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神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


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82/85

不幸な巡り合わせ

 あまりの心配さに昨夜はほぼ寝られなかった。

 適当な用事をでっちあげて、俺は皆に内緒でジブラルタルへ転移した。勿論、御守り代わりに空を連れて。


 目の前にはジブラルタル支店がある。

 踏ん切りがつかず、支店の前を行ったり来たりしていると、サリーが慌てて支店から飛び出してきた。


「ユウヤ様!」


 その表情には心労が見て取れる。

 それはなんとなく分かる。あんなのを相手にしていたら、こっちが疲れるだけなのだから。


「すまん。つい、入るのを躊躇ってしまった」

「え、なぜですか。てっきり、私が出迎えに来るのを待っていたとばかり思っていました」


 一度もそんな事をさせた覚えありませんが。

 そう、胸の中で一人つっこむも、嫌なことは早めに終わらせたい性分なので余計な事は言わないことにする。

 彼女に案内されて上客用の客間に入ると、ソファに座り、呑気にくつろぎながらお菓子を美味しそうに食べている桜色の髪の少女が目に入る。


「アーシャ様、お待たせしました。この方が、当商会のオーナーであるユウヤ様です」

「あ、全然だよ。気にし、あっあああああああぁ!」


 俺の顔を見て立ち上がり叫び出したこの馬鹿女の頭に拳骨を見舞ってソファに座らせ直す。


「うるせえ。少しは静かにしろ、ばか妹」

「痛ったぁ。あんたなんかに妹呼ばわりされる筋合いないよ!」


 涙目で両手で頭を抑えながら反抗してくるばか妹に一瞥し、俺も向かいのソファに腰掛けた。


「で、なんでお前がここに居る。どこまで俺を付けまわせば気が済むんだ。大体なんだ。転生なのかどうか知らんが。なんでお前が異世界に来てる。この事は桜は知ってるのか」


 色々と訊きたいことがあり過ぎて、やや早口になってしまった。


「ぼくだって知りたいよ! なんで悠哉がここに居るのさ! それにぼくは親切な女神様から、転生しますかって言われて来ただけだからね!」


 その言葉に思わず頭を抑える。

 俺があまりにもダメージを受けているのかと思い、サリーが良い香り付きのおしぼりを手渡してくれた。


「お前。あっちでもしかして死んだのか」


 俺にそう問われてアーシャはうつむいた。


「怒らねえから素直に話せ」


 アーシャはうつむいたまま、ガキの頃のように小さな声で答えた。


「ほんとに。ほんとに怒らない」

「ああ、ほんとだ。怒らないから言ってみろ」


 この場に桜が居たら、イタズラして俺達に怒られてる時の完全再現だ。

 何かと俺と桜の邪魔ばかりして、しょーもないイタズラばかりしてた中学の頃みたいな感じだ。


「ユウヤが刺されて死んだって、お姉ちゃんから聞いたんだ。それで、皆んなに内緒で日本に行こうと飛行機に乗ったら」

「墜落したのか」

「ううん。違うんだ。ぼく、昔から身体が弱かったでしょ。その、急いで乗ったから薬を忘れて。それで、あの、そのままみたいな」


 大きくため息を吐いて、こめかみを強く抑えた。


「なにやってんだ、お前は。大体、なんでそんなに急いでたんだよ。それも桜に内緒で」


 アーシャは気不味そうにますます下を向いた。


「だって。お姉ちゃん、凄く泣いてたし。それに自分は行けないって苦しんでたから」

「それと何が関係あるんだ。別にお前が日本に来る理由にはならないだろ」

「ぼくだって、ちゃんとお別れしたかったんだよ。あの日、ちゃんと言えなかったし」


 お別れも何もねえだろうが。

 そもそも付き合ってる女の妹に言われる事じゃねえし。


「はぁ、まあいい。それでなんで密航なんてして、ここに来たんだ。お前、あれだろ。騎士王とやらなんだろ。それがどうして逃げるような真似してんだよ」


 アーシャはいきなりガバッと顔を上げてテーブルに身を乗り出した。


「聞いてよ、ひどいんだよ! こっちの世界に来たと思ったら訳のわかんない人達に付き纏われて。挙句にこの地を我等の手に取り戻したいから力を貸して欲しいって頼まれて。何度も何度も戦争には力を貸したくないって言ったのに断り切れなくて。終いには、この世界を今度は我等が支配しようなんて言われたら逃げるしかないじゃん」


