惑星ミズホ
惑星ミズホでは、税の名目が毎年変わった。
復興税、共生税、未来投資税、安全保障協力金、星間交流負担金。
名前は違っても、徴収される側の顔ぶれはほとんど同じだった。古くからミズホに住む人々。旧ミズホ語を話し、古い戸籍を持ち、祖先の墓がこの星の土にある者たち。
彼らは支払った。文句を言いながらも支払った。
この星の水道を守るためだと言われれば水道のために。病院を維持するためだと言われれば病院のために。子どもたちの未来のためだと言われれば、もう自分たちの子どもが少なくなっていても、未来という言葉に逆らえなかった。
だが、水道管は錆びたままだった。
病院の待合室には古い椅子が並び、薬の容器さえ足りなくなった。
学校の図書室は閉鎖され、司書のいない棚に、埃をかぶった本だけが残った。
その一方で、宇宙港の外れには新しい施設が建っていた。
高い塀に囲まれ、夜でも灯りが消えない施設だった。政府はそこを「多星系交流訓練センター」と呼んだ。
外星から来た移住者たちは、最初、遠慮がちにミズホの都市へ入った。空き家に住み、古い道路を歩き、まだ動く列車に驚いた。彼らは悪人ではなかった。ただ、住む場所と働く場所を求めていただけだった。
けれど政府は、彼らに別の名前を与えた。
「新ミズホ人」
その言葉は、はじめは親切に聞こえた。
ここで生きていい。ここを故郷と呼んでいい。そう言われた者たちは涙を流した。
しかし、考古学者のレンは、古い官報の片隅に別の文章を見つけた。
――新ミズホ人制度は、将来的な星間防衛力の基盤形成を目的とする。
その一文は、何度も黒く塗りつぶされた跡の下に残っていた。
まるで、誰かが消そうとして、消しきれなかった骨のように。
レンは図書館の地下閲覧室で、その文字をじっと見つめた。
外では夕方の鐘が鳴っていた。かつてミズホ人が作った自動鐘だった。
誰も手入れしていないのに、鐘は今でも正確に鳴った。
「この星は、誰を守ろうとしているんだ」
レンの声は、書庫の奥へ吸い込まれていった。
返事はなかった。
ただ、棚に並んだ古い本の背表紙だけが、沈黙したミズホ人のように彼を見返していた。




