これが私の戦闘スタイルだ。尚、ぶっつけ本番である。
おっさんは強くありません。
騎士は動く。槍の穂先をこちらに向け、怖く見えるように。しかし隙がありすぎてどっからでも殺せそうだ。
動くはず。裏拳の要領で眼前に迫る槍を自分から反らし柄を掴む。そのまま引っ張って、引っ張り続ける。
体勢を崩しバランスをとろうとする騎士、の腰から剣を盗る。抜き身になったそれは、とても重い。
次の瞬間時が戻る。
「うごっ」
「きれいな剣。眩しい。するどい。音も良い」
騎士は前に倒れる。私は剣を見る。日の光を当てて、刃に指を添えて、みねをノックし、堪能する。うっとりしていると、
「なんだあいつ」
「剣?誰のだ?」
「うわっ、今あいつニヤニヤしてるぞ」
「恐ろしい」
心無い言葉が聞こえる。私の趣味にいちゃもんつけんなし。
軽く上げ下げしてみる、問題なし。両手で構えて後ろを向く、騎士がびくついて鎧がガチャついてうるさい。新米かな?
「かっ、返せ。それはおれのだ、とっとと返せ。良いな。」
動揺してるのが丸わかり。にたぁと笑って
「嫌だ。死んでも殺しても離さない。」
宣言。頬がひくついてるよにいちゃん。
「…っ、狂ってやがる。」
騎士が槍を構える。穂先はまっすぐ私の心の臓を指す。
私はこの体に比べて両手剣に見えてしまう片手剣を八相に構える。
少し目をそらすと良い感じに騎士は動いてくれる。右に反らしたら左にずれて死角に入り私を殺そうと槍を突き出す。
それを剣を左に寄せて少し首を傾け受け流す。そのまま懐に入り兜を弾き飛ばす。
―そこそこ良い顔のおっさんじゃん―
驚愕で体が硬直しているおっさんに追撃しようとして思い出す。
―身長足んねえ―
そのままバック、様子見。八相の構えに戻す。
「―」(ボソッ
おっさんが何か呟いたが聞き取れない。口の動きはそんなに複雑ではなかったから特に意味はないと思う。
おっさんの目が変わる。向けられる殺意にゾクゾクする。
が、しかし。殺し合いには発展しない。側頭部に何かが当たる感触がする。視界がブレて下がり横倒しになり薄暗くなる。騎士はほっとした表情で誰かに話しかけているようだ。グレーアウトしていく視界、空虚感を感じながら、口だけ動かす。
―嗚呼、残念無念。今世こそはもっと良い刃物に巡り会いたかったなぁ。―
最後にちらりと見られた気がした。
「すみません、助かりました。」
異様な雰囲気を放つ幼女を警戒しながら前にいる人に話しかける。
「お前、槍は微妙だからって剣持ってんだろ?何で盗られてんだ。」
自分と同じ鎧を着た先輩に不機嫌そうに言われる。
「すみません。孤児、それに幼子と侮っていました。」
本当になんなのだこの子供は、と視線を下にずらすと、口が動いている。
目は虚ろで焦点が定まっていない。そこは良い。問題は笑っているということだ。異常だ、頭を割られて尚、笑っている。対峙している時もそうだった。常に眠たそうな目だったがその瞳は爛々と輝き、口元は三日月のような笑みをずっと浮かべていた。
「先輩、コイツ相当狂っていますが、腕がたちます。どうしますか?」
不気味すぎる。手を離してしまって他人に委ねたい。
「まずは牢にぶちこむ。会話ができるならする。その後は任せた。」
ぶっきらぼうにそう言って先輩は貴族の乗っている竜車の護衛に戻っていった。
はい。えー、おっさんは強くありません。羊子たんは幼女ですが刃物の扱いに関しては強いです。火事場の馬鹿力で剣を使っています。
ご指導ご鞭撻のほどお願いします。