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第二十八話「行程順調」

二十五話でラフィと別れるシーンに青を預ける描写を追加しました。

 レーレが案内してくれた店で、お酒は飲めずとも、料理を大いに楽しんだ。

 俺は機会があれば、また訪れたい店リストの中に入れておく。

 その後、約束通りレーレは俺に《影隠(ハイド)》や、暗殺(アサシン)系スキルの対策を教えてもらい、その日は別れた。

 結局、アレクと知り合いであることは教えてくれたが、どういった関係なのかを詳しく聞き出すことはできなかった。

 そもそもレーレが謎多き女性である。

 隊商の顔合わせの際は剣士と職を名乗っていたが、俺を奇襲した際は魔術を行使。

 加えて、暗殺系のスキルにも習熟している。

 一体何者なのか考えずにはいられない。

 もちろん、それとなく聞いてはみたが、何も成果は得られなかった。


(聞く機会はまたあるだろう)


 なんとなくだが、この場限りの出会いではなく、今後もレーレとは付き合っていく。

 そんな予感がした。


 次の日。

 久しぶりのベットの上で俺は意識が覚醒する。

 心地よい時間をもう暫く楽しんでいたかったが、現在は隊商に帯同させてもらっている身。

 そんな立場で遅刻するわけにもいかない。

 身体も大分早起きに慣れてきているようで、眠気とは裏腹に、窓辺から漏れる微かな光を感じ取り、瞼はちょうどよい時間に開いた。

 日がまだ昇りはじめて間もない時間。

 大きな欠伸をしながらベットから起き上がり、身支度を始める。

 身支度を終え、部屋から出るとちょうどラフィも部屋から鞄を肩に下げ、出てきたところであった。

 腕には昨日、ラフィに預けていた青が抱えられている。


「おはよう、ラフィ」

「ん」


 青が俺の腕へと受け渡される。

 特に何も決めていなかったが、宿で簡単な食事を終え、集合場所へと向かうことにした。

 夜はどこを歩いても喧騒が聞こえなくなる場所はなかったが、朝はさすがに静かである。

 簡素に敷き詰められた石畳を靴が叩く音が通路に響く。

 人通りの少ない中を歩いていると、無骨な色の壁が目に入り、この場所が王国を守る役割を担っていた砦であったことを思い出す。

 ラフィと並び言葉もなく歩いている。

 そして俺はレーレのことについて、ラフィに尋ねるか悩んでいた。

 アレクと繋がりのあるレーレ。

 もしかしたら、ラフィも彼女のことを何か知っている可能性は高いかとも考えたが、知っていれば最初の顔合わせの際に気付き、俺に教えてくれていた気もする。


(アレクとはどういった関係かはわからないけど仲は悪くなさそうだし。

 ラフィ、何て思うかな?)


 俺はアレクとラフィがよく二人で行動をしているのを見ていたことがあるだけに、余計な波風は立てたくない。


(触らぬ神に祟りなしともいうし……)


 俺は余計なことは言わず、レーレのことに関しては伏せておこうと結論付ける。

 考えがまとまったタイミング、気付けば集合場所に到着していた。

 宿から集合場所に向かう途中では、全然人に出会わなかったが、砦の中央道路ともいえる場所にはそこそこの人口密度があった。

 南北にそびえる門から、準備ができた冒険者の集団が出立していくのが見える。

 出発前の、待ち合わせをしていると思しき集団があちらこちらでポツポツと見える。

 この中から俺達がお世話になっている隊商は見つからるかな、と不安になるが杞憂であった。

 荷馬車を数台連ねているような集団は他になかった。

 もう見慣れた馬と荷車が整然と整列し、すでに隊商の準備は万端のように見える。

 近づくと、冒険者も皆揃っていた。

 中には、酒を飲み、遅れてくる輩がいてもおかしくないのではと俺は思っていたが、集合場所に着いたのは俺達が最後。

 優秀な冒険者たちだ。

 ……まぁ、仕事で時間厳守は当たり前か。

 俺とラフィが到着したのを確認すると、簡単な点呼を行う。


「それでは我々も出発しましょうか」 


 テオの号令で、隊商の一日が始まる。



 ◇



 砦を出発して三日が経った。

 道中天候が崩れることもなく、右手に見える雄大なハースラ山地の新緑を眺めながら、俺は荷馬車に揺られている。

 最初こそ、冒険者の集団が歩いている姿が時折見られたが、だんだんとその姿を見掛ける頻度も下がってくる。

 それに比例して、隊商も魔物と遭遇する機会が多くなった。

 冒険者へ魔物駆除の依頼が多く出ている地域でもあるのだから、遭遇機会が多いのも当然かもしれない。

 俺の中では勝手に、魔物と遭遇するのはレアケースと思っていたが、むしろ砦までの道中がレアケースであったようだ。

 考えてみれば、人気のない地域であれば、人よりも魔物や野生動物の方が多く生息している。

 生息地域に道を切り開き、横断しているわけで、遭遇するのも当然かもしれない。

 魔物との戦闘はこの世界での日常であり、トラブルともいえないというわけだ。

 行程は順調。

 であったが、やはり旅にトラブルは避けては通れぬものであるらしい。

 その知らせを受けたのは日も沈み、目的地近く、そろそろ野営の準備を始めようとした時間であった。

 前方から馬に乗った王国騎士が駆けてくるのが見え、隊商に近づくと、隊商の隊長であるテオにある情報を教えてくれた。

 重要な内容は、


「この先でバジリスクの目撃情報あり」 

 

 バジリスクといえば、俺は以前サザーランドと共に討伐したことがある魔物であるが、本来は集団で相手をする、厄介な魔物。

 騎士が伝えた内容をもう少し説明すると、これから向かう予定の道中にバジリスクの目撃情報があり、討伐隊を編成中。

 討伐するまでは安全のため、道を閉鎖するので引き返してくれ。

 こうであった。

 テオは騎士の言葉に「わかりました」と返事をし、隊商を来た道へと進行方向を変えるように指示した。

 とはいえ、日も暮れる時間。

 少し道を戻ったところで本日の野営となった。

 

 

 


次回更新予定 11/9(土) 22:00


※11/10(土) 20:40追記

 ちょっと本日帰宅できそうにないので、更新を延期します。

 変更後 11/10(日) 15:00

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