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併交世界  作者: 氷桜羽蓮夜
144/200

5ー1ー19

 魔界で悪夢の邪神と呼ばれた者が復活したと同時期、神帝王国国境付近では。


「宰相閣下! 王都で大火事が発生、対魔獣結界も長くは持たないとのことであります!!」

血相を変えた伝令兵が国王執務室へと駆け込んで、悲壮さ混じる声を響かせていた。


「あくまでも陥落ではないと?」

「はっ! 現状では大火事としか報告が入ってはおりません!」


対するマリナは淡々とした感情含まぬ声でそう問いかけて、伝令兵を見ることなく虚空から板を取り出し手を翳し。

返る声に言葉を止めるとその瞳を黄金に輝かせ、目を見開き唇を吊り上げ呟いた。


「なるほど。ようやく出てきたか……」


歓喜が混じるその声に、伝令兵は目を恐怖を湛えた眼差しを以てマリナを見つめ。

そんな視線なぞ気にした様子も見せぬマリナは、机へと歩み寄ると手を伸ばし。


「結構! 貴官はリカン及びリカード中将に対帝国軍の全権委任を通達せよ!!」

「は、はっ!!」


書状詰まる封筒を投げつけると同時に鋭い声を響かせて、逃げ出すように走り去る伝令兵を見送りながら狂気満ちた笑み浮かべ。


「この命も王国もくれてやる! その代わり消えてもらうぞ真理の探究会!!」

漏れる嗤い声を隠すことなく瞳孔より目を見開いて、叫ぶような声を轟かせ王都へと転移する。


「さぁ諸君、本物の戦争を始めようではないか!!」



 焼ける王都に、銃弾と爆音が鳴り響く。


「逃げろ! 逃げろっ!! 逃げろぉっ!!!」

「どこに逃げろと言うんだ!!」

「魔獣だ! こっちは魔獣がいるぞ!!」

「落ち着けとは言わんが、慌てるな! 死なんやつまで死ぬことになるぞ!!」


最早消火なぞ望むべくもない王都の中を逃げ惑う民衆に、青い制服を着た者たち(救命隊)が怒号を上げながら誘導している時だった。


「これはまた、随分と派手にやってくれたものだな」


マリナが混乱の最中虚空より降り立つと同時に吐き捨てて、豪火と混乱跋扈する様子に自嘲気味な笑み浮かべ。

辺りを見回し表情を凄惨な笑みに変えると大きく地を蹴り腕伸ばし、外れより静かに民衆を見つめる人の首を締め上げる。


「なぁ、真理の探究会さんよぉ!」

「な、何が……」


唐突に訪れる首の圧迫感に悲鳴を上げる人影は、マリナの顔へと視線を動かした瞬間に卒倒し。

そんな外套(ローブ)纏う者の様子に額に血管を浮かべ息を吐くマリナだが、足を振り上げて股間を蹴り意識を強引に引き戻す。


「御託はいい。情報を寄越しな!!」

「カハッ!!」


荒々しく吐き捨てるマリナは首を掴むと引き倒し、瞳の色を黄金に変え恐怖に染まる瞳を見据えて押し黙り。

痙攣するその者を抑えつけながらただ無言で瞳を見据え、その口元を吊り上げ嘲笑い。


「……最高だ! 最っ高の気分だ!!」

