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飛べない鳥のセッション 〜宇宙船がファンタジーな惑星に落ちたので帰還できるまで冒険します〜  作者: 右中桂示
第三章 ホットロックビート

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8 セカンドラップバディーズ

 周りは崖。慈悲なき絶壁。エアヴィークルを撃墜され、地面に転がったキウリャ。

 その前に現れたのが、ヂンペーの乗るガソリンエンジンのオフロードバイクだった。

 有り難い救援ではあるが、今の状況に適しているかは疑問である。


「なんで追いかけてきたワケ? 向こうは?」

「保険があってよかっただろォ? あと向こうはナインと妖精チャンに任せといた」

「どうやってソレでここまで?」

「最初に妖精チャンに手伝ってもらやァ困らねェよ」

「今必要なのは飛べる乗り物でしょ」

「つったって元々ソレしかなかっただろォが」

「……向こうは飛んでるのにそんな骨董品でどうするつもり?」

「そこはほれ、嬢ちゃんのソイツでカバーしてくれよォ」


 質問攻めの果てにヂンペーはレーザーライフルを指した。

 相手は上空の遥か彼方。射程は長いが命中させるのは難しい。素人考えの作戦でしかない。

 だとしてもキウリャは乗るしかなかった。しかも旧型車の訓練は現行機に比べて疎かにしていたのでヂンペーと二人乗り確定だ。


「……他にない、か」

「そうそう。んじゃ掴まれ」

「……最悪」

「オジサンだって傷つくんだぜェ?」


 キウリャは再度苦々しく呟いた。心底嫌な気持ちを表現。ヘラヘラ笑うヂンペーへの遠慮は皆無だ。

 それでも彼の後ろに跨り、安全の為にベルトで固定した。

 両手を空けられるように、レーザーライフルだけを回収してスリングで肩に掛ける。


「振り落とされんなよォ、嬢ちゃん」

「むしろそれぐらいのスピード出して。追いつけない」

「ははっ。そうこなくっちゃなァ!」


 エンジンが唸る。重低音が轟く。体に響く振動はエアヴィークルより遥かに大きい。

 土煙をあげて谷間を駆ける。一人で乗れば格別に爽快だっただろう。

 ガタガタと揺れる道なき道でも文句は言わず、速度優先。雄大な景色は堪能する間もなく流れていく。

 レーダーの反応は相変わらずない。予測と望遠カメラが頼り。段々近付いてくるはずと信じて爆走。


 その代価として、二人は密着。曲がる度に異なる荷重がかかるし、振り落とされないよう自ら腕に力を込めねばならない。

 感触と体温が伝わってくる。ムズムズして居心地が悪かった。


「間に挟む物ない?」

「そんなに嫌かよォ。オジサン悲しいぜェ」

「このスピードで舌噛めばいいのに」

「嬢ちゃんこそ危ねェぞ?」


 普段のやりとりには高揚感も緊張感もない。平常心は戦闘を冷静に進めるのに最適ではあるか。

 また、万全な状態で挑める。


 向こうも乗り換えた事に気付いているだろうか。


「さて、そろそろ来るよなァ」

「防御は直ってないの」

「ある。んだが、嬢ちゃんだって落ちただろォ。まァ、判断ミスのせいだけどなァ」

「それは認める」

「おォ素直。なら分かるよなァ? ぶっ続けで使う訳にゃいかねェ」

「同じ戦法の繰り返し?」

「しかねェだろうよ」


 エアヴィークルと同じ小型の電磁障壁はあるようだが、電力を食う。使えば引き離されるし、いずれバッテリーも尽きる。

 タイミングは見極めなければいけない。


「そらお出ましだァ」

「……動かないで」

「いやァ、ソイツの出番はまだだ」


 追尾する矢にライフルを向けようとしたが、ヂンペーに言われて止める。ここで疑問に思わない程度には信用があった。


 ヂンペーはハンドルを切った。崖スレスレ、服がかすれる程の位置取り。矢も進路を曲げる。

 そこで更に急転回。揺さぶられる体。車体が大きく傾き、今度は地面に顔が近付く。そんな恐怖の代わりに、矢は崖へと突き刺さった。

 砕ける岩を置き去りに前へ。

 姿勢が元に戻ると得意げな声が聞こえてきた。


「な?」

「……こんなの何処で訓練したワケ。懐古趣味にも程があるでしょ」

「散々VRで乗り回したからなァ」

「は? ぶっつけ本番?」

「オイオイ。VRが現実にゃ役に立たねェなんて古臭ェ考え持ってんのかよォ」


 キウリャは言いたい事をぐっと呑み込んだ。そろそろ余計な消耗は避けねばならないから。


 そして傷跡の谷が途切れる。

 山地から、大岩の点在する草木のまばらな荒野へ。動物も確認できる。遮る物が消えて風が吹き抜ける。

 視界が開けて、グリフォンもよく見えた。つまり相手からも丸見え。

 長距離狙撃が真っ直ぐに襲来。

