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神帝王国の一画が荒れる一方で、天界では鋭い声が木霊する。
「今すぐ大天使級以上の者を全員召集せよ!!」
「え、えっと……?」
足音が飛び交う中心で冷や汗を垂らすはラファエルで、緊迫した空気の中戸惑う彼女は後退り。
時間を掛け撤退図るも刺さる眼光に肩竦め、引く足戻し俯いて。
荒い足音と共に現る大天使達を見遣るや返る叱責の視線に首を振り、今回ばかりは何もしていないと訴える。
「何事ですか!」
「貴様らが問題なしと判断した勇者共が、理を外れおったぞ!!」
「「何を夜迷事を!!」」
「よまっ……!?」
そんなラファエルを捨て置き問うたミカエルに返す老人の姿をした神はふざけるなと叫び、投げ返さる声に絶句して。
この人本当に人望ないなぁ、気持ちすっごい解るけど。
涙目でラファエル見遣るも雄弁に語る目より顔を逸らし俯いて、儂の味方はおらんのかと苦悩に満ちた息を吐く。
「実力もお粗末ながら頭もお粗末なあの鳥は、治癒の能力しか授けていないと吐いておりました! 何かの間違いでは!?」
「その治癒が問題なのだ! 最悪魂から肉体が再生するぞ!! これでも問題ないとほざくつもりか!?」
そんなオーディンへと詰め寄り詰るスラオシャは、返る声に挙動止めては首傾げ。
とうとう老人病が始まったかと呟き辺り見て、誰一人笑わぬ様に表情消してはミカエルの方へと視線向け。
「あの鳥、わざと説明を省きやがったな……」
「落ち着けスラオシャ。今はあの鳥に対処している場合では……」
そう時間の経過を要することなく瞳の虹彩消して槍を取り、外界へと降り立つ間際に紡がる声へ知った事かと吐き捨てた。
流石にこれは止めるべきか?
異様な雰囲気を感じたというミカエルが思考を巡らすその瞬間、再び警告音が鳴り響き。
「今度は何事だ!!」
「し、神帝王国で反転を確認! 完全体へ移行するのも時間の問題かと思われます!!」
「いい加減にしろよ人間どもぉぉ!!」
頭を抱え絶叫するオーディンに、ミカエルは何か落ち着いたと後に語ることとなる。
同じく瞳に光を戻すスラオシャも現るアンドロメダへと視線向け、剣の腹でオーディンの後頭部殴る様に口笛鳴らして目を背け。
「叫んどらんで早ぉ状況教えんかい!!」
「何すんじゃアンドロメダ!! 事務官落として……」
「そんな時間あるんかドアホ!!」
「オーディン様、全員揃いました! 直ちに会議を開始してください!」
微かに響く恨み言を口笛で以て掻き消すと、早く説明始めろと促した。
そんなスラオシャに覚えてろよと呟くオーディンは、首を振って視線上げ。
集まる神々と大天使級の者達見据えて息を吸い、表情切り変え威厳に満ちた声を響かせた。
「よくぞ集まってくれた……」
「無駄に時間喰うとらんと、今すぐ高位神数十体派遣せぇっ!」
「「誰もが貴様のように暇ではない!」」
「だが、魂の消滅だけでなく反転者の処分まで手掛けるとなると……」
「こんなときに頼みの統率者はどうした!」
「そない急に能力使いこなせるようになるかい! 戦闘能力皆無や!!」
オーディンが説明終えるや叫び声が重なって、紛糾する議論に主催者は頭抱えて蹲る。
儂の悠々自適な余生はどこ行った。
涙を流し慟哭するオーディンに大天使達はもう死んでるやろがと呟くも、それが神々に届くことはなく。
「だが、そうなるとどちらも倒されかねないぞ!」
「ならば、まずは反転者から……!」
「いや、こんなことを隠していた鳥だ! 他の問題も隠しておるかもしれん!」
「せめて、権限の在るものがもう少しいれば……」
「「確かに」」
平行線を辿る議論は紡がる声が響くや収束し、何で気づかなかったのだろうと笑う神々は互いの肩を叩き合う。
頭大丈夫かと無言で問う大天使達の視線に返す者なぞどこにもおらず、冷や汗垂らす一部の大天使は後退り。
「よし、大天使の一部に権限を与えてだな……」
「だが、魂を消滅させるような権限はやはり厳重に扱うべきであるからして……」
