愚か者の夢物語
目が覚めると自分のベッドの中だった。
メイド達がカーテンを閉め忘れたのだろうか。
そんな閉め忘れた窓からは美しい三日月が見える。
「重っ」
体を起こそうとするも上手く力が入らない。それどころか、体が鉛のように重く感じる、
抵抗しても無駄そうだし、大人しくこのままベッドの上でまったりする事に決めた。
「自分の力を過信して、過ちを選択した愚か者。
かけがえのない大切な人を無くして、無様にあきらめきれずに悪あがきした愚か者。
そしてその無念と後悔を、奇跡を願い、過去の自分に届けた愚か者。
全て理解出来ちまうのがなあ。ほんと困る」
「なにが理解できるの」
部屋には誰も居ないと思っていたので、急に話し掛けられて、つい驚いて声をあげてしまった。
そしてその声のした方に恐る恐る目を向けてみると、雪乃がひょっこりと俺の胸元から顔を出していた。
「おはよう、雪乃。なんで君はそんな所で寝てたのかな」
「私の女神パワーで、悠哉くんにエナジーを補給してたんだよ」
なるほど。女神パワーでそんな事が出来るのか。ほんと便利で都合のいい力だよ、まったく。
「それはありがとう。でもなんで裸な訳?」
「毎晩毎晩。呆れるほど下半身だけは元気だったからね。しょうがないから、すっきりさせてあげてたの」
己の不撓不屈なリビドーに、逆に敬意を示しそうになる。
「はははははは。すいません、俺の下半身がご迷惑をお掛けしました」
「生理現象に文句を言ってもしょうがないし。ところで何が理解できるの。というか。何があったら、あんなになるまで大怪我をするの。幽霊船退治に行ってたんじゃないの」
雪乃の矢継ぎ早な質問に、つい顎をあげて目を逸らす。すると彼女は逃さないと言わんばかりに、俺の腹にまたがった。
「それに。この刀は何?」
ベッドの傍にあった刀を手に取って、わざわざ俺に見せた。
「どっかの馬鹿の夢の跡、かな」
「意味が分かりません。ちゃんと説明して」
説明ねえ。マジで嫌なんですけど。
「黙秘権を行使します」
「却下です」
「被告人は無罪を主張します」
「意義あり。無罪を主張するには説明が不足しています」
なる。これは逃すつもりも、ごまかされるつもりもないということか。
しかし、本当に綺麗だ。
月明かりに照らされた雪乃の裸体がとても幻想的で繊細で美しい。
俺は自然と彼女に手を伸ばした。
俺の手が彼女に触れると、彼女は吐息と共に小さく声を漏らした。
「君に出逢えた事をとても感謝してる。そして、こうしてまた君に触れられた事も。
ただいま、雪乃。愛してるよ」
彼女のその柔らかい唇に触れようと上半身を起こそうとすると、逆に彼女が体を倒して唇を重ねてきた。
彼女と口づけを交わしながら色々な事が頭の中を駆け巡る。
幽霊船での己との激しい闘い。そして、未来の自分に託された想いと、彼からの忠告。
でも一番は、こうしてまた雪乃のもとへ帰って来られた事と。それを雪乃が優しく迎え入れてくれたことへの感謝だ。
「私も、愛してるよ。誰よりも貴方のことを」
「ああ。いつまでも変わらぬ愛を君に捧ぐよ。世界中の誰よりも大切で、かけがえのない愛しい人に」
互いの唇が触れそうな距離で。ゆっくりと静かに、相手へのその想いを込めて互いに伝えあう。
彼女の吐息も。その彼女の心臓の鼓動も。暖かく、穏やかに伝わってくる。
互いの唇をゆっくりと重ねて抱き合う。
きつく、きつく。けれど、傷付けぬよう優しく互いを思いやり抱きしめあった。
◇
そんな二人の美しい再会も一度で終わる。
どうやら部屋の外に声が漏れていたらしく、女性陣達がタイミングを見計らって突入してきたからだ。
そんな気遣いをみせながらも、俺に対する当たりがとても厳しい。それになぜ皆裸なのだろうか。