外套(ローブ)纏う者が動きを止め暫し経ってからのこと、生ける屍と化すその者を放り投げ、壊れた声を轟かせながら立ち上がり。


「さぁ諸君、本物の戦争を始めようではかいか!!」

「ふざけるな!!」


集まる魔獣や王国兵、外套纏う者たちを見据え狂気に満ちた声を震わせた。

それと同時期、魔界の一画では怒号が響く。


「まず問おう! 誰だ貴様は!!」

「天照様だとかつまらねぇことは言うなよ?」


正義を司りし大天使ミカエルの声に続いて武器を取り出すウリエルとスラオシャだが、対するは薄い笑み浮かべる天照(フォルネウス)で。


「それと、終わる世界ってのはとういう意味か聞いておこうか」

「事と次第によっては、いくら天照様の見た目であろうと容赦はできませんよ?」


固い声響かす2人だが、対する天照は戸惑うシオンやサキエル、クリューネルの方へと目を向けて。

3体と共に首を傾げるイシュタルまで視線を動かすとただ嗤い、イシュタルの後方を指差し嘲るような声を静かに紡ぐ。


「容赦する? されるの間違いではないですかね?」

「「は?」」


そんな声に気が抜けたような音を出す天使たちはその指が向ける先、拘束具で山が如く巨大な図体をした物体を仰ぎ見て。

咆哮だけで大地を巻き上げ消し飛ばし、悪夢の邪神と呼ばれるそれを見て息を呑み。

時間を置くことなく再び迫る咆哮の衝撃波を防御結界を以て受け止めて、拘束具が崩れ落ち一際図体が小さくなる邪神の様に挙動止め。


「……何だと!? 第2階梯までもが吹き飛んだっ!?」

「災厄の魔女っていうおかわりもありますので、どうぞ負ける未来へ死力を尽くしてくださいな♪」


一拍置いた後に半狂乱の声響き、愉悦混じる声がミカエルの声を掻き消し虚空に消える。

薄く微笑む天照だが、唐突に虚空を見上げると目を閉じその身に纏う空気を穏和なものへと変化させ。

戸惑ったような表情を浮かべると、弱々しい声を微かに紡ぐ。


「えと……」


そんな天照に向け視線だけが集まるが、返る声なき状況に天照は目に涙を浮かべ俯いて。

そんな様子に呆れたような息を吐くアンドロメダは天照に近づきその肩へと手を置くと、もう片方の手で天照の後方を指差しただ告げた。


「詳しくは聞かんけど……先に、あっち何とかしてぇな」

「はい?」


指爽やかな笑み浮かべるアンドロメダの様子に首傾げる天照だが、無邪気な顔をし指し示す方を目で追って。

その先にいる、穏和な空気を消し重厚な破滅の圧力放つイシュタルの姿に肩を震わせ数歩引き。


「……誰ですか、こんな舐めた真似を始めた愚か者(アホ)は」

「「ひいっ!!」」


アンドロメダへと縋るような視線を向けたその瞬間響く、憤怒に満ちた重低音に他の天使たちと共に飛び上がる。

余波を余すことなく受け止めるイシュタルの隣で抱き合う3体の天使たちは、救いを懇願する視線を震える天照へと突き刺して。


「真理の探究会とか言ってましたけど、本っ当に知りませんよ!!」


そんな3体の視線に頭を抱え蹲る天照は、勘弁してくれと悲痛な叫びを響かせる。