「では、本件功労者であるラファエル及び問題の責任者であるミカエル、スラオシャ……えぇいっ、もう面倒くさい!! この際刑期を免除し、五大天使全員にも下級神と同じ権限を認め……」
「いや、スラオシャの権限は現状維持で良かろう!」
「せやないと全部滅んでくわ」
「だが、今回ばかりはそうも言っておれんぞ」
「うむ……」
「「いや……あの……」」
天界史上稀に見る速さで物事が決まる様には嫌な予感がしたと、弱々しい声微かに紡ぐ者達は後に語ることとなる。
とりあえず早く逃げよう。
視線で語るラファエルにスラオシャとミカエルは頷いて、物音立てることなく議場入口へと足を向け。
「「以上、決定を下す!」」
「勇者に対しては、スラオシャ、ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの五大天使に対し討伐を命じる! それに伴いウリエルの刑期は免除、人員は1億まで運用を許可する! 指揮官は女神イシュタル!!」
「「……え"?」」
重なる声に肩を震わせ疾走始め、間を置くことなく響く宣言に足を止めては太い低音投げ放つ。
今何て聞こえたと無言で語る3人は顔を見合わせ押し黙り、徐に議場中央を仰ぎ見るや掠れた声を震わせた。
「い、イシュタルって……あのイシュタル様ですか?」
「さ、さすがにそれは……」
「す、すいません……! 私なんかでは力不足なのは重々承知ですが、せ、精一杯頑張らせていただきます!」
ラファエルとミカエルが怯え混じる声を震わす裏で、中央に現る薄蒼の髪を背中まで伸ばした女性は頭下げ。
柔和な顔立ちの女性より目を逸らす議場の面々は、絶望混じる蒼白な顔で呟いた。
「「……あの世界、滅んだな」」
「反転者の処分については、女神アンドロメダに一任する! 人員は無制限!!」
「その他大天使級の者は部隊毎に行動し、不穏な動きがないかを確認せよ! 動け!!」
「「Yes,Sir!!」」
重なる声に目を背けて声張るオーディンが行動始める大天使達を見つめること暫し、狂気混じる笑い声を微かに震わせ脱力し。
椅子に座り落ちながら額を机に打ち付け挙動止め、駆け寄る秘書官達はどうしてくれると問題児達を睨みつけ。
「……ラファエル、今度は何してくれた」
「何でもかんでも私のせいにしないでもらえます?」
「そういえば、ガヴリエルはどこ行った?」
「下界でまぁ色々やって、ミカエル先輩に始末されたらしいですよ」
「そうなると、今は休眠期か……」
目を逸らしながら乾いた声音響かす大天使達に浮かぶ感情は何もなく、ただ時間を消費していた時のことだった。
議場入口に現る女性はミカエル達見るや地を蹴って、短く整えた真紅の髪靡かせ大天使達を抱き締める。
「よぉ! 久しぶりじゃねぇかっ!!」
「ウリエル!!」
「釈放おめでとうございます!」
「相変わらず薄い服着てるなぁ」
「放っとけ脳筋ミカエル! お前の価値観が古臭すぎんだよ、流行を知れ!!」
「よし、お前戻ってきたら事務官刑な」
相手を認識するや顔を綻ばす大天使達は慣れた様子で軽口を叩き合い、近況報告に花咲かす。
快活に笑い応じるウリエルと呼ばれた女性は会話が一段落したところで離れると、壁に背中を預けて頭掻き。
「それよりもさ、聞いてくれよ! 舐めたことほざくアホを絞めただけなのに、みんなして私が悪いってさ」
「お前の少しは余程のことだからな……」
「でも情状酌量出た辺り、よっぽど権力あって人望のない神様に当たったんですねー」
「ウリエル、殴る相手は選びなさいよ?」
「「さっすがスラオシャ(先輩)、説得力あるなー」」
「お前らな……」
「みなさーん! 行きますよー!!」
苦笑する同僚達に同情求め、響くイシュタルの声に口を閉ざし俯いて。
皆一様に疲労に満ちた表情浮かべると、イシュタルに連れられ共に外界へと降り立った。
その様を目撃した天使級の職員は、とある地域に生息する社畜と呼ばれる存在が如く形相だったと日記に記すこととなる。




