デュナミス
「半分?! 正解?!」
自分で言い出しておいて、ニナのその答えはリアンを驚かせた。
「そう、彼女も言ったでしょう。今はただのミゼール。あなたがハロルドから奪ったレシピはデュナミスと言う……魔女を生み出す霊薬のレシピよ」
「えっ……? あたしが? ハロルドから? デュナミス?」
突然、知らない単語がいくつも飛び出して来てリアンは理解に苦しむ。
「……そう言えばハロルドって人の名前、ミゼールも言ってたけどもしかしたらそれってハルの事? 崖上の悪魔は自分でそう名乗ったんだけど……」
「ミゼールがあなたを相当気に入ったみたいだから教えてあげる。崖上の悪魔、ハロルド・ジュールは元ダナ教の幹部……デュナミスを創り得る事が出来る唯一無二の天才魔法科学者よ」
「何それ……。いやきこりじゃないとは思ってたけど……唯一無二の天才魔法科学者? 言い過ぎじゃなくて?」
「ふふ……あなたしばらくハロルドと一緒に居たから信じられないでしょうね。何でも器用にこなすけれど、逆に簡単な事が出来なかったり、行間を読むなんて事はてんで出来ない。時々誰も笑わない様な事で大笑いしたりもするわ」
ニナのその説明で間違いなくあのハルの事だと納得がいく。まさかあのハルが、ダナ教の幹部だったなんて。
「どうして……ダナ教の幹部で唯一無二の魔法科学者様が、ダナ教に追われて崖上の悪魔だなんて事になってるのよ……そのっ……ハルだけが創れるデュナミスって??」
「言ったでしょ? 魔女を生み出す霊薬だって。ただのミゼールを、魔女ダナに変えるのよ」
「……じゃあ……今、ダナはどこに……?」
当然の疑問だった。
魔女が生み出されるものだったとして、ミゼールがいずれダナになるのだとして、まだそれさえ飲み込めないがそうだったとして、今ダナがどこに居るのかと言う答えは出ていないのだ。
「民衆の心の中、かしらね」
リアンは背中に冷たいものを感じて肩を竦めた。
今まで誰も疑わなかったのに。疑う事など許されなかったのに。
「つまり……実際にはダナは居ないって事? 居もしない魔女を居る事にして……教会はあたし達を騙してるって事?!」
一瞬でそこまで考え至ったリアンを意外そうな目で見つめてからニナは言った。それは違うと。
「ダナは居たのよ、ただし……二百年前にね。ハロルドとミゼールはその奇跡を再び起こす事の出来る存在なの……」
「奇跡……? どう言う……」
戸惑いながら先を促そうとするリアンに、ニナはまるで遠い想い出を紡むようにポツリと語り始めた。
「十年前、私はハロルドと同じデュナミスの研究者だったのよ」