そして、突き刺さる数多の視線に涙を浮かべながら邪神の方へと顔を向け。


「ほ、ほら! まずはあっちを何とかしませんか!?」


必死の形相で指を差してそう叫ぶも、返る音なき世界に打ち拉がれて涙を流す。

そんな天照の様子に、疲れたような息を吐くミカエルはアンドロメダの方へと顔を向け。

手を振るアンドロメダの様子に半眼で呆れたような視線を突き刺すも、頷き邪神の方へと向き直る。


「これが片付いたら知ってること全てを吐いてもらいますよ」

そんなミカエルに合わせ、スラオシャとウリエル、ガブリエルも同意の声を重ねイシュタルの言葉を待つことなく虚空より取り出す武器構え。


「た、頼んでみます……」


イシュタルに何も言わせることなく会話を打ち切る一同に当の本人は眉を吊り上げるも、何を言うこともなく黙って邪神の方へと手を伸ばし。


「「い、イシュタル(さん)……?」」

〈〈滅べ!!〉〉


戦々恐々とした声上がると同時に数多の声音重なる叫び声響き、邪神は吹き飛び宙を舞う。

そのまま地を打つ邪神は苦悶に満ちた声響かすが、表情変えぬイシュタルは指を上げては手の平を虚空に叩きつけ。


「ほ、本気で怒ってんであれ……」

「ど、どうするんですか……?」


邪神を転がし体を欠損させるその様に、天界最狂と名高いスラオシャまでもがアンドロメダと共に冷や汗流しながら強張った声を微かに紡ぎ。


「どないも何も、放っておくしかないやん……」


ウチに振らんといてぇな。

自分は関係ないとでも言いたげに返すアンドロメダは手を振ると、地に膝を就き震える天照の方へと目を向けて。


「ま、後は何とかしてくれるやろ」

「ふざけないでくださいよ!?」


てめぇいい加減にさらせよ!?

諦めたような表情浮かべ何もかもを投げたアンドロメダに、天照は狂気混じる叫び声を響かせて。


「「そんなことはどうでも良いんで、助けてくださいよぉ……」」


そんな女神と大天使たちを他所に、シオンとサキエル、クリューネルは弱々しく助けを求めていた。



 それと同時期、魔界の中心部に位置する雷王城では。


〈死ね!!〉

〈魔王様のために!!〉

〈撃て!!〉


大規模な武力衝突が起こり、爆音と衝撃波が絶えることなく跋扈していた。


「おい蝿と傲慢! 見てないで助けろ!!」


1人が2人を襲う構図となっている状況の中隅でひっそり震えるは、暴食の大罪を司りしバアル・ゼブル(ベルゼブブ)傲慢(憤怒)の大罪を司りしルシファーで。


「「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」」

「チッ、使い物にならねぇ役立たずだなぁっ、おい!!」

「あぁ、世は無情……全ては壊れ消え去って行くのです……」


壊れた声と荒々しい声が響く中、至るところが崩壊しては抉れ爆散し崩落するその様子に、自身へ向かう攻撃を防いで返す嫉妬の大罪を司りしレヴィアタンは鬱々とした声を静かに紡ぎ。

