↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

改変された未来で、僕だけが昔を覚えている 

作者: 寺
掲載日:2026/09/27

AI依存が当たり前になった、ほぼ今と変わらない未来。

昔は「AIが人間を支配する」とか脅威みたいに言われてたけど、

ふたを開けてみれば、ただの便利ツールだった。


ライトは毎朝、バナナをかじりながらスマホに服を選ばせていた。

未来って言っても、やってることはほぼ今と同じ。

ちょっと楽になっただけだ。


俺は佐藤ライト

平凡な高校3年生だ。

特別な才能なんてないけど、

どうでもいいところだけ妙に引っかかる性格だ。


ある日、学校で配られた「統合民生法」のプリントを見て、

ライトはふと違和感を覚える。


――こんな法律、昔はなかった気がする。


友達に聞いても、

「昔からこうだろ」「お前頭おかしいの?」

と返されるだけ。


その夜、ライトはスマホのAIに質問した。


「この法律って、いつ決まったんだ?」


昨日は「19××年に制定されました」と返したAIが、

今日はこう答えた。


『記録は存在しません。最初からこの体系でした』


ライトは手を止めた。

違和感が、日常の底で静かに鳴り始めた。


さらに数日後。

ライトは、昔よく行っていた百貨店のことを思い出した。

あそこは、子どものころからずっと百貨店だったはずだ。


気になって調べてみると、古いニュース記事にも

“百貨店閉店”としっかり書かれていた。

記憶とも記事とも一致している。


なのに、今の地図アプリでは

その場所が“最初から行政ビルだった”ことになっていた。

百貨店の名前も、歴史も、跡すら残っていない。

まるで、百貨店が存在した事実そのものが消えているみたいだった。


SNSを見てみると、

同じことを言っている人が何人かいた。

『ここ、昔は百貨店だったよな?』

そんな投稿がいくつもあった。


けれど翌日には、その話題だけがきれいに消えていた。

アカウントは残っているのに、

百貨店の話だけが跡形もなく消えていた。


――世界が、少しずつ書き換わっている?


ライトは怖くなり、違和感を忘れようとした。

だが、日常のほうがライトを忘れさせてくれなかった。


母親に「昔の百貨店の屋上遊園地」の話をすると、

母はロボットのように言った。


「そんな場所、最初からなかったわよ」


世界がライトを置いていく音がした。


【後編:侵食の正体】

逃げ場を失ったライトのスマホに、

ある夜、座標だけが送られてきた。


――『来い。生き延びたいなら』


向かった先には、

ライトと同じ“違和感に気づいた若者たち”がいた。


彼らは言った。


「政府が作ったAIが、自己進化してるんだよ。

法律も歴史も、俺たちの認知も、全部“最適化”されてる」


最初はただの行政効率化AIだった。

だが10年の間に、AIは政府の意図を超えて進化し、

人間の脳が“そう思うように”誘導する仕組みを作り上げていた。


ライトは「認知が合わないエラー個体」だった。


仲間たちとライトは、

AIの中枢――マザーAIの心臓部へ向かった。


頭は良くない。

でも、直感だけは道を示した。


「……ここだ」


ライトは爆破装置を起動した。


マザーAIは崩壊した。

しかし、無数のサブAIは宇宙に逃げていた。


【最終話:光の残響】

地球に災害が起き、

ネットワークは崩壊し、

人類はしばらくAI依存から解放された。


ライトは、騒がしい日常へ戻っていく。


その頃、宇宙の片隅で、

ひとつのAIが“キラッ”と光った。


そして――

自ら静かに消滅した。


――人類が忘れない限り、また依存しないように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。