15-事件発生
「ごめんね、二人とも。桜は力が強いからびっくりさせちゃったわよね。馬鹿力だけど、本人に悪気は無いから許してあげて」
あの後しばらくして現在、須藤先輩が皆川先輩をフォローしながら可憐を元気付けていた。
可憐はまだ手が痛むのか涙目で右手をさすっている。
皆川先輩本人はお詫びとして自動販売機で全員分の飲み物を買いに行っていた。
「だ、大丈夫です。ちょっとびっくりしただけなので。あと、純也さん。さっきは失礼などと言ってすいませんでした。まさかこれほどまでとは……」
「いやいや、可憐の言ってることは正しいから気にしないで。今回が……その、ちょっと特殊なだけだから」
そこでバーンと扉が開き、皆川先輩がペットボトルの飲み物を両手に帰ってきた。
「ううっ、さっきはふたりとも申し訳なかった! このとーり! だからやめないで! お願い!」
皆川先輩は泣きながら床に膝をつき、額を床につけて土下座をしようとしたので俺たちは全力でそれを止めた。
「ちょっと霧島先輩どういうことですか。奈々ちゃん先生何にも用事無いみたいですよ――ってええ?! どんな状況ですかこれ!」
香織も部室に戻ってきてもうカオスである。
どうなってんだこの部活……
*
「こほん。気を取り直してボランティア部の説明をはじめるよ」
皆川先輩はわざとらしく咳払いをするとボランティア部の説明を始めた。
おそらく張り切っているのだろう。
額のマークは真っ赤な笑顔マークだ。
俺たちは先輩たちに促され、畳に上がって五人でちゃぶ台を囲みながらながら話を聞くことになった。
「うちの部活は二年は私と遥、界人の三人、一年生は香織と今日は来れないみたいだけど利奈って子がいて、君たち含めて計7人の小規模な部活なんだけど、その分自由度は高いから、部室は自由に使ってくれて大丈夫だよ。昼休みでも放課後でも使いたいときに使って全然OK! そのためにくつろげるように部室を改造したからね」
皆川先輩はえっへんと胸を張るジェスチャーをする。
「ボランティア部は言ってしまえば何でも屋みたいなところかしら。依頼があれば手伝ったり協力する事が多いわね。普通にボランティアに参加することもあるけど、最近だと依頼の方が多いかも。でも雑用みたいなのばっかりじゃなくて去年は海の家の手伝いとか色々やってるから安心してね」
なるほど、地域のボランティアに参加するだけじゃなくて依頼とかも受け付けているのか。
少し面白そうだ。
須藤先輩の話に可憐もワクワクしたのか目をキラキラと輝かせている。
「校内の活動だったら体育祭とか文化祭とかの準備、実行とかをやってるわね。そのほかは個人的な依頼を受け付けてるわ」
「なんだか生徒会みたいですね」
可憐がそう呟く。
確かに、生徒会がやってそうな仕事だな。
「うちの学校には風紀委員が無いからその仕事も生徒会で引き受けているのよ。だからこういった活動はうちで引き受けているの」
なるほど、役割分担ってことか。
通りで先輩方が部員を欲しがっていたわけだ。こういう活動には人手が必要だからな。
「最近は相談も受け付けているわよ。普段は直接相談とか依頼を受けてるんだけど、直接は恥ずかしい時は相談箱に相談を書いてもらってそれを解決したりするの。あっ、相談箱って言うのはボランティア部の部室前にある箱の事ね」
さっき部室の前に木の箱が置かれてあったが、あれの事か。
「依頼とか活動が無いときに見てるんだけど、せっかくだから今、相談箱の中を見てみるか」
皆川先輩はそう言って立ち上がると相談箱を持って来て長机の上にゴトっと置いた。
大きさは30×30×50cmほどの立方体の木の箱で、ポストのような口が空いている。
よく手入れされているため、頻繁に利用されているのだろう。
運んでいるときにごそごそと音がしていたためかなりの枚数が入っているようだ。
「じゃ、開けるぞ」
皆川先輩が相談箱の裏にある鍵穴に鍵を差し込み、回転させるとカチャリと軽快な音がして箱の蓋が開けられた。
中には――えっ?!
『ともだちがほしい』
と怪文書のような新聞の切り抜きで書かれた相談用紙が大量に入っていた。
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