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猫目先輩の罠  作者: 夏野 五朗
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平凡と非凡

壁ドンと言う言葉をご存じだろうか。

壁にドンと衝撃を与えることである。

隣人にうるせーよと伝える便利なコミュニケーションツールである。


あれ、でも、それなら。


「ふーん、お前、名前なんて言うの?」


ふーん、と人の顔をじろじろ眺めて興味なさそうに名前を聞く男。

その両腕は肘まで壁にぺたりとついており、わたしの居場所はその腕と腕の間である。


「あの、」


この状況はなんだ、この行動の名前は何て言うの?






まあまあ平凡な人生であったと思う。

同じ保育所に通っていた男の子に初恋をして、小学生になると恋ばなで盛り上がったり、変に勘繰られたりして不機嫌になったり。

中学生になると、周りは悪ぶりだしたけど、反抗期もなく美術部に大人しく所属していた。

15年間生きてきて、劇的なことはなかったけど、それでも頑張って自分なりに考えて生きてきた。


そんな平凡な人生を送るわたしの隣で、稀に見る非凡な人生に悩まされていた女がいた。

それがわたしの1つ上の姉、香山 真智だった。

彼女を動物に表すなら皆が皆一様に可愛らしい生物を口にした。

ちなみにわたしの調べによると、最も多かったのは「チワワ」である。

わたしはチワワなんて目が大きいだけで可愛いだなんて思わないけど、一般的には可愛いらしい。


お姉ちゃん、真智ちゃんはとてもモテた。

その理由は可愛らしいお顔だけでなく、ボンッキュッボンッな魅惑的なボディー、尚且つ天然なところにあった。

ずっと真智ちゃんと一緒にいたから分かるけど、本当に彼女はうっかり屋さんなのだ。

500円玉2枚と野口さまを交換してほしいと頼めば、どこからか諭吉さんを出し、小学生のときのあゆむには担任からいつも忘れ物が多いことを指摘され、しまいには何もないところで躓き転ぶ。

真智ちゃんは誰にでもよくあるうっかりの頻度が人より少し多いだけなのだ。

だけれども、それは妹のわたしだから分かることであって、他人からは天然ぶってるウザイビッチ女というのが常々の評価だった。

ただその評判は男には関係ないとでも言うかの如く、モテた、まあ、モテた。


真智ちゃんの人生は基本モテるのといじめられるのが同時進行で、息つく暇などなかったのだった。

告白されれば付き合い、そしてすぐに好きになって別れを告げられる。

普通なんてわたしには分からないけど、真智ちゃんは普通よりも重たい女の子らしい。

頭の軽そうな男がルックスだけを見て真智ちゃんに告白しては中身を知ってフる。

真智ちゃんは少女漫画よろしくな行動しかしていないのに、…ああ、ほら、例えばお弁当を作ってあげるだとかね?

ただそれだけなのにどうしてか重たいらしい。

そしてフラれる度に律儀に泣いて落ち込み、さも世界の終わりに直面したかのようにしてしばらくを過ごす。

それを繰り返して17年目、彼女の付き合った人の数はまさしく“非凡”の一言に尽きる。




さてはて、わたしの人生の裏で真智ちゃんは非凡な人生を送ってきたことが分かっただろうか。

つまり何が言いたいって、普通ではない出来事に遭遇するのはいつも真智ちゃんで、わたしではないってこと。


「ねえ、聞いてんの?なに、耳聞こえねーの」


バクバクバクと爆発寸前な心臓。

こんなに他人の顔が近くにあるのは人生初で、しかもその初めての相手が男で、しかもしかもただの男ではなかった。

多分遠くから見ていたならば、ああ、かっこいいと目を細めるだけで済んだろう。

だけど、あ、もう駄目だ。

さよさよと穏やかな春風によって、彼の茶髪がわたしの頬に触れる。

そう、茶髪だ。恐らく染めたのであろう、茶髪だ。

この高校の制服には確かネクタイがあったはずなんだけど、首もとにネクタイはない。

だけどスラックスは確かにこの学校のもので、ここの生徒であることは確かだ。

ベージュのカーディガンに大きく開かれたシャツ、だぼっとしたスラックス。

ああ、もう、間違いなく、これは、


「ふ、ふりょ…っ、」


「あ?」



不良ですよね!?





はじめまして。もしくはこんにちは。

以前に同じタイトルで予告短編を書かせていただきました。

それからおよそ半年近く経ち、ようやく私生活も落ち着きを見せ、連載することになりました!

今回は短いですが、次からは長くなります…。



閲覧ありがとうございました!


20150223  夏野 五朗





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