6ー5ー3
「ハハ……ハハハハハハッッ!!」
天使たちが恐怖の呻きを挙げる元凶の、天神和輝は刀を振り虚空に顕現させた銃より銃弾を射出して、おどろおどろしく禍々しい瘴気を放つ骸骨たちを穿ち砕き頭蓋を叩き割って炎を抱かす。
対する骸骨座しはせず、崩壊しては形を戻し歯を打ち鳴らしながら手を伸ばす。
「おい雑魚共、てめぇらには用がねぇんだよ!!」
そんな骸骨たちを一斉に重力で押し潰し、首領を出せと歪な声を響かす者に呪いの祈りが重なって。
嗤い嘲笑う者たちの均衡保たれ暫し後、唐突に全ての魔法が打ち消え力が抜けた和輝は膝を就く。
……魔力切れ
同時にそんな声が重なる瞬間、骸骨たちは先程よりも大きく歯を打ち鳴らす音を響かせた。
「ど、どうしよどうしよ……!! このままじゃあの人死んじゃうよ……!!」
「でも、私たちじゃ……」
「迷ってる暇ない!! 行くよ!!」
戸惑い蹴破る天使が地を鳴らし、取り出す鉄槌を振り上げては照準定め力込め。
〈砕け!!〉
握る鉄槌に荘厳な金色の光を纏わせて、和輝を襲う骸骨たちを粉砕し。
〈〈邪魔!!〉〉
近づく髑髏を蹴飛ばすや、シオンとクリューネルが杖を振り下ろして破壊する。
「「大丈夫!?」」
「阿呆か!! まだ何も終わってない!!」
「「え?」」
怪異の行く末を見届けることなく和輝に近づく天使たちだが後ろを見ろと、後方を睨めつけながら突き刺す鋭い声に挙動止めては膝を上げ。
……え"?
感情消えた声を重ね首もたげ、振り向く瞬間に視線合わせて歯を打ち鳴らす、ガシャドクロ共を見て呆然とした声を震わせた。
「何で……?」
「完全に壊したはずじゃ……」
「それが知れれば苦労はしねぇよ!!」
困惑当惑により戦闘止まるを寄貨として、骸骨たちの動きは徐々に滑らかさまで取り戻していて。
固まる天使たちを怒鳴りつける和輝だが、立ち上がることすら能わず忌々しげに舌鳴らし。
迫りくる数多の手の平が、眼下の射程を捉えた瞬間だった。
……これ、偽物
クリューネルが杖を振ると同時に骸骨たちが瓦解して、崩れる骨が塵に還れど結合し、固まり蠢き欠片を探す。
説明求める視線に面倒態度で語る天使が折れたは暫し後、杖を打ち付け金音鳴らし静かな声を吐き出した。
「少ない呪いで生み出された紙細工、今までの攻撃は火が燃え広がらないように周りに水をかけていたのと同じ。衝撃があった一瞬だけ異様に硬くしてるだけ」
「うん? じゃあ、本体は……」
復活始めた骸骨眺めるサキエルの表情より温度が消えるまでの時僅か、祈り混じる悲壮な顔で後退り始めど叶わずに。
……アレ
淡々と紡がれる声の先を認識したその瞬間、声に成らぬ息吐き天を仰ぎ涙した。
絶対無理……
隣で乾いた笑みを浮かべるシオンは諦観に満ちた眼差しを送っていて、攻撃止まる間に再生完了した骸骨たちが不協和音を打ち鳴らし。
「ど、どうするどうしよう……!」
「逃げるしかなくない!?」
「賛成。火力が足りな……」
「―――あー、なるほど。つまり、あの箱ぶっ叩きゃいいってわけか……!!」
「「え?」」
何を言っているんだ、こいつは。
天使たちが具体的な逃走経路の算出始める他所で鳴り響く、覇気に満ちた声に呆然とした音返って時止まり。
だから、あのコトリバコぶっ叩けば解決するんだろ?
意図を測りかねると視線突き刺す者たち嘲笑い、天神和輝は迫る骸骨殴り飛ばして立ち上がる。
「でも、でも……」
「私達じゃ、あれに届く攻撃を出せな……」
「そうか。じゃあ、お前ちょっと来い」
「ん?」
頭を心配そうに見つめる者たち捨て置きサキエルへと視線向け、疑問の表情浮かべ近づく彼女の手首を掴むや獰猛な笑みを浮かべて囁いた。
「ちょっと魔力貰うぞ」
「え…………ギャアァァァッッッ!! ち、ちょっと吸いすぎ!! どこで習ったのそんな魔法!!」
目を見開き手を引こうとするも力が抜けて地へと落ち、驚愕の表情を浮かべ恨みがましげな顔を向け。
……ちょっと足りないな
温度上がる体を震わせ視線突き刺す御使のことなぞ脇へ遣り、そう呟くと同時にシオンとの距離詰め手を伸ばす。
え……キャアァァァッッッ!!!
戸惑い表す瞬間悲鳴と共に力が抜けるシオンだが、崩れ落ちる天使に意識向けることなく手に取る刀を何度か振った和輝の表情晴れやかで。
「よし、こんなもんか」
「ち、ちょっと何のつもりなの!?」
「あ? 何って……こうだよ!!」
地を這い叫ぶ者たちへと目を向けるや跳躍し、刀に蒼い炎を纏わせ流れるように振り下ろす。
え?
軌道の直線上にいる全ての物体は豆腐が如く切り裂かれ、重なる喉の上から吐き出る音は意味成さず、最大にして最も禍々しさを放つガシャドクロにさえ何をする暇も与えず縦に割り。
ちょっと、これって……!!
完全に分かれるコトリバコが蒼い炎に包まれながら落とした漆黒の珠も、破邪の炎に貫かれ。
「「裏魔王の必殺技……!?」」
呆然とした声に意識すら向けることなく和輝は虚空に刀身だけを収めて前傾し、振り向きざまに抜刀しては影より現れた眼球なき少年を切り飛ばす。
復活はなし、と
塵となって消える少年を感情なき瞳で見つめながら、無情な声を響かせ和輝は顔を上げ。
よぉ、籠の中から食い殺される気分はどうだ?
前方で揺らめく影へ向け、獰猛な声を突き刺した。




