専用艇建造計画
ごめんなさい。投稿してた気になってました。
毎日一話は投稿しようと思ってますので、よろしくお願いします。
工房の長机で船の仕様を簡単に二人に説明した。
「まずメインの推進装置はスクリュー。接岸用にウォータージェットをサブの推進装置として組み込む。このウォータージェットは逆噴射や側面噴射も熟せる優れものだ。まあ、これに関してはまだ試作段階なんだけどな。ただ問題もある。知っての通り、ウォータージェットの噴出口は船体底部の中央にある。この噴出口を左右に動かす事と、サイドにある小さな噴出口からも噴出する事で旋回させてるのだが。そうなるとスクリューで航行してる時の舵を何処につけるのかが問題になってくる」
二人は船体図を見ながら俺の話に頷いていた。
「この逆噴射と側面噴射はなぜ必要なのですか」
「ああ、これな。右に旋回させる時は左も噴出させる事で旋回するだろ。それを左は後ろへ。右は前に噴出させればもっと鋭く旋回できると思って試作してもらってたんだよな。で、なぜ必要かと言えば、水上バイクはかなりの低速航行ができるだろ。従来でもわりと正確に船体を衝突させることなく接岸できるけど、側面噴射があれば垂直に接岸できて便利かなと思ったんだよ。だから、幽霊船に乗り込む時に衝突事故なく乗り込めるかなと」
面白いもので二人とも顎に手を当てて考えていた。
「なるほど。良い観点じゃ。それに同時に使用すればかなりの船足も出るしのう。ただユウヤ殿下の言う通り、問題は舵じゃな」
「ギリギリまでスクリューを前方にするしかありませんよね。ただそれでも中央の噴出口のスペースを確保出来るのか。ですよね」
船体図面を見たり、実際の船を確認しながら老紳士とソフィは話し合っていた。
「ここは割り切って中央を無くすのが懸命じゃな。ウォータージェット航行では左右の噴射口を同時に使うことで前進。右の噴出を前に切り替えする事で右旋回とかな。そうすれば中央にはスクリューと舵を付けられる」
「それです! さすがはヴェリルス卿!」
ソフィは手を叩いて大喜びしていた。
どうやら仕様は決まったようだ。しかしあの老紳士やるな。只者ではないよな。名前も偉そうだし。
「よし、そんな感じでいこう!」
「はい! では私が設計図と仕様を書きますね」
「うん。頼んだ」
ソフィが長机で図面を引き始めた。その横顔を見るととても楽しそうだ。その向かいで老紳士が助言していた。
「ところでユウヤ様よ。この大砲をほんとに載せるのか」
台座に乗せてある大砲を指差しながら親方が訊いてきた。
「ああ、載せるぞ。幽霊船に近づけなかったら、これで吹っ飛ばしてやる」
「それ。わざと近づけないふりして吹き飛ばそうとか思ってないすか」
軽く胸を抑える。あまりにもそれはあり得ると、自分で思ってしまったから。
「そんな事は思ってないぞ。断じて考えてない」
「そうですかあ。でもですぜ。一人で船を操作してるのに、どうやって前に行って撃つんです」
「我に秘策ありだ」
ポーチから五個の薔薇のファンネルを出して宙に浮かべて動かした。
「前にボタンでも付けて、これでポチッとな」
「ほう。これは面白い。それは一体なんなのですかな」
興味深そうに老紳士が訊ねてきた。
「まだ練習中なんだが」
薔薇を別々に素早く動かして、誰も居ない所の地面にビームを放ってみせた。
それを見ていたものは皆一様に驚いて口をパクパクさせていた。老紳士以外は。
「これは驚きました。なんとも愉快な武装ですな。これもユキノ様がお作りになられたのですかな」
「そうだぞ。皆んなの武装が目立ち過ぎて最近の俺は目立たないから雪乃に頼んで作ってもらった。どうだ、うちの雪乃は凄いだろ」
老紳士にさも自分の事のように自慢した。雪乃が褒められるのはとても気持ちいい。調子にのって薔薇のファンネルを素早くピュンピュン動かしてみせた。というか、心と連動して喜んでいる時の空の尻尾のように勝手に動いていた。
「これは凄い。ですが、それでボタンを押さずとも、操舵室で狙いをつけて魔導砲を撃てるようにすることは出来ますぞ」
「え、マジ。なあなあ。グレースのソードカトラス知ってるか。知ってるよなあ。魔導砲の照準と発射をあんな感じて出来ないか。こう上からさっと降りてきてかっこよく狙いを定めて撃つ。みたいな」
あまりにも興奮しすぎて一気に喋ってしまった。
その俺の勢いに押されるように老紳士は半歩さがった。
「出来なくはありません。ただ、私と取引きしませんか」
俺がうなずくと、ではこちらへと言って移動し、人から離れた場所で老紳士は防音結界を張った。
「わしらはグレイシア女王陛下のマギなのじゃ。勿論、それは秘された存在じゃがな」
「待て待て。マギってなんだよ」
「そうじゃのう。分かりやすく言えば、女王陛下直轄の秘密の魔導士集団ってところかの。あの魔導砲などを作ったのもわし等じゃ」
「そうか。ところで話し方が一気に変わったな」
「あんなかしこまってたら疲れるじゃろが。結界も張ったし誰にもこの会話は聞こえんからな。素で話させてくれ」
「まあ、それもそうだよな。それで、取り引きって」
「転移魔法をわしらに教えてくれ。姫さまがあれを覚えてから捕まえるのに一苦労なのじゃ。悪いことには使わん。だから教えてくれなのじゃ」
うーん、悩む。悪いことには使わないと思う。思うのだが、俺の一存じゃ決められないな。
「よし。雪乃に確認しよう。俺もフォローするから一緒に説得しよう」
俺は一応グレースを誘って、三人で雪乃のもとへ転移した。
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