少年サッカー 第9話 短編版
エンリコのテーブルに、湯気の立つコーヒーが並んだ。明日の区大会予選に向けて、コーチ陣が集まっている。
村上コーチ 、浜田コーチ 、そして厨房から顔を出した 山下コーチ 。自分も席につき、明日の相手・港北FCの話を始めた。
昨年の練習試合は1対1。互角。どちらが勝ってもおかしくない。
「ユースケはほぼ完治ですが、今回はサブで。第二試合に温存しましょう」
村上コーチの判断に、全員が頷いた。
「もし負けたら次の試合の主審と副審をやらなきゃいけません。今回は私が主審、浜田コーチが副審で。石川コーチは無理しないでください。ま、勝つので心配いりませんがね」
浜田コーチが笑って「はい」と答える。
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スターティングメンバー
トップ:トオル
ミッド:ナオヤ、ヒョーガ、ユーメイ
ボランチ:ワタル、マオ
バックス:ゲン、ムラッチョ、マサト、リクト
キーパー:アキ
サブ:リュージ、ソウ、ユースケ
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作戦会議は熱を帯びた。
「ミドルをどんどん打っていきましょう」
「相手が弾いたところをトオルが狙う形ですね」
「空中戦はマサトとムラッチョがいけるはずです」
最後に山下コーチが言った。
「実力は互角。集中力で決まるよ。勝とう」
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試合当日
1月下旬の冷たい空気。選手たちはロングスリーブに手袋。
ユースケは悔しそうだが、アップに混ざりながら足の具合を確かめている。
試合開始。両チームとも硬い。
ヒョーガの前にボールが転がる。
ミドルシュート。
キーパーがキャッチして大きく蹴り返す。
マオが拾い、ユーメイへ。
ユーメイが強烈なミドル。
キーパーが弾いた。
こぼれ球にトオルが走り込む。
シュート。
ピーッ!
横浜SC、開始3分で先制。
ベンチが揺れた。
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しかし港北FCはすぐに修正し、ミドルを打たせないよう前から圧力をかけてきた。
横浜SCはボールを持つが、決定機が減っていく。
その瞬間、マオが珍しくトラップミス。
相手のカウンターが始まった。
左ウィングが突破し、リクトが抜かれる。
センタリングが上がる。
だが――
マサトが前に出て、相手より先にヘディングでクリア。
「ナイスクリア、マサト!」
前半は1対0で折り返した。
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ハーフタイム
「ミドルばかりだと相手は固めてくる。次はサイド攻撃だ」
村上コーチの声に、選手たちが真剣に頷く。
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後半
マオ → ヒョーガ → ミドル。
ムラッチョが奪い返し、マオへ。
右サイドへキラーパス。
ユーメイが追いつき、センタリング。
だが相手センターバックにクリアされる。
揺さぶり続けたその時――
ワタルが左へキラーパス。
ナオヤが追いつき、止めた。
センタリングかと思いきや、ドリブルで抜き去り、ミドル!
キーパーの手をかすめ、ゴール左下へ吸い込まれた。
ピーッ!
ナオヤ、公式戦初ゴール。
ベンチが爆発した。
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残り5分、2対0
疲れが見え始めた頃、村上コーチが動く。
「リュージ、アップ。トオルと交代。ヘディング決めてこい」
リュージが緊張した顔で頷く。
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そして――
マオがインターセプト。
ユーメイへ。
港北FCは全員攻撃で戻りが遅い。
ユーメイが右サイドを駆け上がり、センタリング。
完璧な軌道で、リュージの頭へ。
ヘディング。
キーパーは届かない。
ピーッ!
3対0。
リュージのゴールに、仲間たちが頭を叩いて祝福した。
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試合終了
3対0の快勝。
しかしソウとユースケは元気がない。
「来週も試合あるぞ。明日も練習だ、元気出していこう」
次の相手は鶴見FC。
その名を聞いた瞬間、空気が変わった。
ユースケがつぶやく。
「マジで」
昨年の市大会0対2。
11月の練習試合も0対2。
そしてユースケは骨折した。宿敵だ。
村上コーチが言う。
「ユースケ、リベンジだ。10番を抑えれば勝てる。今日は3対0で勝ったんだ。みんな進化してる。次も勝とう」
その言葉に、選手たちの目が少しだけ強くなった。
今の彼らなら――
本当に勝てるかもしれない。
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