カジノ
本日こちらを含めてあと三話投稿します
目の前に積み上げられたチップの山に自然と高笑いする。
そんな状況に気分を良くした俺は、膝の上に座るブランの胸をこっそり触り、さらに悦に入る。
「今夜も上々、運上々。豪華な酒と良い女!」
ヒヤッハー! と、シャンパンを煽る。
そんな上機嫌の俺を、ブランは嬉しそうに眺めているのとは対象的に、ルーレットの担当ディラーは青褪めた顔で支配人の顔色を伺っていた。
「さて、次は何処に賭けようか」
俺の賭け目に周りのギャラリーが唾を飲む。
「ここだ。ここに全額」
チップを適当な場所に置くが問題ない。
ディラーがどんなにイカサマをしようと、ブランの力で俺の賭けた目に球が乗るのだから。
球はブランの思いのままに俺の賭けた目に止まる。そして周りから大歓声が沸き起こる。
「ふっ、またつまらない勝ち方してしまった」
「ノワール、あなた最高よ」
勝利の女神が、俺の頬に祝福のキスをする。
さらに、さらに高く積まれたチップの山を前に、ボルテージがマックスに上がる。
「お客様。大変申し訳ありませんが、今夜はここまでにしていただけませんでしょうか」
支配人は頭を深く、ふかーく下げていた。
「そうか。連日大稼ぎするのも胸が痛いな。ではこれを全て精算してくれ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
支配人自らチップの山を台車に乗せて精算し、戻ってくる。台車の上に乗せてある金貨の枚数を確かめ、大きな皮袋に入れて手渡ししてくれた。
その皮袋に右手を入れて金貨を掴むと周りのギャラリーにばら撒いた。
「幸運のお裾分けだ!」
狂喜乱舞の大歓声の中、ブランをエスコートしてカジノを出た。
「ちょろいな」
「ええ、ちょろいわ」
「まあ、何人であろうと、本物の幸運の女神様の前では膝を屈するしかあるまい。哀れだな」
常のように俺の腕を抱いて、ぴったりと寄り添い歩くブランが嬉しそうに顔を上げて微笑む。
「女神の心を射止めたあなた。ノワールの勝利よ」
そんな風に仲良く会話をしていると道の前後を塞がれ、瞬く間に武器を手にした奴等に囲まれた。
「毎晩、毎晩、荒稼ぎしやがって。こっちは大損なんだよ。死んどけや、ガキが」
偉そうに葉巻みないなのを咥えた男が、武器を構える男達の間を割って無防備に俺達の前に出てきた。
「残念、死ぬのはお前だ。ばーか」
俺は素早く間合いを詰めて、偉そうな男の顔を鷲掴みしてそのまま持ち上げた。
「離せ。おい、テメェ離しやがれ!」
男はみっともなくアヒルのように足をバタつかせて足掻きながら助けを求めるも、ボスを捕まえられているからなのか、武器を手にした奴等は動くに動けない状況におちいっていた。
「何様だ。俺に命令すんじゃねぇよ」
鷲掴みしている手の力をさらに込めると、男は声にならない悲鳴をあげた。
「死にたい奴だけかかってこい」
そう言って男を鷲掴みしながら、ぐるりと回転して囲んでいる奴等を睨むと、一人が逃げたのをきっかけに、堰を切るように次々と走って逃げていった。
「薄情な奴らね」
「まあ、しょんべん漏らして気絶してる奴を目にすれば逃げるよな」
「それがましてや自分達のボスなら尚更よね」
気絶した男を降ろして、襟首を掴んで引き摺って歩きだした。もちろん、こいつらのアジトへ向けてだ。
アジトのドアを蹴り破り、男を引き摺ったまま中へ入る。武器を手にした者が至る所から襲い掛かってくるが、華麗に右手一本で倒す。たまに足も使って。
「ねえ、暇なんだけど」
「今回は俺が活躍するって決めただろ。いつも大活躍なんだから偶には譲れよな」
男を引き摺り、呑気にブランと会話しながらアジトの目的の部屋を目指す。
そして、目的の部屋のドア蹴破り、男を乱暴に前へ投げ捨てた。
「はーい、カツアゲにきました」
「命も金も、しのぎも全ていただきます」
決めゼリフもバッチリ決まり、中にいる奴等を……
「誰も中に居ないんですけど」
「うーん、誰もいないね」
「知らずに全員倒した、もしかして?」
「たぶん、そうかも」
気を取り直して立派な机の引き出しを漁り。カジノなどの権利書を手に入れた。
その間、ブランは大きな金庫のドアを豪快に壊して中身を漁っていた。
「宝石、金塊、金貨。はぁ、ありきたり過ぎて萎えるわ。そっちはどう?」
「カジノや娼館なんかの権利書と印は押さえたけど、後なんか必要な物あるか?」
「組織の名簿とか帳簿は?」
「あっ、これか。うん、全部手に入れたぞ」
顔を上げてブランに視線を移すと、金庫の中身を一生懸命、宙に空いた場所に放り込んでいた。
「収納魔法だっけ。便利だよな」
「簡単だから今度教えてあげるよ」
ブランの簡単は簡単じゃない。その証拠に俺が使える魔法は空間転移と身体強化。そして炎を纏わせたファイヤーパンチとキック。それに電撃を纏ったカミナリパンチとキックしかない。あ、手の上に炎は出せるな。出せるだけだけど。
そして手に入れるものを手に入れて、気分良くアジトを出ると打ち合わせ通りに顔を隠したアリステラ達が待っていた。
カジノや娼館の権利書などを彼女に手渡して、カジノや娼館などを押さえるように命じた。
「王都でも最大の裏組織をこうも簡単に壊滅させるとは、ノワール様とブラン様はさすがですね!」
「まあな。これで悪の組織が一つ減った訳だ。だが、金蔓のカジノや娼館は俺達の物だ。ちゃんと計画通り乗っ取って、健全に運用してくれ。任せたぞ、アリステラ」
「はい、任せてください!」
彼女の肩を軽く叩いて任せた後、俺はアジトに火を放ち、ブランと一緒に空間転移の魔法を使い宿屋へ戻った。
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