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神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


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美化衛生作戦

 スコットさんとテーブルの上に広げた王都の地図を真剣な眼差しで見つめていた。


「全域となる少々骨ですな。それに何処から手を付けるのかも重要です」

「住宅が多い所からで良くないか。それに旧貴族地区は手を付けなくてもいいし」

「え、貴族地区はよろしいのですか」

「今後は地方貴族の別邸を無くし、大きな迎賓館を建ててそこで用向きのある時の一時的な滞在先にするそうだ。だから殆んどの別邸は取り壊されて、その跡地を再開発する事が決定してる」


 貴族のご婦人方はともかく、別邸の維持費が今後不要になるのは地方貴族達に大いに歓迎された。一方で地方貴族が力を蓄えすぎのではと懸念されたが、グレースがその声を押し切った。叛逆など起こす気もでない程の甘い夢を見させてやる。と。

 その自信がどこから来るのか分からないが。


「ふむ。それでは城壁に面してる旧スラム街から広げて、反対側の城壁側からも同じように広げる方が効率はいいですな。それに、王都全域から出る下水を一本の地下下水道に纏めるのは無理があります。二本にしていた方が何かと安全だと考えます」

「確かにそうだな。ではその方向でいこう。それで資金は大丈夫か。足りなければ宝物庫から持って行ってもいいぞ」

「何を仰いますか。当商会は今や、二つの支店を持つ大商会ですぞ。ユウヤ様のご負担なく、その要望を必ず叶えてみせます」


 ニヤリと自信有りげに語るスコットさんに確かな手応えを感じた。

 そんな時、ドアがノックされてグレースが入ってきたのだが、彼女は部屋に入るなり深く頭を下げて謝罪した。


「先程はすまない。下水の件は、私が責任を持ってやり遂げる。だが、あれだ。その資金を国に貸して欲しい!」


 頭を下げたままグレースは謝罪と提案をしてきた。そんな真摯な姿に絆されそうになる。


「今更なにを言っている。既に俺達はその草案を立てたところだ。もう、グレースには何も期待していない。帰れ」

「そうつれない事を言うな。私が悪かったから許してくれ」


 ソファに座る俺の腕を抱いて縋ってくる彼女に侮蔑の眼差しを送る。


「許してください。だろ」


「……許してください」

「ご主人様。が、抜けてるぞ」


「……許してください。ご主人様」

「よし。短いスカートのメイド姿で三日、屋敷で俺に奉仕するのならば許そう」


 はい、と返事をして、彼女はうつむいた。だが、その彼女の口元が笑っているのに俺は気付いていた。


「このドMめ。まあそれは置いておいて。スコットさん、貸付資金を用意してくれ。利子はたっぷり取っていいぞ」

「ユウヤ様。それならば下水工事に実績のある。我が商会にその工事を一手に引き受けさせてください。それでしたら利子など要りません」

「なるほど。流石スコットさんだ。この駄メイドに任せていたらいつ完成するか分からないしな。おい、駄メイド。それでいいか」


 既に駄メイド呼ばわりされて少し彼女は怒っていた。ましてや、他人の前でなら尚更だろう。


「わかった」


 不満げな感情を隠しもしない彼女を矯正する。


「かしこまりました。ご主人様。だろ」

「………かしこまりました。ご主人様」

「よし、それでオーケーだ。スコットさん、それで頼む。では行くぞ、駄メイド」


 商会から立ち去り、そそくさと人目の付かない路地裏に向かい、その場で激しく情事に耽る。


「グレースって、こういうの好きだよな。強引にやや乱暴にされるプレイが」


 立ったままの情事で、そんな言葉を彼女に投げ掛ける。


「ユウヤとの初めての夜に気付かされただけだから。そんな昔からみたいな言い方はしないで」

「そうか。でも、女王陛下が路地裏で情事に耽る姿を誰かに見られたら大事だな」

「馬鹿。そんな事は言わないで」


 まあ、視認阻害と防音の結界の中だ。誰にも気付かれる事はないけどな。



「全く真っ昼間のこんな場所で。はしたないのにも程がありますよ、姫さま」


 側仕えのメイドは少し離れた場所から嘆いた。

 勿論、その周囲には同じメイド達が陰ながら人払いをして、そんな情事に耽る主人のサポートをしていた。もっとも、グレイシア本人はそんな事など知りもしないのだが。


「一体何度やれば気が済むのですか。はあぁ、政務も山ほどあるというのに」

「ミシェル様。やっと愛や恋を覚えた姫さまにそれは酷というものです。私達はただそんな遅咲きの幸せを掴んだ姫さまを暖かく見守りましょう」


 表情が全く動かない仮面のようなその面差しで、一瞬方眉が僅かに動く。


「姫さまを遅咲きと言いましたが、あなたにはそんな経験がある程手慣れているのですか」

「いえ、まったく。この仕事をしていて、そんな余裕はありませんよね。それはミシェル様も同じですよね」


 そう言われたミシェルは少しうつむき、額を軽く抑えた。


「嘆かわしい。私はちゃんと経験済みです。そうでなければ、姫さまにアドバイスできないではありませんか」

「嘘ですよね。まさかたまに私達に仕事を押し付けて消えていたのは、それが理由ですか!」


 瞬く間に十名のメイド達にミシェルは囲まれた。

 そして彼女は一斉に激しく非難された。だが彼女は動じないし、表情も変わらない。


「わかりました。これからは十日毎に二連休にしますので。それで恋愛なり情事なり、好きになさい」


 その言葉を聞いて満足したのかメイド達は持ち場に戻った。ただ一人を除いて。


「ミシェル様。私に殿方を紹介してくださいね。それくらいしてくれなければ、姫さまにこの事を報告しますから」


 彼女は初めて他人に動揺した感情を見せた。


「わかりました。よい殿方を紹介しましょう。ですから、くれぐれもこの事は姫さまには内密ですよ」

「はい。姫さまもミシェル様が他の仲間に無理やり仕事を押し付けて情事に耽っていた。なんて事は聞きたくないでしょうから」


 ミシェルの心は大いに揺れていた。

 それだけは知られてはならないと。姫さまに伽の助言の為に自ら、あれやこれや激しい事や、人には言えない淫らな事を何人も相手に数々経験してきたことを。その事は、その事だけは、姫さまに知られたくはなかったからだ。


「あなたの満足する相手を紹介します。後であなたの好みを教えなさい」


 ミシェルは少し離れた場所で、淫らに情事に耽る二人に視線を戻した。

 今夜。誰にも仕事を押し付けられなくなったと、悔やみながら。

★★★★★ も出来たら付けてくれると嬉しいです。

是非、私のモチベアップにご協力ください!

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