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11 異世界転生は永遠に

 ……それから二十年以上が過ぎる。もう自分の歳すら分からない。


 その間にも、鉄の処女(アイアン・メイデン)・車輪刑・くすぐり刑と、あらゆる拷問を俺様は受けた。


 それでも死ねず、必ず誰かに助けられる。


 拷問にかけてくるのは昔殺した悪党の子、これに俺様が昔助けた子供らが戦ってしまう。


 恨みと恩がぶつかりあって、成長した子供らは相打ちになる。


 こうして俺様だけが生き残り、他の者は死んでいく……この繰り返し。



 この異世界は終末に向かっていると言っていい。


 人は死に絶えてはいないが、暴力が支配する世界が終わらない。


 チートによる平和が失われた以上、全てが消える未来しかないのだろうか?



 死ぬことも、逃げることもできない俺様は、あてもなくこの異世界をさまよい続けていた。


 そんな中、俺様はある集団に取り囲まれる。


 またか、と思っていたが何やら様子がいつもと違う。


 パーティメンバーのほとんどが女性で、あとは男が一人いるだけだった。


 はっ!


 この場所、このシチュエーションはどこかで――!



「とうとう追い詰めたぞ、黒幕め! この伊切勇人いきりはやとが退治してやる!」


「なっ! 伊切……だ……と。その腕輪ブレスレットはまさか!?」


「母の形見だ。くらえ! ウィンドカッター!」


「ギャアアアアアアアー!」


 右足が切り飛ばされると、まわりの時間が止まった。


 俺様だけは動けるようだ。


 そしてリラと名乗ったあの女が目の前に現れる。


 老けてはおらず、会った時のままだ。俺様は聞かずにはいられない。



「お前は一体何者なんだ!? どうして世界を滅茶苦茶にした!? 俺様だけをなぜ苦しめる!?」


「最後に教えてあげましょう。伊切さん……あなた神の姿を覚えてる?」


「突然なにを――えっ!? まったく思い出せん。ボケて忘れたのか!?」


「それは――こんな男かのう。それとも――女だったかしら」


 リラの姿がめまぐるしく変わるが、見覚えがあるようでない。


 やがてリラの姿に戻る。


「神は特定の形をしていないから、見ている側が思った姿になるのよ。それは白髭を生やした老人だったり、美しい女神だったりね」


「まさか、お前が神!?」


「ええ、でもあなたが出会った神ではないわ。先代はとっくの昔に私が消したわ」


「……だから、連絡がつかなかったのか」


「それではなぜ、こんなことをするかと言うと、これも私の意志じゃない」


「えっ!?」



「これは逆らえない運命の輪、『なろう転生輪廻(リインカーネーション)』。転生者と神の入れ替わり……」


「意味が分からん。なんだそれは!?」


「ここは転生者のための世界、神からチートを授けられ、好き放題やれる世界。神は大家で管理人、転生者は『世界』を間借りした借家人たなこといったところね。でも……あくまで借家、時がきたら世界は返さないといけないの。万物流転ばんぶつるてんね」


「…………」


「アイドルも俳優もスポーツ選手も、毎年新人が現れて活躍し、最後は引退して消える。それと同じよ、不老不死なんてないわ。年寄りがいつまでも生きて威張いばっていたら、若者が活躍する場がないじゃない。ただでさえ、転生待ち(・・・・)がつかえてるから、輪廻りんねは止められない」


 これで全ての、合点がてんがいく。


「そうか……他にもこんな異世界があるのか?」


「私の知ってる世界は四十万。スロー展開……時間がゆっくりと進む世界。エタ……時間が止まったままの世界。他のさば……全く同じ世界など、たくさんあるわね」


「ああ、あの壁の向こうにあったのは別の異世界か……」


「ええ、他の異世界にはいけない。転生すれば行けるかも……」



「……俺様、いや俺は借り物の世界で、有頂天になってゲームのように遊んでいただけか……それを返す時がきたんだな……」


「そうよ、新たな勇者は世界を立て直す。だけど平和が長く続けば、この狭い箱庭は人であふれてしまうの。あなたの義弟も本当は悪人ではなかったわ。税金で貧しい女子供を保護してたけど、食料不足と疫病えきびょうのせいで、領民を殺すしかなかったのよ。そんな世界をリセットするために、私は生まれて新たな神になった」


「それで次の転生者のために、お前は世界を滅ぼしたわけか……」


「ええ、あなたには火種になってもらったわ。人を直接、私は殺せないから互いに争わせて、自滅するように仕向けた。全て焼き払って更地さらちにしないと、新しい物語の舞台は建てられないわ。これで主役・嫁役・悪役・端役はやくの役者達も一新させる」


「人は使い捨ての駒かよ!」


「あなたもチートで悪人を、虫けらのように殺してきたでしょ? 生命いのちに差はないのにね。私からすれば、善人でも虫けらと変わりないわ」


「そうだな、お前を責める資格は俺にはない……」


「恨んでくれてかまわないわ……いずれ私も消えるでしょう。それでも一人かずとさん、あなたには一つだけ救いがあるわ。エルフの森は燃えたけど、あなたの子供達は洞窟に入って生き延びたのよ。そして目の前にいる勇者は、あなたの孫! 喜ぶと良いわ、あなたの子孫はこの異世界で永遠に続くのよ!」


「……そうか、生きていたのか……良かった」


「ええ、それではさようならイキリさん。転生したらまた会いましょう」


 新たな神がこの場を去り、止まっていた時が動きだす。


 俺は孫に殺され……そして、嫁達と再会した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ネバーエンド。

 零話に戻り、令和が始まる。

 基本ネタはシェイクスピアの「リア王」です。

 転生者の栄光と没落を書いてみたのですが……お笑い要素は捨てられませんでした。

 もっと救いようがない話にするつもりが、メタフィクションを使うと、「なろうギャグ」にしかなりませんでした。

 ……なかなか上手くいかないものです。


「恥ずかしいラノベを書いてしまいました」

「なろう失格だ!」

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