表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
291/317

第十八話「王都の夏休み 1」

 待ちに待った夏休みに突入!

 ……といったテンションではなく、起きたら世の中はどうやら長期休暇に入ったらしい、他人事のような感覚だ。

 ほぼ学校に行っていなかったので仕方がないのかもしれない。

 前の世界の高校生活であれば日々宿題や試験に追われ、その状況で迎えた夏休みであったならば「ひゃっほおおお!」と大声をあげていたことだろう。

 まぁ、それでも全ての時間を自分の好きなように過ごせるというものは、やはり嬉しい。

 ……そもそもお前は学校に行く義務はないのだから、いつでも自由だろうという突っ込みはなしだ。

 朝起きて、いつも通り身支度を整えていると、アニエスも起床してくる。

 青は定位置で丸まって寝ており、起きてくる気配は一切ないのでそっとしておく。

 その後、二人で身だしなみを整え、一階へと降りる。

 夏休みに入り、学校の食堂もやっていないので、今日は寮で食べるという選択肢しかない。

 朝食は買い置きの硬いパンと森都で作ったジャム、それと簡単な野菜スープ。

 調理したのは俺。

 お姫様が食べるには質素すぎる朝食ではあるが、先日ジャムを食べてもらったところ、アニエスのお口にあったようで、喜んで食べてくれ、ここ最近の朝食の定番になっていた。


「それじゃ、アリス。私も用事が終わり次第遊びにいくからね!」

「はい、楽しみに待ってます。……まぁ、まだ暫く王都にいますが」


 朝食を終えると、アニエスは外に停まった馬車に乗り出掛けて行った。

 学校が休みに入っても、アニエスは王城での公務&社交の予定が一杯のようだ。

 実は俺もアニエスを通じ、国王陛下から剣聖として色々な催しに誘われていたが、サザーランド領に行くことになっていると丁重にお断りした。

 そんな忙しいアニエスではあるが、俺が夏休みの間サザーランド領に行く話をしたところ「私も用事が終わったら遊びに行く!」と主張。

 俺が拒否する理由もないので「わぁー、それは楽しみです」と同意したけど、これってプライベートとはいえ一国のお姫様がサザーランド領に遊びに来るというのはけっこう大事なのでは。

 簡単に承諾してよかったのだろうか?

 ……というか、それこそちゃんと公爵家の人に確認を取らないと駄目だったのではと今更ながら後悔する。

 まぁ、過ぎてしまったことは仕方がない。

 これは俺が悩む問題ではないと結論付け、考えないことにした。


「さて、俺も行動を開始しますか」


 朝食を片づけ、出掛ける準備をし、寮を出る。

 外に出るため学校の正門へと向かう。

 まだ朝早い時間ということもあり、今日は混むであろう正門への道のりも人がまばらだ。

 俺がサザーランド領に向かうのは三日後。

 先日、ソフィアが会いに来てサザーランド領へ来るよう打診され、それを承諾したら、そのままの勢いでサザーランド領へと連れ帰られそうになったが、抵抗し、なんとか猶予期間を貰うことができた。

 夏休みに突入してすぐにサザーランド領に向かわなかったのは、王都を離れるにあたり、何人かには挨拶しておかなければと思ったからだ。

 まず、森都から来たレイ。

 俺の転移を頼りにしているはずなので何も連絡せず王都を離れるのはまずいだろう。

 サザーランド領行きを渋られるかもしれないが、これは拒否できそうにないのでレイにあきらめてもらうしかない。

 まぁ、レイが森都に戻ることへの協力は俺が定期的に王都へ転移して迎えにくればいいだけなのでどうとでもなると思う。

 次に冒険者ギルド。

 特例として冒険者ギルドへの加入が許された際の条件として月一度の王都迷宮への探索を義務付けられていたのだが、すでに一ヵ月以上放置している。

 決して忘れていたわけではない。

 訳も分からないまま勝手に剣聖に任命されてしまったのがそもそもの元凶であり、周囲の状況が一変したことで大変忙しかったのだ。

 つまり俺が約束を守れていないのは王国が悪い、そういうことにしておく。

 せっかく許された冒険者ギルドへの加入なのに冒険者らしいことをしないままこのまま資格はく奪とか嫌だなと思いつつも、このままダンマリ、音信不通はもっと心象が悪いと考え、冒険者ギルドには顔を出した方がいいという結論に至った。

 ……とてもとても気乗りしないが。

 後は、王城に居るというラフィにも王都を離れることは伝えておきたい。

 結局、森都から帰ってきてから未だに会えていないのだ。

 とりあえず、この3つは王都を離れる前にやっておいた方がいいことと考えている。

 ここまで考えたのは優先度高めの項目で、他にも考えてみれば王都を離れる前にやりたいことはまだまだある。

 街の散策もしたい。

 同年代(?)の友達であるサチちゃんにも会っておきたい。

 森都へ向かう中継地、共和国へと向かう際に仲良くなったミシェルちゃんもそろそろ王都に帰っているはずだ。

 でも、ミシェルちゃんに会うと俺が王都に帰っているのは時間的におかしいので会わない方がいい?

 その旅で色々とお世話になったレーレさんも今は王都にいるのだろうか?

 というかレーレさんに会う前に、アレクの奴に、どういった関係なのかを問い詰めなければということを思い出す。

 これって残り三日間で足りる?

 絶対足りないと思う。

 ちゃんと考えていなかったが王都でやりたいこともけっこう山積みだった。


(まぁ、やりきれなかったらちょくちょく転移で王都に帰ってくればいいだけか)


 森都の襲撃は最悪だったし、犯人も許せはしないが、この転移の術を俺に見せてくれたことだけは感謝してしまう。

 そんなことを考えながら歩いていると、学校の正門へと到着。

 門の両脇に立つ守衛へペコリと挨拶しながら学校の敷地外へ。

 まず最初に向かうのは冒険者ギルドだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