今や見る影もない荘厳な造りをした雷王城へと悲しげな目を向けて、首を振り表情を戻して眼前の敵をただ見つめ。

迫る攻撃を躱しては敵へと肉薄し、突き出される刃を躱しては再び肉薄せんと空を勢いよく蹴りつける。


「邪神を復活させた罪、最早言い逃れができないものと知ってのことで実行したのであろうな!!」

「戯け! 最早雷電の魔王なぞ恐るるに足らんわ!!」

「魔王様を1人にすれば私に振り向いてもらえる……! 愛の新居はまた作ればいい……!!」

〈〈殺れ!!〉〉


魔弾が飛び交い状況が混沌とし始めた頃のこと、唐突に距離を取る彼の者は迫る強欲と嫉妬の姿に息を吐き。


「……これ以上は、愚策か」


疲れたようにそう呟くと不安定な床の上に座るゼブルとルシファーへと目を向けて、虚ろな瞳を虚空に向け震えるその様に挙動を止め。

即座に表情を戻すと手を伸ばして2人を浮かせ、焦ったような表情浮かべ突貫する強欲の大罪を嘲笑い。


「5年前に、殺してやる」


凄惨な声で吐き捨てるようにして言い放ち、同時に魔界の辺境へと転移する。

そして、大地と共に邪神が吹き飛び壊れ狂気に満ちた笑い声響く、或る者曰く地獄絵図を目の当たりにして息を吐き。


「なんじゃこりゃあぁぁっっっ!!!」

「それはこちらの台詞だ」


太い叫び声を轟かすが、返る声に目を見開き飛び退いて。

自身を襲う魔弾を躱し、虚空より剣を引き抜き再び迫る魔弾を弾いて忌々しげな声を響かせる。


「しつこい!!」

「それが私たち(大罪)の性分ですよ」


そんな声と同時に短剣を逆手に持ち影から襲うは、嫉妬の大罪を司りしレヴィアタン。

掠める刃に舌打ち鳴らして剣を振り数多の銃弾を浴びせるも、即座に影へと消えるレヴィアタンの様子に瞳孔を見開き手を伸ばし。


「あなたも、私じゃなくて魔王様襲いなさいよ!!」

「だって魔王様、あなたのことしか見ていないんですもの!!」

「これだから……! これだから病んでる頭逝った奴は(狂精神者)は……!!」

「貴様も似たようなものだと思うがな」


影に縛られ暴れるレヴィアタンを宙に引き摺り出しては返る声に疲れたような声紡ぎ、響く呆れたような声に剣を振り。

難なく避けレヴィアタンを縛る影を断ち切るマモンはそのまま突っ込み剣を打ち、即座にレヴィアタンの遥か後方へと転移し距離を取る。


「あなたがいるから魔王様は私を見てくれない! あなたがいるから私はどれだけ魔王様に尽くそうと見向きもされない!! みんなみんなみんなみんなみんなみんなあなたが悪い悪い悪い悪い悪い!!! あなたが憎い、あなたが妬ましい! あぁ妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい……」

「……今回ばかりは貴様に同情してやる。大人しく死ね」

「そりゃどうも。同情してくれるなら貴女が先に死んでくれないかしら?」


どちらも距離を詰めることなく手を伸ばして魔弾を撃ち合うが、感情的に叫び猛攻かけるレヴィアタンの様子に引き攣った笑みを浮かべる2人は掠れた声を響かせて。

唐突に敵眼前へと転移しては離れ宙を舞い、斬撃を放ち避けながら魔法を撃ち合い邪神を無視して地響き鳴らす。


「あ? ちょおあんたら、何して……」

イシュタルより逃げてきた者たち(天界勢)が集まりそんな3人を見上げるが、追いつき空を見上げる天照は戦闘を行っている者を見るやその目を爛々と輝かせ。


「あ、あの人たち縛ってください! イシュタルさんに突き出しますよ!!」

「え? 人柱にできるんですかあそこ」

「え、えぇ! おそらく私よりも事情を知ってますよ!!」


だから、私を追及するのは止めてください!

歓喜に打ち震えた声響かす天照はそう告げると虚空から扇子を取り出して、戦闘起こる空間だけの次元をずらす。


「何!?」

「隙だらけだな」


驚愕に満ちた表情浮かべ叫ぶマモンだが、直後に響く声にその表情を絶望と恐怖へと染め目を瞑ると同時に首は落ち。

鈍い落下音がすると同時に肉を穿つ音響き、レヴィアタンの心臓も貫かれ。


「永遠に黙ってなさい」

剣を抜くと同時に冷凛な声でそう言い放つ残った者は、振り向き呆然と佇む天照以下一同に尊大な口調で吐き捨てた。


「生け捕りなんて、無理な相談ね」

「……じゃあ、イシュタルさんを何とかしてくださいよぉ……」


そんな声に涙を流す天照は崩れ落ちるようにして蹲り、絶望にうちひしがれたような声を響かすも。

対する者は腕を組み鼻を鳴らすと、一切気にした様子すら見せることなく言い放つ。


「できると思うなら、今すぐ治る見込みのない精神障害を理由に自殺しなさい!」

「鬼! 悪魔!! 色欲魔!!!」

「えぇ、私は悪魔ですが何か?」


そんな声に壊れた表情浮かべて叫び散らす天照だが、返る小気味良さげに嗤う様に周りの天界勢たちは距離を取り。


「ひ、酷すぎやせぇへんか……?」

「「この人怖い……」」

「何かラファエルと似ているような気がするが……」

「あー! 酷いですよ? 確かに親近感はありますけど、私あそこまで性格悪くないですからね!?」

「さぁ、どうだか」

「スラオシャ、お前も似たようなものだからな?」


無表情でそう呟くも、いつの間にか消失していたルシファーとゼブルのことは、話題にすら上がらなかったという。


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