 崖がないので同じ手は使えない。いや、誘導より速度と破壊力重視か。急ハンドルを切れば地面へ潜るように抉る。


「そら、嬢ちゃんもやってくれ。牽制にゃなんだろ」

「指図しないで」


 右手をヂンペーから離し、片手でライフルを構える。体を後ろに倒し銃身をヂンペーの肩に乗せて安定。

 狙いを定めさせない為のジグザグ移動。猛烈な速度に強引な姿勢、正確な狙いは難しい。

 それでも果たす。

 光線が走った。二種類の攻撃が交差する。

 天と地。互いに狙いはほぼ正確。すぐ間近を抜けていく。

 が、やはり互いに動じない。追跡劇は乱れない。天地で直線が飛び交い続ける。


「追いついた時の考えはあるワケ?」

「おう。そりゃこれから二人で考える」


 溜め息を吐いた。

 人任せにしたのが悪かった。純粋な腕比べで勝てばいいだけだと覚悟を決める。


 が、事情が変わる。グリフォンは旋回して、こちらの方へ飛んできたのだ。


「んん? 逃げるの止めたみてェだな」

「真っ向勝負で決めたいワケか」

「おいおい凶暴な嬢ちゃんじゃあるめェし。まァ、ストーカーに家バレたくねェんだろ」

「その言い方止めて」


 バイク上でなければ蹴りを見舞うところだ。


 それより、相手は逃げ切るより勝負を選んだ。

 長期戦のリスクを嫌ったのかもしれないが、勝ち目があると判断されたのかもしれない。

 なら、燃えてくる。強気な微笑みが浮かぶ。


「好都合」

「やっぱ凶暴じゃねェか」


 天罰の如き矢が降ってきた。

 急加速、急カーブ、ドリフト。ヂンペーのテクニックでかわしていく。後に引く土煙が荒野を覆う。

 負けじと反撃のレーザーを空に放つが、こちらも外れに終わる。あと七発。


「情けねェなァ。俺ァ仕事してんぞォ」

「うるさい」


 一旦殺意の雨が止んだ。

 天地で別れたバイクとグリフォンが交錯。その一瞬、騎乗する鎧、兜に隠れた顔を睨む。

 直後にUターン。グリフォンも旋回。

 互いに円を描くような位置取りで撃ち合う。


 矢の衝撃とバイクの(わだち)、砂埃が生まれたそばから風で薄れる。殺風景に伸びる光の線。

 決め手のないまま、弾切れが迫る。焦りを噛み殺して心の凪を保つ。


 道路ではない、ガタガタの荒れ地。当然揺れ、射撃には不利。


「なるべく揺らさないで」

「無茶言うんじゃねェ……が、叶えてやりますかねェ!」


 嫌な予感はすぐに的中した。

 唸るエンジン。猛加速。

 ヂンペーは猛スピードで岩に乗り上げ、そのまま大ジャンプ。もしくは派手な事故。車体を宙に浮かべた。


「これで揺れねェだろ!」

「……後の事考えないワケ?」


 文句を言いつつ、確かに安定はすると受け入れる。良い仕事と評価しておくべきか。

 スッと目を細める。呼吸を止める。

 涼やかな瞳がグリフォンを捉えた。

 標準の中央に標的。互いの速度から、狙うべき位置を割り出す。

 が、先制は矢。自由落下するしかない空中。窺地。

 そこで目前が光る。電磁障壁が攻撃をスパークに変えていた。


 瞬時に攻守交代。

 指に込めるのは僅かな力。静かに引鉄を絞る。

 レーザーが真っ直ぐに駆けた。

 大地から空へ。斜めに走る光。

 狙い通りにグリフォンの右翼を撃ち抜く。散らばる羽。青を染める赤。甲高い鳴き声。

 不安定にはなったが飛行を続けている。


「もう一発いるか」

「ん? オイ待て」


 グリフォン上の彼はクロスボウを構えていた。ただし狙いは明後日の方向。

 放たれれば、望遠カメラが矢に付着した異物を捉えた。


「おいアレ宝だろ!」

「囮にして逃げるつもり?」

「どっちにするよォ? ヤツらを捕まえた後でゆっくり探す手もあるよなァ」

「……急いで持ち帰らないと街が危ないでしょ」

「やっぱ確保が最優先だよなァ」


 ハンドルを切った。矢が射られた、その先へと爆速で追いかける。

 矢は方向転換はせず真っ直ぐに離れていく。振り返ればグリフォンはフラフラと逃げていく。決着はまたの機会だと、去りゆく背中を記憶した。


「どこまで飛ぶんだよ!」


 荒野から再び谷へ。追跡の工程を半分程戻った。落下した先は幸い難なく拾える地点。

 宝玉を回収。神秘的な美しさと強大な力を誇る代物。接着剤のような物でくっついていた矢をむしり取る。

 成果を手に掲げれば、達成感が満ちる。


「……まァ。俺らの勝ちだろ、これは」

「完全勝利はお預けだけど」

「んなモン放っとけ。それより届けねェと、だろ?」

「それは、そう」


 だが、終わっていない。魔獣を封じる為、二人は最高速度で走り抜ける。

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