抗争
噂によるとあの初老の男性はシチリアに戻る途中で亡くなったらしい。そんな情報がキョウヤ達から齎された。
その一方的な仕打ちに恐れ慄くものと、復讐を誓うものに組織は二分していた。
既にアリステラはロマーニャに返した。無理やり返した。
そして俺と雪乃はわざと目立つようにノワールとブランシェの姿で港に降り立つと、優雅に街の中を歩いていた。
そんな俺達を二つの集団が陰から見ていた。
そう。俺達に内緒で護衛のためにこっそり見守る海軍所属の精鋭部隊と、マフィアの駄犬どもだ。
「まったく、どちらも隠れきれてないな」
「ええ。これは私達自ら教育してあげた方がいいわね」
「世話になっているし、それもありだな」
俺達を尾行している駄犬どもは速やかにキョウヤ逹によって処理され、悠々と俺達は高級宿のスイートルームを取る。勿論、キョウヤ達の部屋も同じランクで。
俺たちの部屋にキョウヤたちが合流して地図を広げて襲撃箇所を確かめた。
「やっぱり想像した通り多いな」
ざっと見て三十箇所以上はある。
「まあ、普段は一般市民を装ってるからな。どうしても場所は多くなるさ」
甘えるようにキョウヤの背中に覆い被さるユキナをそのままにして話すが、いまいち締まらない。
「なんだそれ。ここは一般市民が悪党なのか」
「いや違う。成り立ちがレジスタンスだからな。陰に潜んでいるやつも多いってだけだ」
「なるほど。よく分からんが分かった」
「ピックアップした場所は悪党しか居ないから気にせずにぶっ潰せばいい。ただ、気を付けろよ。島中の店や施設はマフィアの息が掛かってるといっても差し支えない。勿論、島の支配層とかもな。お前達の行動は常に知られていると思っておけ」
おいおい。これは無理ゲーじゃねえのか。
「だから最初に支配層の奴等を始末する。けど、女子供も容赦するな。ガキであっても組織の一員だ。生かしていてもまた牙を剥いて襲ってくる。絶対に情けなんか掛けるんじゃねえぞ」
「そりゃあハードだな。あれか、少年兵的な感じか」
「似たようなもんだが、それより達が悪い。なにせ、物心ついた時からマフィアとしての英才教育を受けてるんだからな」
ひくわー 関わりたくねぇー
「そんな顔すんな。だから何度も確認しただろうが。ほんとにやんのかってよ」
「一つ訊くけど。終わった後、島から人が消えたって事にはならないよな」
「なるわけねぇだろ!」
俺はつっこまれるように頭を叩かれた。
チラッと雪乃に視線を向けた。
「やるなら徹底的に。決めたなら最後までやり切る。それがこの世界で生き残る絶対のルールだよ。それに前の世界の倫理観なんて一切通用しない。下手な情けは寝首を狩られるよ」
その日の深夜。やるなら頭からという事で二組に別れ、俺達はシチリア自治州総督の邸宅を。キョウヤ達はパレルモ都市長の邸宅だ。
中々に大きくその偉大さを誇示するような邸宅の門を飛び越える。いつものように門を破壊して敵が逃げやすくなるのを避けるためだ。
まず最初に俺達に気付いた番犬たちが牙を剥き出しに襲い掛かってくる。それを両手に具現化した炎と氷の剣で仕留めながら玄関に向かって進む。
騒ぎを聞きつけた警備兵や私兵がこちらに向かってくるがブランシェのライフルで近づくことすら出来ずに倒されていく。
また邸宅の二回から矢や魔法が放たれるもシールドを展開している俺達には届かなかった。逆に具現化した光の弓の餌食になり、敵はなす術もなく俺達の侵入を容易く許す。
大きく装飾の施された玄関のドアを蹴り破り、屋敷の中に足を踏み入れる。
「はい、悪党退治にきました」
「命も金も全て、差し出しな!」
出迎えてくれた大勢の兵士達に容赦なくライフルの魔弾が放たれる。とても爽快そうなブランシェに微笑みを向ける。
ブランシェが探知魔法で兵士や総督が潜んでいるところを探し、彼女の誘導のもと的確に素早く敵を殲滅していく。
地下で逃げようとモタモタしている総督とその家族に慈悲もなく断罪を下す。
「あまり気持ちの良いものではないな」
「それが普通よ」
少し悲しげな顔で彼女は短くそう答えた。
取り敢えず総督が持っていた物を収納魔法の付与されたポーチにしまう。そして、まだ邸宅に残っている兵士達を倒して、金目の物を回収し、邸宅に火を放った。
「かなり溜め込んでたな。大量の金塊に宝石。普通じゃないな」
「あれは一総督が待っていい財産の量ではないわね。この島のマフィアはかなりのやり手ね」
手を繋いで宿の部屋に戻ると、キョウヤ達が先に戻っていた。
「おっ、どうだった。こっちはかなりの大収穫だ」
「大量の金塊と沢山の貴金属に宝石。もうサイコーだよ!」
「こっちも似たようなもんだ。どっちもかなり悪どく溜め込んでたみたいだな」
「ねえねえ。ほんとに返せって言わないよね。ふーちゃん、後から取り上げたらやだよ」
「言わないわよ」
いつの間にふーちゃん呼びになったのだろうと気になったがユキナのやる事を一々気にしていたら身が持たない。
「取り敢えず詳しい報告は明日にして休もうぜ」
「お前がやりたいだけだろ!」
「そうそう。正直にいいなよー!」
「ああそうだよ! やりたいから早く部屋に帰れ!」
「もう、悠哉くん。恥ずかしいよ」
こうして二人をさっさと部屋から追い出した。
やばっ、ほんと今日は眠い。なんか疲れた。
珍しく何もしないで、俺は目を閉じた。
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