 言葉は尻すぼみになり、ソファに力なく座り直した。そんなアーシャを見て、なんとなく察し、同情した。


「そいつは大変だったな。まあ、あれだよな。女神様からの加護があれば、そりゃあ戦には簡単に勝つわな。なんというか、不運としか言いようがない」

「もうちょっと、ちゃんと慰めてよ! ぼくはこんなに苦労したのに、なんでユウヤはそんなに楽しそうなのさ! ずるいよ、そんなのずるいよ!」


 とうとう泣き出してしまった。

 変わんねぇなぁと思いながら、両手で顔を隠して大泣きしているアーシャを眺めた。

 そんなアーシャにサリーがハンカチとおしぼりを両手に慰めていて、何となく桜を思い出した。


「全然似てねえよな、姉妹なのに」



 気が済むまで泣かせて、泣き止んで目を腫らしたアーシャに今後の事を尋ねた。


「ユウヤって、奥さんの他に愛人が四人もいるんでしょ。サイテーだね。しかも、療養中の愛人候補も居るらしいじゃん。ほんと、ケダモノだね」

「なんで俺がお前にそんな事を言われなきゃなんねえんだよ。それにこの世界じゃ、そんなの普通だからな」

「はーー、普通ってさぁ何よ。ユウヤって何処ぞのお貴族さまなんですかぁー」

「お前聞いてないのか。俺、ヴェネシーア王国の公爵なんですけど。ついでにそこの女王様の義息子ですぅ。残念でしたねえ、誰かさんと違って恵まれ過ぎてごめんねえぇーー」


 膝の上に乗せている空の前脚を使って言い返すと、アーシャは胸の前で拳を握り、ワナワナと震えて俺に飛び掛かってきた。

 念の為、咄嗟に空を横に置いて迎撃する。


「残念でしたぁ。バリアですぅ」


 アーシャは防御結界に阻まれてテーブルの上に、飛び掛かった体勢そのままに落ちた。


「ふぎゃ」

「おいおい。テーブルを汚すなよ。片付けはお前がちゃんとやれよ」


 俺は手元にあったおしぼりを拡げて、アーシャの頭に投げ被せた。


「くっ、びどいよ。ぼくはこれでも女の子なんだぞ!」

「はん。男嫌いの女に優しくする程、俺は甘ちゃんじゃねえんだよ。一昨日きやがれ」

「ぼくは男嫌いなんかじゃないやっ! 好きになれないだけだから!」


 ま、こいつの男嫌いは筋金入りだからな。

 前々からこいつが自分から男と話してるのを見たことがない。

 ぼくっ娘だし、同性にしか興味がないんだろうな。よく知らんけど。


「はいはい。で、話を戻すぞ。今後、お前はどうしたいんだ」


 未だみっともなくデーブルの上に横たわるアーシャに再度尋ねる。


「ユウヤがぼくのお世話してよ。知ってる人がユウヤしか居ないんだから、お世話する義務があるでしょ」

「はい? なに言ってんのお前。お前なんか連れて帰ったら俺が不幸になるつぅの! 駄目駄目駄目、絶対に駄目だからな!」

「なんで不幸になるのさ。これでも女神様の加護持ちなんだからね!」

「馬鹿かお前は! 桜の妹って事だけで、俺にとっては特級呪物なんだよお前は!」

「あん。お姉ちゃんは関係ないでしょうが!」


 俺達は互いに熱くなり、無駄に延々と言い争っていた。

 そう。不幸を招く鐘の音と共に、恐怖の女神が四人の眷属を引き連れて、この地を訪れるまで。


 そうなる事も知らずに俺は無駄に言い争っていた。

★★★★★ も出来たら付けてくれると嬉しいです。

是非、私のモチベアップにご協力ください!

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