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飛べない鳥のセッション 〜宇宙船がファンタジーな惑星に落ちたので帰還できるまで冒険します〜  作者: 右中桂示
第三章 ホットロックビート

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1 なにはともあれめでたい再会

 ダンジョン制覇の翌日は丸一日の休暇だった。

 不用意に街を散策する事は控え、本来の目的である環境調査を丘の周囲で行う。船内でデータ整理し、それから端末にダウンロードされているメディアをのんびりと楽しむ。ストレス解消の為の娯楽は福利厚生の一環として充実していた。戦闘続きの疲れをだらだらと癒やすのは至福の時間だった。


 そして翌日、清々しい気持ちで迎えた朝。宇宙船フィアーピッカー号の前に、チッチィが満面の笑みで現れた。


「お二人とも、お仲間と合流できますよ! おめでとうございます!」


 晴れ晴れとした空も祝ってくれているようだが、自分の事のように喜ぶチッチィの姿でキウリャは陽気以上にぽかぽかと温かくなる。


 チッチィに遅れて、その仲間がゆっくりと姿を見せた。


「御両人、ご無沙汰しておりました。これより御両人を補佐する任務を仰せつかっております」


 マスコットのようにデフォルメされたアンドロイド、ナインが恭しく一礼。硬質ながら温かみがある音声が懐かしい。

 キウリャとヂンペーは早足で彼を迎えた。ひとりだけだが離れていた仲間と再会。積もる話も多く自然と浮き足立つ。

 普段通りの冷めた表情のキウリャだが嬉しいと思っているのだ。


「向こうの皆はどうだった?」

「ワタクシは長らく別室にて調査されておりましたが、皆様無事でございます。自由もある程度保証されておりました」

「へェ。仕事は?」

「労働は特に命じられておりませんでした。情報提供が要求されていたようでございます」

「んだよその扱いの差。ひどくねェか」

「ワタクシに申されましても困ります」


 口をとがらせたヂンペーに肩をすくめるジェスチャーをするナイン。その滑らかなやりとりは一年近い航行中の記憶を呼び起こした。愚痴を淡々と切り捨てるのはキウリャだけではなかったのだ。


「皆様より伝言を預かっております」

「おォ。こっちからの伝言も伝えてほしいもんだがねェ」

「残念ですが連絡も合流も許可されておりません」

「妖精チャン、なんとかしてくれよォ」

「えっ! そ、そうですね。確かにお二人の活躍ならもっと良い待遇が相応しいかもしれません」

「だろォ? なら頼むよォ」

「チィに当たらないで」


 ブツブツと文句を続けるのでキウリャは脇へ軽く手刀を見舞っておいた。

 ナインが困ったように口を挟む。


「皆様、伝言をお伝えしてよろしいでしょうか」

「オジサンはもう無視して」

「かしこまりました」

「こっちも酷ェ。なァ、優しくしてくれよォ」


 矛先を変えしゃがんで絡むヂンペーだったが、ナインは本当に無視して話を進める。


「それでは皆様の伝言を再生させて頂きます」


 宙にホログラムモニターが投影された。まずは船長のアモット。とりあえず顔色が悪くない事にほっとした。


『ヂンペー君。キウリャ君。私の判断で苦労をかけてしまい済みませんでした。私達の方は問題ありません。帰還できるまで無理はしないでください。合流できた際はお祝いにパーティーをしましょう。それまでの辛抱です』

「さっすが我らがボス。お優しくて沁みるねェ」


 アモットらしい真面目な伝言に安心して活力も湧く。ヂンペーがわざとらしい泣き真似をするのが気に障ったが。


 続いて快活に笑うタミスの顔に切り替わる。


『無事にやってるんだってね。まるで心配してなかったけど正解だったね。二人の暴れっぷりには期待してるよ!』

「勝手な事言ってらァ。嬢ちゃんはともかく俺ァ暴れたりしねェっての」


 タミスに頼られるのは誇らしい。問題発言にはしゃがんだままの手が届く頭にチョップを落としておいた。


 その次はニカッと歯を見せるドゥーリンだ。


『いやー、二人とも冒険できて羨ましいっス。土産話楽しみにしてるっスよ。あと、外にいるなら珍しい植物なんか採集しといてくれると助かるっス』

「まァだ追い打ちかけてきやがる。仕事増やして困らせてくれんじゃねェの」


 ドゥーリンらしいお気楽さに呆れつつ微笑む。調査は本来の役割なので文句言わずにやるべきだろう。


 仏頂面のワトウが最後に現れた。


『くれぐれも食生活に気をつけるようにネ。特にヂンペー。ろくな治療は不可能なのだから節制を心がけるんだヨ。仮に未知の病気に罹ったら貴重なサンプルになってもらうからネ』

「おいおい、これが医者の言う事かよ」

「いちいちうるさい」

「やっぱ嬢ちゃんが一番ひっで……っだァ!」


 いい加減我慢できず、脇腹に肘打ちしておいた。大袈裟に痛がり地面を転がる姿を冷たく見下ろす。

 キウリャとしては仲間の無事な様子、近況を知る事に集中したかったのだ。


「ありがとうナイン」

「どういたしまして」

「これからまたよろしく」

「はい。全力をもって働かせて頂きますのでよろしくお願いします」


 恭しく一礼したナイン。やはり懐かしさを感じるし心身が軽くなった気がする。

 ヂンペーも思うところはあるはずで、諸々の言動は照れ隠しかもしれない。そう思いはしても、やはり面倒な人間だ。

 さっさと話題を切り替えるのも怪しかった。


「で? 妖精チャン。今日は何するって?」

「あ、はい。ドワーフの方々の街に行って、しばらく滞在してもらいたいんです」


 ドワーフ。

 この星の十日以上の滞在で存在は知っている。それ以前にも空想としての知識の中にあった。


「ドワーフ、それって物作りが得意な?」

「はい、ご存知なんですね! 鍛冶を主な産業にしている陽気な人達です!」


 情報を確認して、ヂンペーがフィアーピッカー号を親指で指す。


「じゃあアレか。宇宙船(コイツ)の修復に役立つって訳かァ?」

「かもしれません」


 船の修理は難航していた。ヂンペーの仕事に難があるとしても、問題はそれだけでない。

 修復設備は備えていたが、それ自体が破壊されては元も子もない。交換用パーツも多くが破損していた。それらを一から作るのはほぼ不可能に思えた。

 この星の技術、魔法で代替できるだろうか。


 希望を胸に抱きつつ、キウリャが淡々と問う。


「仕事の内容は?」

「今回はお仕事ではないですね。ドワーフの方々から未知の技術を見せてくれと要求があったみたいで」

「なァるほど? こっちの技術を盗みたいって訳だ」

「え、えっと……言い方は悪いです、けど……確かに」

「あァ、気にすんなよ妖精チャン。こっちも盗むだけだからなァ」


 悪ぶった笑みを浮かべるヂンペー。声に真剣味があり、素でウズウズしているらしい事が感じ取れた。


「……で、どうやって行く? 船も運ぶなら大変でしょ」

「船は転移魔法を使うので心配要らないですよ。ただ、人を転移させるは制約があって難しいので、私達には車が用意されるそうです。それに」

「僕も同行させてもらうよ」


 完璧なタイミングで、爽やかな声が割り込む。

 その主は黒髪をかきあげ白い歯を輝かせる、役者のような笑顔のズカイナルだった。

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