0 異世界でイきる
「とうとう追い詰めたぞ、黒幕め! この伊切一人がやっつけてやる!」
「ひー! お、俺じゃない――ち、違う! やってない!」
「嘘をつくな見苦しい! 神から聞いたぞ、大罪はお前の命であがなえ!」
俺の目の前にいるのは老けたおっさんで、歯も欠けている。
とても大悪党には見えないが、コイツが通った村や町はすべて滅んでいて、コイツだけがなぜか生き延びている。
俺が転生して十六年、この世界はいまだ暴力が支配して荒れ果てており、全てはコイツのせいだった。
見ためにダマされてはいけない。今までは上手く逃げてきたのだろう。
奴隷だった母はすぐに死んだが、俺は神から与えられたチートスキルのおかげで、立派に成長することができた。
俺は旅で知り合った女達と、この世界をさすらい悪党どもを始末してきた。
チートがあれば、何でもできる!
さあ今こそみんなの恨みを晴らす時だ! 俺は魔法を放つ!
「風カッター!」
「ぎゃあああああああああ!」
何やら喚いていたおっさんの足をぶった切ると、大量の血が地面に飛び散る。
直ぐには殺さない。たっぷり苦しめてから、ぬっ殺す!
俺は母の形見のブレスレットに魔力をこめる。思い出深い品には力が宿るのだ。
続け様に腕を切って血ダルマにしてやった。ザマーみろ!
「ひー! ひー! ひー!」
「これで死なないのか? なら粉みじんにしてやる!」
風魔法で耳を切り、鼻をそいで、目をえぐって、全身の骨を切り刻む。
もう人間の形すらない、肉の塊だ。
「トドメだ! ファイヤーボール! サンダーボルト!」
ダブル魔法の全体攻撃で、おっさんは燃え上がり、灰になってチリになる。
風がふいたあとには何も残らない。こうして悪はほろびた。
「やったー、カズト!」
「一人様ー!」
俺の女達が抱きついてくる。
剣士・神官・魔法使い・弓手・エルフにホビットたくさんの嫁達だ。
ふっ、今日は寝られんな、みんなで乱交パーティだぜ!
精力剤と回復スキルあれば、何人でもやれるぜ!
あっはっはははははははははははははははははははは!
それからも、俺様は暴れ回る。
チートスマホのおかげで現代知識が手に入り、町や村と王国を再建した。
えっへん!
もっとも、お礼として毎年大金をいただくことにする。タダではやっとられん。
その見返りに、悪人どもは皆殺しにしてやるのだから文句はあるまい。
魔族、盗賊、悪徳商人、侵略してきた帝国。
悪に情けは無用、敵・即・チートだ!
何人ぶち殺したか覚えてもいない。
愚か者どもめ、俺様に敵うわけがないだろ。ふははははははは!
俺様はもうけた大金で大豪邸を建てて、嫁全員を後宮に入れた。
とはいえ強制したことは一度もなく、嫁達も嫌がってはいない。
チート・金に加え、二枚目の俺様に惚れない女はいないのだ。
毎晩とっかえひっかえ、やりたい放題だった。一晩で五人を相手したこともある。
いやーたまらんなー、やめられまへんなー!
好き放題やっても俺様は許される。
何も悪いことはしてないし、王国の王女は嫁なので、俺様には国の後ろ盾もある。
王から王様になるよう頼まれたが、面倒くさいので断った。代わりに王子が後を継ぐだろう。
毎日、美味い物を食って酒を飲み、嫁が抱ければ満足だった。
もう俺様に戦いを挑んでくるバカはいない。もう争いはなく平和になったのだ。
全ぇ――ん部、俺様のおかげだ。皆の者感謝しろ!
……それから十三年後。