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第二十七話「神様のお願い」


 明日はついに中間試験。

 不安な箇所はあるが今日は早く寝ることにした。

 試験前は寝るに限る。

 ベッドに入り、すぐに眠りについたはずだ。

 

 気が付くと白い部屋。

 目の前の少女が俺のことをあちこち触っている。

 

『あなた本当に性別が変わってるのね!

 探しても全然見つからないし!

 まさか女の子になってるなんて神様である私もびっくりよ!

 おかげで探すのにどれだけ苦労したか。

 でもギリギリだったわ……』


 ああ、思い出した。

 こいつはあれだ。

 自称神のイオナとかいう名前だったか。


『自称じゃないわよ!

 正真正銘の神よ』


 イオナは俺を触るのをやめた。


『私ほどじゃないけどなかなかの美少女になったのね』


 俺から神の姿は白っぽいシルエットにしか見えない。


『徳が足りないのよ。

 信仰心が強くないと私の美しい姿をみたら目が潰れてしまうわ』


 うぜえ。

 帰りたい。

 この部屋出口あるのか?


『まあいいわ、今日は用事があってあなたを呼んだの』


 帰して。

 俺の貴重な睡眠時間が削られてる気がする。

 いや、夢の中だから寝てるのか?

 まぁ精神がすり減るのでどっちにしろここから出たい。


『神様である私からのありがた~いお願いよ!

 私に頼られるなんて、光栄なことと思いなさい』


 こいつ俺の声が全部聞こえてるはずなのに無視してるな。

 今度は一体何のしりぬぐいをさせられるんだ。

 

『例えばよ。例えば。

 みつかっちゃまずいものを部屋で出しているときに突然親が部屋を訪れたとします』


 おお。


『やばい、これどうしよう!

 とりあえず棚に押し込んじゃえ、ってなるでしょう!』


 ……何を押し込んだんだ


『か、仮定の話よ』


 アニエスがよくやるように白いシルエットのほっぺあたりを摘まむ。


『え!な、なんで私に触れるのよ!

 変態!

 いたひいたひ!やめて!』


 何を押し込んだんだ。

 再度問う。

 喋れるように手を離してやる。


『お父様にだってつねられたことないのに!』


 いいから、話を進めてくれ。

 俺は早くこの空間から解放されたいんだ。


『ふん、まあいいわ。

 押し込んだものね!

 ……よ』


 小声で聞こえなかった。


『……(ドラゴン)よ』


 ……。


『ほ、ほら。

 やっぱり(ドラゴン)の一体や二体、世界にいたほうがいいじゃない!』


 一体じゃないのか。

 二体もいるのか。


『……』


 おい。

 白いシルエットが明らかに俺の視線から逃げた。

 これは一体や二体じゃないな。

 何体いるんだ。


『七体よ。

 でも繁殖してたらもうちょっと数が増えてるかも、てへ』


 何でそんなにいるんだよ。


『いあー、創造してたときつい興がのっちゃって。

 ほらあなただってプラモデルとか造ってたら色んなバリエーションを増やしたくならない?

 それと同じよ!』


 いあ、神様。

 ここの世界の子供たちを信じましょうよ。

 俺は応援してますから。


『私の心血注いで創った(ドラゴン)は生物の最高傑作といっても過言ではないわ!

 たかが人では太刀打ちでき……いたひいたひ!!!』

 

 話が見えてきたぞ。

 今度は(ドラゴン)討伐をさせる気だな、こいつ! 


『だ、だってまさか押し込んだ棚があと千年はもつはずだったのに急に立て付けが悪くなっちゃったのよ!

 このままじゃ私の愛する子供たちが食べられちゃう!』


 ……(ドラゴン)も神様の愛する子供なのでは?


『あの子たち、ちょっと自分たちに力があるからって私に反抗期なの!

 お灸を据える意味でもあの子たちを痛い目にあわせてあげて!

 殺しちゃだめよ!』


 話を聞いている限り、生身の俺で到底敵う相手に思えないんだが。

 しかも相手は複数だろ。


『あなたなら大丈夫』


 ……何を根拠に。

 そもそも、その頼みを引き受けたら何か俺にメリットがあるのか?


『私に感謝されるわ!』


 ……。

 せめて、この呪いを解くとかでいいからできないのか?


『うーん、その呪いは私にも解けないわ。

 けど、その姿のあなたのほうがかわいいから、そのままでいいわよ!』

 

 さらっと解呪不能の呪いであることがわかった。


『あなたにメリットがなくてもどうせやるしかないわよ』


 どういうことだ。


『だって(ドラゴン)を押し込めた場所って王都の地下だもの』


 は?

 何、足元に大量の(ドラゴン)がいるの?


『安心して! 

 (ドラゴン)だけじゃないわ!

 (ドラゴン)の強い魔力によって地下には大量の魔物も湧いているはず……いたひいたひ!!!』


 え、地下ってそんな魔窟になってるの?

 何でその上で人々が生活してるんだ?

 今まで大丈夫だったのは何で?


『ほっぺがはれたらどうするのよ!

 それは今までは私が張った守護獣の魔法陣で地下に押し込めてたから地上には出てこれなかったのよ』


 さっき言ってた立て付けが悪くなったってのは魔法陣の効果がなくなったてことか?


『辛うじて魔法陣は機能してるわ。

 ただ今は少しずつ隙間ができてる。

 程なくして大きな緩みができる。

 そうなると(ドラゴン)はすぐに地下から出てくることはないけど、魔物が街に溢れるわ』


 魔法陣を張り直せないのか?


『……私の力で張り直せない。

 あなたしか頼れないの』


 とりあえず隙間から出てくる魔物が街にでないように討伐していけばいいのか?


『ええ、明日からは本格的に魔物が街に溢れそうなの。

 お願い』


 ……明日は中間試験なんだが。


『大丈夫。

 私の加護がついているあなたには試験なんて些細なことよ』


 シケンダイジ。

 サボリヨクナイ。


『ちょ、ちょっとお願い!

 愛する子の命がかかってるのよ!

 あ、もうこの空間もたない……!

 お願い、お願いします!!!!』


 声が遠ざかっていく。


 暗転。

次回更新2/2(金)22時頃。

やっと週末ですね~

休みに投稿した話を少し加筆やら修正入れていきたいと思います

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