「おい、勝手に入ってくるのは良しとして。なんで揃いも揃って皆真っ裸なんだ。あれか。俺が起きないから身体が疼いて男でも連れ込んでたのか」
俺はそんなハレンチな彼女達に、魂から糾弾するも逆に無言で頬を叩かれた。それも一人一発ずつ強烈なやつを。
「私達が男を連れ込むなんてことを、するわけないじゃないですか!」
「私達はユウヤ様以外に肌は晒しません!」
「そうだ。私達を侮辱するにも程があるぞ」
「そんな風に私達を見ていたなんて、がっかりです!」
アリステラ、マチルダ、グレース、ソフィアと続け様に糾弾された。だが、なぜ真っ裸なのかは誰からも説明がない。
「悠哉くん、元気すぎるからね。皆んな私一人だと大変かと思って気遣ってくれたんだよ」
「待て待て待てっ! 俺はそんなにタフじゃねぇし。しかもそんなに相手出来ねぇから!」
なぜか、皆一様に首を横に振った。
しかも呆れて大きなため息付きで。
「毎晩毎晩何度抜いてもちっとも収まることもなく。いや、昼夜問わず立ちっぱなしの男に、私達がどれだけ献身的に尽くしてきたのか分かってるのか!」
そのグレースの魂からの叫びに、皆が大きくうなづいた。
「普段の方がおとなしかった。やはり人には理性が必要なんだと、皆で口を揃えて言ってたのです」
「意識を失った状態だと、ここまで制御が効かないのかと知らされました」
「繋がってる相手の反応もないなんて、なんの為にしてるのか分からなくなるくらいで。作業をしてるみたいであまり濡れないし、不感症になるかもと思うくらいのトラウマでしたからね!」
アリステラ、マチルダ、ソフィア。その三人の聞くに耐えない嘆きを聞かされていた。
だが、俺に一つの疑問が頭に浮かぶ。
「そもそも勝手に立ってるだけで、ほっとけば自然と夢精して出るだろ。しかも、俺は元々そんなに精力旺盛な方じゃない。もっとも、こちらに来てからはタフになったような気がしないわけでもないが。俺は元来は、そんなに盛ってねぇからな!」
大体、前の世界でだって、数多くの女を相手にしてきたが、大抵は一回やりゃあ充分だった。
ましてや、同じ女と二回も三回も会わねえから。
そんな事を思いながら言い返していると、彼女達は何かに気付いたようで明らかに動揺していた。
「夢精とやらで本当に出るのですか」
「んなの当たり前だろ。一々毎晩シコって出すほど猿じゃねえよ」
「皆は知ってたか?」
アリステラのその質問に馬鹿らしいとばかりに即答すると、今度はグレースが皆に問いかけた。
すると意外な事に、誰も夢精というものを知らなかったようだ。ただ一人をのぞいては。
「ユキノ様、なんで教えてくれなかったのですか!」
「え、だって常識でしょ」
柳に風。
そんな雪乃の言葉に皆が愕然として膝から崩れ落ちていた。そんな彼女達の姿に心が痛む。
「お前らって、そこまで男性経験というか。男知らずに過ごしてきたんだな。なんか強く言ったりして悪かったな。ごめん。俺が悪かったよ」
俺はベッドから出て、彼女達の前で謝った。
しかし、皆の視線は俺の股間に集中している。
「気にすんな。ただの生理現象だ」
そう言いながらも恥ずかしさから居ても立っても居られなくなり、すぐにベッドに戻り布団を頭から被る。けれど、ツンツンと顔を下から上へ何度も軽く突き上げられ、布団を少しだけ上げてみると空が布団の中に入ってきて丸くなると、お尻を俺の顔にピタっとつけた。
「そっか。空は俺のことを守ってくれるんだな。ありがとな、空」
空のお尻に頬をスリスリしながら目を閉じる。
絶妙な柔らかさとその心地良さに癒されながら深く意識を沈めて眠りについた。
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