「投手たる者」のあとがき
2014年1月。
途中まで書いていたものの終盤のアイデアが浮かばずに温めていた『投手たる者』をようやく完成させることができました。
当初は『投手たる者(二番手)』というタイトルにしていましたが、再掲載の際に外しました。
本作は元々友人たちとの会話の中で生まれたものです。
まずは隠田性質子というニートの女性が、生来の宿敵であるプロ野球選手兄妹を倒すために草野球をするというプロットが作られました。
この段階では特殊能力として『カレー拳法』が数多く登場し、主人公たちは能力を活かして敵のチームを倒すというコンセプトになっていました。まるで少林サッカーです。
ちょっと長くなりますが、以下は当時のメモになります。
読み飛ばしてくださっても大丈夫です。
・カレー拳法とは。
・人々がカレーを作る時に発生した様々な事象や問題に対する解決策を基にした技術。
・スポーツなどで活用される。
・ただしこの技術はカレーの臭いを大量に浴びた者にしか習得できない。
・それゆえカレー屋やその子息にはこの技術を得た者がよく発生する。
・長時間カレーの臭いを浴びずにいると力は減退する。
・またカレーを食すことも回復に繋がる。
・ブリテン流、インディア流、日本流以外にも世界各国で根付いている。
・知名度はカレー屋が多くを語らないため低い。
・カレー屋のバイトなどで習得することもできる。
・ちなみに基本的に1人1つの能力しか習得できない。
・1つのカレーが辛口と甘口を内包できないのと同じ理論である。
・エネルギー自体はいたって単純にカロリーを使う。だからお腹が減る。カレー食べようぜ。
・なおカレー拳法をカレー拳法使いに対して使用することは禁忌とされる。
・これは2種類のカレールーを混ぜると味が合わさるように、射出した能力と対象者が混ざってしまうためである。
・あまり例がないのでどうなるかはわからないが古典によると最悪の場合死に至ると言われる。
・カレー拳法が野球にのみ使用され、サッカーやラグビーなどで使われないのはこのためである。ボールやバットに使う分には良いのだが人間に対して使用してはいけないのだ。
・カレー拳法を使って戦闘する場合は拳法技を無機物に加えて、それにより生じた変化で攻撃するパターンが多い。
(『下向き迫撃砲』の場合は木の葉を落とす、洗濯物を落とす、鉄骨を落とすなど)
・カレーを食べるとそのカロリーエネルギーはこの世でもあの世でもない第三領域に移動する。
・自分の能力は自分のものだから混ざっても大丈夫と思われがちだがそうではない。
・冷凍したカレーと美味しいカレーを混ぜたらちょっと違う何かになる。
・第三領域はエネルギー変換領域であり、一度第三領域に移動したものは本来のものとは違うのである。
・拳法技を使用するときはこの第三領域を経由したカロリーを使用する。
はい。全く意味がわかりませんね。
要するにカレーライスのカロリーを「超能力」に転換させる話なのです。
さらに各自の「超能力」はカレーの製作過程に由来する力になっていました。これについては省きます。
さて、ここから『カレー拳法』を活かした高校野球をやろうという発想に至り、やがて今の「投手たる者」の原型が生まれてきます。
その中で、なぜかTSモノにしようとしたり、あるいは宇宙人が「作戦部」を作って、それに基づいた試合をやったり――だんだんカレーからズレてきます。このあたりで今のストーリーにまとまっていきました。
そして、その作戦を立てる役割を主人公・呉羽くんに任せたのが、今の「投手たる者」というわけです。
始まりの隠田さんの話が2010年くらいですから、ものすごいスパンで作られていったのがおわかりでしょうか。
なにぶん書きたいものに対して執筆技術がまるで追いついていなかったので、どうしてもブン投げることが多かったのです。
今も下手ですが、あの頃よりは自由に書けるようになったので。
ちなみに製作段階ではセンターの深野は主人公の親友でした。
さらに善根寺佑花という年上のヒロインもいました。このキャラは灰塚に引き継がれています。
ライバルの一人である綿引については別の野球作品からの引用だったりします。
ある伝説の球児を対戦相手から描いていくみたいな話を考えていました。綿引はその伝説の球児だったのです。
また千大一には高井という代打の選手も出てくる予定でした。
もちろん元ネタは阪急の代打職人です。
そんなこんなで思い入れのある作品ではあるので、いずれボーナストラックとして呉羽くんがボコボコにされるシーンを描きたいとは考えています。
でも本当は1年生の投手なら十分な能力なんですよね、呉羽くん。
※2015年初頭にボーナストラックとして延長戦を追加しました。