Side 天桜望來&天安院月菜
時は、天桜望來と天安院月菜が食い千切られたところにまで巻き戻る。
肉も残らず微かに原型留めた骨が残るだけの場所。
「あ……れ……?」
「なん……で……?」
そこでは、望來と月菜が呆然と立ち尽くしていた。
「私たち、確かに食い千切られて……」
「死んだ……よね……?」
意味が分からない。
そう呟く二人は大きく息を吸って手を伸ばし、自分の体を触り壁に触れて感触があること確認し。
「……五感はあるみたいだね」
「うん……あと、実存在も」
戸惑ったような声を響かせ虚を眺め、混迷深めそこに在り。
何を言うでもなく立ち尽くせど後方より沸き上がる、怨念塗れた呻き声に目を見開き顔を引き締め背を正す。
虚空より剣を引き抜き足場蹴り、後ろ向きに回転しながら天井蹴って腕を引き。
「「……消えなさい」」
剣を勢い良く振り下ろし、人形の頭と心臓がある位置の胴体を横に割る。
地に降る二人は剣を虚空へ放り投げ、互いの顔見つめ握る拳を相手の腹に打ち込んだ。
それと同時に目を極限まで見開き血が混じる吐瀉物撒き散らし、口元拭い鋭い眼光交わして距離を取り。
「ミク」
「うん、ルナ」
「生き返ったね」
「仕様が謎すぎるけど」
振り向きながら足場蹴り、月菜が迫り来る虹彩失った生徒を切り飛ばしては望來が虚空より取り出す端末操作して。
はっ、ざまぁみろ。
自身ら殺した少年が、時空の狭間で彷徨うを見つけ邪悪な顔で吐き捨てる。
「ミク、やっぱりこっちは死んでた」
「こっちも大成功!」
「「―――走ろうかっ!」」
月菜の声に笑顔戻し告げたは時置かず、示し合わすことなく壁を蹴って窓を割り、空飛び太陽の照り輝く高層建物が並ぶ世界へ降り立った。
「「間に合ったぁっ!!」」
「いや、あそこ強すぎでしょ!!」
「本当それ! 今回は生き返ったからいいものの、あんなの命がいくつあっても足りないもんね」
街路に置かれた長椅子に座りながら笑う二人は息を吐き、力抜いて空を見る。
一体何だったんだろうね、さっきの世界。
暫し無言の時間が続いた後に望來が問いかけるでもなく呟いて、対する月菜は何を言わずに虚を見つめ。
さっきの人、私の目の前で殺されたんだけどね。
徐に世間話でもするが口調で言葉を紡ぎ、聞く者何を言わずに続き待ち。
「体が無かった。ついでに意思も」
「は?」
軽く紡がれる声に聞く者の目が開き、視線を空から引き剥がす。
じゃあ、私達が生き返ったのには何か理由があるってこと……?
信じられないと顔で言い、月菜の方見る彼女の確信した顔見て息飲んだ。
「うん、そう思うよ」
「じゃあ、もしそれが解れば……!!」
「命を気にせず戦える!」
「じゃあ、まずは条件の絞り込みだね」
目を輝かす二人は背を預け、瞳に廃校写し死体見て。
「私たちにあったもので、他の人たちにはなかったもの」
「私たちにはなかったもので、他の人たちにはあったもの」
「私たちにあったものは、敵と戦うための武器」
「他の人たちにはなかったものは、敵と戦うための知恵」
「他の人たちにあったものは、集団意識」
「私たちになかったのは、逃げることができないほどの恐怖」
「私たちにあったものは、敵が退いた運」
「他の人たちにはなかったものは、戦うための勇気」
「他の人たちにあったものは、恐怖と絶望」
「私たちになかったのは、死に対する絶望」
淡々と途切れることなく一定の速度で言葉を紡ぐ二人が唐突に言葉を止めたは同じ時、声を重ね表情戻し頷いた。
「もしこれが条件だとするなら……」
「この世界、本っ当に性格悪いね」
虚空から望來は剣を、月菜は小銃を取り出し背中を合わせ腰落とし。
どっかに拠点作ろうか
自身ら囲む狂気浮かべた人間たちに獰猛な笑み向け武器構え、地より伸びる無数の手を見て口歪め。
「行くよ!」
銃声と同時に地を蹴り突撃し、爆炎巻き上げ生き残る者たちを肉片へと変え焼き尽くす。
歩みを止めず前方で武器持つ者たちを声なき者へと変えてゆき、道を塞ごうとする殺り残しを月菜が銃弾で吹き飛ばしながら駆け抜ける。
「ミク、今日は注意力足りてないよ!」
「うっさい!」
飛ぶ声に返る口調へ呆れ混じりの息が漏れ、囲みを抜けてもなお暫く走り続けた後のこと。
……何これ?
唐突に地を蹴る望來が後ろ向きに回転しながら眉潜め、同じ方見た月菜も瞳より温度消え。
「うっわー、これは外道」
「鬼畜の所業じゃん、これ」
自身ら捉える砲弾躱して宙を飛び、射程範囲外に出ては塀で囲む建物の敷地へと降り立った。
地に足着くや即座に周りを見回す二人は襲い来る敵を惨殺し、隠れた敵の行動許さず黄泉送り。
「うん、こことか良さそう!」
「青龍組の本部か、良い所に着いたね!」
朗らかな顔でそう言いながら、大股で扉を蹴飛ばし中にいた者たちを瞬殺して回る。
えっと、じゃあまずは食料と武器を……
最地下に到達し倉庫の扉を蹴飛ばす二人は勝手知ったる様子で整理票を一瞥し、物資を虚空へ放り投げ。
収奪終わる頃には、再び日が高く登っていたという。
その次の日の朝遅く、作業が終わり一息ついた頃のこと。
「あ、もう朝だよ」
「いつの間に」
時計眺めた二人は大きく伸びをして、倉庫出ながら取り出す固形の栄養食を齧り言う。
「こっからどうする?」
「どうも何も、まず状況が分からないんだよね」
「確かに」
間延びした声を響かせ水飲んで、胃に内容物押し込んで。
魔力はどんなもん?
だいぶ回復してきた
一歩で踊り場まで跳びながら階段上り、屋上へ続く扉を蹴り飛ばし。
「情報持ってそうな奴いないかなー」
「ま、気楽に根気よくやろうよ」
武器引き抜かながら扉駆け抜け跳躍し、敵性反応無きこと確認するや拍子抜けを顔で言って足付ける。
何を言わず柵へと歩く二人は手を置いて、その瞳を群青と深紅に染めるや色戻し。
「「どうするよ…………って、待てやおい。何でアレが出てきてやがる」」
強張る声を重ね恨みがましげに顔を上げ、周囲への注意忘れ前を見る。
「しかも、何であいつまでいるの……?」
「ちゃっかりこの世界に適合してやがるし……」
忌々しげな視線向かう遥か彼方の先にあるは生まれた命の終着点、歪んだ願いの吹き溜まり。
影より無数の異形や元人間が這い出ては、作業が如く動きで切り捨てらる処分場。
無表情で刀を振り回す天神和輝と周囲の影を、遥か彼方から見る望來と月菜はそれらの動きに合わせ視線動かして。
「……これは、期待できるかな?」
「少なくとも、行動しないよりかは良いかもってとこかな」
示し合わすことなく武器を銃へ持ち換えて、和輝の後方に転移するや反応許さず腕を上げ。
「人を泣かすとか、最低」
「さすが、人間ですらない愚図は格が違うわ」
嫌悪に歪んだ顔知らず、後頭部に銃をつきつけた。




