↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

惑星ミズホ

作者: 星野☆明美
掲載日:2026/06/26

惑星ミズホでは、税の名目が毎年変わった。


復興税、共生税、未来投資税、安全保障協力金、星間交流負担金。

名前は違っても、徴収される側の顔ぶれはほとんど同じだった。古くからミズホに住む人々。旧ミズホ語を話し、古い戸籍を持ち、祖先の墓がこの星の土にある者たち。


彼らは支払った。文句を言いながらも支払った。

この星の水道を守るためだと言われれば水道のために。病院を維持するためだと言われれば病院のために。子どもたちの未来のためだと言われれば、もう自分たちの子どもが少なくなっていても、未来という言葉に逆らえなかった。


だが、水道管は錆びたままだった。

病院の待合室には古い椅子が並び、薬の容器さえ足りなくなった。

学校の図書室は閉鎖され、司書のいない棚に、埃をかぶった本だけが残った。


その一方で、宇宙港の外れには新しい施設が建っていた。

高い塀に囲まれ、夜でも灯りが消えない施設だった。政府はそこを「多星系交流訓練センター」と呼んだ。


外星から来た移住者たちは、最初、遠慮がちにミズホの都市へ入った。空き家に住み、古い道路を歩き、まだ動く列車に驚いた。彼らは悪人ではなかった。ただ、住む場所と働く場所を求めていただけだった。


けれど政府は、彼らに別の名前を与えた。


「新ミズホ人」


その言葉は、はじめは親切に聞こえた。

ここで生きていい。ここを故郷と呼んでいい。そう言われた者たちは涙を流した。


しかし、考古学者のレンは、古い官報の片隅に別の文章を見つけた。


――新ミズホ人制度は、将来的な星間防衛力の基盤形成を目的とする。


その一文は、何度も黒く塗りつぶされた跡の下に残っていた。

まるで、誰かが消そうとして、消しきれなかった骨のように。


レンは図書館の地下閲覧室で、その文字をじっと見つめた。

外では夕方の鐘が鳴っていた。かつてミズホ人が作った自動鐘だった。

誰も手入れしていないのに、鐘は今でも正確に鳴った。


「この星は、誰を守ろうとしているんだ」


レンの声は、書庫の奥へ吸い込まれていった。


返事はなかった。

ただ、棚に並んだ古い本の背表紙だけが、沈黙したミズホ人のように彼を見返していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。