Side 天桜望來&天安院月菜
場面は桜丘高校入学式まで遡り、登校時の桜ヶ丘でのことだった。
「ねぇ、ルナ。私、すっごく大事なこと忘れてるような気がするんだけど」
「奇遇だね、私も」
頭上に疑問符浮かべる天桜望來と天安院月菜が、緩やかな足取りで坂を登り抑揚なき声互いに向ける。
「何か、頭に靄がかかった感じっていうか……」
「気づかないうちに、何かを間違えているような……?」
何なんだろ、と何度目かも数えず溜息を吐いて、二人は高校の門潜り。
敷地立ち入る瞬間に前方より発せられる陰鬱な殺気で瞳孔開き、即座に飛び退きながら微かに手を上げまた下げる。
「……どういうこと?」
「さぁ?」
呟く望來を仰ぎ見て、月菜は静かに声を吐き。
とりあえず、行ってみる?
警戒解いた声を紡ぎ返る肯定に頷くと、地を蹴り僅かな足場へ降り立った。
「「何これ??」」
「学校に音出したら襲ってくる猛獣でも乱入してきたの??」
「どうやったらこんな状況になんのよ」
眼下に浮かぶ、恐慌状態に陥る群衆眺め呆けた声が重なって。
状況が理解できないと困惑したは僅かな時間、表情戻し辺りへ意識遣り。
地上を目で追い数拍後、殺気を振り撒きながら体育館へと歩く、天神和輝へ目が向いた。
見 つ け た
重なる声音に喜楽の感情有りはせず、和輝を見る目に光なく。
「ねぇ、ミク」
「うん、ルナ」
「「最っ高に気持ち悪い」」
心から蔑む視線を突き刺し地に降りて、教室分けの紙を見もせず体育館へと向かう。
その翌日のことだった。
荘厳で非情な重鐘の音が、前触れも予兆も示さず三度鳴る。
「「……え?」」
離れた場所で望來と月菜が呟く一方で、何事もなく授業が続く状況に瞳狭まり立ち上がり。
ざわめく周囲を無視して扉を蹴り飛ばし、集まる視線捨て置き廊下へ走り出た。
「「きゃぁああぁぁぁっっ!!」」
「「何!?」」
それと同時に反響する悲鳴は恐怖と痛覚で彩られ、振り向き様に剣抜く二人は廊下の対極で顔合わせ。
……嘘でしょ??
深碧と深紅の瞳を輝かす者たちが呆然とした音を重ね数拍後、温度消えた感情吐き出した。
「「一番面倒な奴らじゃん」」




