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出会い

 今日は仕事をした。何も無かった。いいことも、悪いことも。

生きている。ただそれだけ。

 今年から日記を書いてみた。なんとなく、続けてみるものが欲しくて。近所の本屋の中にある文具店で購入した、日記用の手帳。1年用になっているからか、文庫本のように分厚かった。普通のノートでも良かったとは思うが、それではなんだかモチベーションが上がらないような気がして、倍の値段に渋りながらも購入した。今日で1ヶ月が経った。ノートを購入しては1ページで辞めてしまう私にとっては珍しく続いていた。毎日同じことしか書いていない事実に背きながら毎日同じことを書いている。

つまらないな、と自分の人生に悲観する。


小さな会社の事務に就いて2年が経った。

給料も高くはないが、人並みに生活できるくらいには貰えている。

休みもあるし、人間関係で悩むことは無い。

適応障害という言葉もある現代、幸せと言っていいくらい仕事で苦悩する事は無い。

だからこそ、刺激の足りなさを感じているのかもしれない。

こういった思考を日記に綴ればいいのだが、どうも筆を走らせる気にならなかった。


2月、まだ寒さが続いている。冬だから当たり前ではあるのだけれど。

仕事中、暖かくなってきたらコンビニの肉まんが食べれなくなるのではという考えがなんとなく浮かび、帰り道に購入することにした。

コンビニに行くと、期間限定の角煮まんが売っていた。気になる。でも私は肉まんが食べたかったから店に入ったのだ。悩んでいくうちに角煮まんの口になってきた為、品出しを中断して小走りでレジにやってきた外国人アルバイトであろう店員に注文をした。

「すみません…角煮まんの場所に置いてあったの普通の肉まんでして…」と店員は言った。

私は角煮まんの場所に角煮まんでは無く、普通の肉まんが置いてあった事実より、外国人であろう店員が流暢な日本語を喋り始めたことに気を取られてしまっていた。

「あの…」

「え、あ、普通の肉まんで大丈夫です」

人を外見で決めつけてはいけない、というのはこういうことかと思った。

肉まんをカイロがわりに両手で持ち、店を出た。

なんと無く、家で食べるより寒い中で食べたいような気持ちになった私は、少し歩いた先にある公園のベンチで食べることにした。

2月でも夜はまだ早く、長い。

寒いからか、暗いからか、遊んでいる子供達は一人もいなかったが、同じく仕事帰りであろう女性の人が広場に並ばれているベンチの一脚に座っていた。

私は綺麗かどうかも分からない空いているベンチに腰掛け、肉まんが包まれた包装を捲る。

口に入れた瞬間、温かさからだろうか、冷たかった夜風が気持ちよく感じた。

「美味しそうに食べますね〜」

声が聞こえた方に顔を向けると、先に座っていた女性と目が合った。

他の人に言ったのだろうか、周りを見渡すが私しかいない。

「わ、私ですか…?」

恐る恐る尋ねると女性は頷いた。

「お姉さん、仕事帰り?」

「まあ…はい」

「仕事何しているの?」

知らない人にいきなり自分のことを聞かれたことに戸惑って

「コ、コンビニです」

と気付けば嘘を言っていた。

女性は私の嘘に疑問も抱かず、「あ〜だから肉まん食べてるのか」と納得していた。

だが、女性はそれ以上仕事について追求はしてこなかった。

それ以前に名前や年齢など、この人はプライバシーというのがないのだろうかと不思議になる程、グイグイ聞いてきた。

追求してこない安心感から、私は全ての質問に全て嘘をついていた。

女性の中での私は「福澤静 30歳 コンビニ店員」になっていた。


「そろそろ帰りますね」と立ち上がると、女性は

「ねえ、私には何も聞いてこないの?」と不思議そうな顔して聞いてきた。

正直今後会うこともないだろうし、聞いたところで(自分も嘘をついているし)意味が無いと思っていたが、聞いてやろうという心意気で口を開いた。

「ご職業はなんですか?」と。

女性は「今日から無職!」と笑顔でピースサインをしながら発した。






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