意地っ張りと素直
嫌なことに朝がやって来た。
中々図太いらしいわたしはぐっすりだ。
真智ちゃんに起こされなかったら遅刻するレベルの眠りだった。
「佐智ちゃん、一緒に学校行こうね!」
「え?あぁー…、う、うん」
果たして真智ちゃんと一緒に学校に行ってよいものか。
ううむ、分からない。
でもスパイになれって言ってるくらいだし、多分表立って話しかけてきたりしない、よね…?
だとしたら一人にならないほうが得策だろうし、守ってくれる友達なんていないんだから結局は真智ちゃんと一緒にいたほうがいい。ということにしておこう!
中学生のときは自転車で20分かかった登校距離も、今日からは歩いて10分だ。
しかもホームルームが始まるのは8時半からで、中学より10分も遅れている。
そのおかげで今までで一番ゆっくりした平日の朝となった。
「佐智ちゃん、行こ!」
ご機嫌らしい真智ちゃんに手を引かれて歩き出す。
中学と高校は反対方向だから、景色も全然違う。
きっと昨日のことがなかったら、わくわくした気持ちでいっぱいだったはずなのになあ…。
「ねえ、佐智ちゃん」
「ん?」
「昨日、ごめんね」
「…え?な、なにが?」
「私ったら全然気がつかなくて。
佐智ちゃんが疲れてたのに、なんか一人で馬鹿みたいにテンション高くってさ。
だから申し訳なかったなあって」
「……、」
真智ちゃんは優しい。
真智ちゃんは素直だ。
悪いと思ったら謝れて、意地っ張りのわたしとは大違いだ。
だから好きだと思うし、味方でいてあげたいとも思う。
「わたしの方こそ昨日は、」
「佐智!」
ごめんね、って。
そう言いたかったのに。
驚いたことにわたしの名前を呼んだのは男の人だった。
振り向いたら、
「ひっ、」
不良が、おりまして。
閲覧ありがとうございました!
もしかしたら気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、この間から拍手を設置させていただきました。
頂いた拍手の中にわたしのホームページを見てみたいと言ってくださった方がいたので、繋ぐことにしました。
BL小説を置いてある以外は普通の空っぽサイトです。
20150228 夏野 五朗