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フェイクウィッチ  作者: 焼肉一番


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新たな任務

 妹に会える日はいつ来るだろうか? 特別強化兵士と言うのは世間にも公表されないとても大事にされている存在で、会うにしてもなかなか面倒な手続きと手順が必要なのだそうだ。


 あれから数日が経ってしまった。その間、結局リアンはグレードアップした自室で悶々と過ごすばかりだ。

 もう関係ない。故郷の家族の為。妹の為。自分はダナ教の兵士。何も不安な事はない。ダナの加護を貰った。きっと誰だってそうする。ハルは悪魔だった。自分を騙していた。

 そうやって自分を肯定できる材料を探した後……。

 でも何故……。何故自分を介抱した? 捨てられたルシェを助けたのは本当? ダナはどこに居る? あの笑顔も全部嘘? 本当に全部全部嘘……?

 同じくらい肯定できない材料が勝手に浮かんで来てしまう。


「ええいもう!」


 もうこれ以上は性に合わないと思ったリアンは、とうとうある行動に出る事に決めた。

 ダナ教本部に出向くのはあれ以来初めてである。しかし今日は当然司祭の部屋に用事があるワケではない。本部の中庭にある訓練施設だ。


「任務に復帰したい?」


「はい!」


 まだ足も完治していないのに、リアンは訓練施設で剣をふるっていた直属の上司にそう訴えた。だがリアンが所属する治安維持第四部隊は現在これといった任務はない。


「崖上の悪魔捕獲作戦はしばらく保留。そうなると我々の任務は日々訓練に励んで有事の際に戦えるようにしておく事だ。だったら……足の怪我を万全にする事が最優先だって分かるだろう」


「で……でも……」


 休んでいてもリアンの生活の保障はされているし、訓練より治療が優先。リアンだって本当は分かっている。だが部屋に一人で居ると余計な事を考えてしまうのだ。こんな言い分が隊長に通用する筈もないが……。


「お願いします! 無茶はしません! やれる範囲でやりますから!」 


「おいおい熱心なのは良いが……」


「て言うかもう大丈夫なんで!」


「まだ杖を使ってるじゃないか」


「治りました! さっき治りました!」


 言いながらリアンは頼っていた杖をポンと投げ捨てた。それは思ったよりも大きな弧を描いて飛んで行き、その先からパシリと何かに納まった音と「ふふ」と言う男の笑い声が聞こえて来た。


「ふふ?」


「?」


 リアンは隊長と目を見合わせてから音のした方を振り返る。するとそこにはリアンが放り投げた杖を片手で受け止めた司祭、フロディ・スラが立っているではないか。


「司祭様?!」


 驚愕するリアンの横で、隊長はすぐさま膝を付く。そんな礼儀は忘れてリアンは駆け寄った。


「申し訳ござござござ……!」


「ははは……元気な様だな、ダナの子リアン」


 あわや杖が直撃しかねなかったと言うのに、司祭はそうリアンに声を掛ける。余計に恐縮してしまうリアンだったが、司祭は微笑みを絶やさなかった。


「まさか休養中の君に会えると思っていなかったよ。姿が見えたから来てみたのだが、杖を放り投げて任務復帰を望むとは、どこまでも敬虔だね」


「すみません……」


「うむ……、良いだろう。リアンを借りるよ」


「はっ!」


 隊長が深々と頭を垂れる。


「えっ? えっ? えっ? どこへ……」


 隊長に任務復帰を懇願しに来たのに、いい返事が貰えないままここを離れる事にリアンは少々の抵抗を見せた。だが司祭の次の言葉にリアンは目を輝かせる。


「仕事が欲しいのだろう。その足でも出来る任務がある」


「ほっ……本当ですか?!」


 司祭はニコリと微笑んでそれが本当だと伝えると、杖をリアンに返した。結局リアンはその杖を使って司祭の後に付いて行くのだった。

 ダナ教本部には幹部以外の立ち入りが禁止されている場所がいくつかある。リアンは司祭の後に付いて両サイドに護衛が立つ通路をいくつか超えて行った。初めての場所に胸がドキドキする。


「わぁ……」


 見た事もないその通路の壁面には厳かな彫刻が施されていた。天井にも何やら描かれていて、それを見てるだけで、なんだか本当に敬虔な気持ちが湧いて来る様だ。


「良いか、ダナの子リアン、君にはこれから大変名誉な任務に就いてもらう」


「あっ……ありがとうございます!」


 大変名誉……。ダナの加護を賜ると言うのはこう言う任務も任される様になる事なのだなとリアンは気を引き締める。

 そんなリアンに、歩きながら司祭が言う事にはこうだ。


「君にはある女性の話し相手になってもらう」


「はい」


「……」


「……あの……それから?」


 続きがあるものと思っていたリアンはそう質問したが司祭から帰って来た言葉は予想外の一言であった。


「それだけだ」


「それだけ……ですか? その女性と言うのは……」


「余計な詮索は一切するな。ダナの意志に反する事だ。せっかく賜ったダナの加護を手放したくはなかろう? ダナの子リアン」


「はい!」


 そうして司祭はとある木製の扉の前で立ち止まった。


「ニナ、私だ」


 言いながら司祭がコンと木製の扉を叩くと、中から赤毛の女性が現れた。リアンよりもかなり年上……そう、ハルと同年代かそれ以上に見えた。

 赤毛の……ニナと言うらしい女性にじっと顔を見られてゴクリと唾を飲み込むリアン。きっちりと整えられたリアンよりも短い髪、上品なフレームの眼鏡、痩せた身体、細い顎、そのすべてが神経質そうに見えた。

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