人分のお腹の音が部屋に響いた。


 もういっぱいいっぱいでご飯なんか作る気力もないし、お昼は近所にあったうどん屋さんに行った。麺類は早くて美味しいから正義だと思う。僕は肉うどんを食べた。ここの出汁むっちゃ美味しかったから今度別のも食べてみようと思う。あ。因みに、アイツはうどん屋さんなのにカツ丼を食べてた。『うどん屋』なんだからうどん食べれば良いのにって思ったのは内緒だ。

 お腹が満たされた後は、少し回り道をして新居()へ帰った。昨日は周辺を探検というか探索というかを出来なかったから、散歩出来るのは嬉しい。……。隣にアイツが居なけりゃもっと楽しかったね!


「遥。一度帰ったら出掛ける準備して買い物に行こう。足りない物とかあるんじゃないか?」


「そうだね。早急に揃えたい足りない物(ベッド)があるや。ついでに今晩のおかずと明日以降のおかずの材料も買ってく?」


 買い物のお誘いがきたから快諾した。よく考えたら所謂デートってやつな気がしなくもないが、多分、気のせいだ。




 2日目。

 今朝は僕のがアイツより早く起きたから、僕が朝食を用意した。僕はコーヒーより紅茶派なんだ。今朝はスパイスを効かせたチャイにした。アイツはちょっとむせてて、思わず笑っちゃったよ。

 昨日、アイツと部屋の模様替えと家具屋にベッドの注文に行ってたんだ。今日それが届いて、僕も今晩からベッドで寝られるようになった。今日の家具屋さんは早かったし当たりだな。早めにソファーを卒業できて良かった。寝らんないわけではないけど、やっぱりソファーは寝辛かったからね。今後もアイツと同衾する予定はない。しかし同棲……は継続せざるを得ないから、もう少し歩み寄るとゆーか打ち解ける努力をしてみても良いかなと思ってる。まだ実行はしてないけどね。


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